毎回同じネタで恐縮ですが・・・。
小国チェコが「中国からのカネ」より「台湾との友好」を選んだワケ
9/11(金) 11:16配信/PRESIDENT Onkine(プレジデント社)
■あの中国とどう渡り合うのか?
8月30日、チェコのミロシュ・ビストルチル上院議長が率いる代表団が1週間の日程で台湾を訪問した。9月3日には蔡英文総統と会談し、中国からの猛反発を食らっている。
台湾を取り巻く外交関係は、「一つの中国」を国是とする中国により徹底的にその芽を摘まれ、台湾と関わった国家に対しては「中国からの不当ないじめに遭う状況」が恒常的に繰り返されてきた。中国との経済関係を重視する多くの国々は、そうした「面倒」が起こるのを避け、積極的に台湾との交流は行わないとする判断が「世界の認識」だったと言える。
「チェコのような小国が、あの中国とどう渡り合うのか? 」
世界中の目はそんな疑いの眼で訪台するチェコの動向を追っていた。しかし、チェコと台湾の間には、「中国への忖度や配慮は不要」といえるほど、「両国」の経済関係が十分に積み上げられていたという。
今回はチェコ代表団の台湾行きが実現した経緯とその背景について論じてみたい。
■中国からの圧力を受けていた前議長が突然死
チェコでは、「訪台団実現」までは少なからず紆余曲折があった。
訪台団の派遣構想は2019年9月、ヤロスラフ・クベラ前上院議長がこうした意向を最初に打ち出した。時期は、台湾総統選の後と具体的に言明。これに対し、ゼマン大統領とバビシュ首相はいずれも反対を表明する一方、ペトシーチェク外相は「干渉する意思はない」との立場を明らかにしていた。
しかし、クベラ前議長はその後、中国政府関係者から容赦ない圧力を受ける。ついに、クベラ氏は台湾訪問を前に、こうした圧力やストレスもあったのか心臓発作で突然死した。
その後、前議長が「中国からの圧力を受けていた」と遺した手紙があったことに加え、前議長夫人と娘が圧力を受けていた経緯をテレビ番組で証言。こうした流れに押され、新任のビストルチル議長が4月末、改めて訪台団の実施を発表した。派遣に当たり、議会で是非を問う採決の結果、50対1の賛成圧倒的多数を得て、出発の運びとなった。
チェコ政財界の代表90人から成る訪台団を率いたビストルチル上院議長は、同国の外交儀礼の順位で大統領に次ぐ第2位と位置付けられる。これほどまでの高官が代表団を率いて台湾に向かうことは、中国にとって「国是を揺るがす一大事」と見なされることは間違いない。一方、ビストルチル議長にとっては、志半ばで亡くなったクベラ氏の遺志を抱いての台湾行きとなり、その決意は並大抵のものではなかったことだろう。
■中国からの大規模投資が赤字に
中国は2014年から「一帯一路」構想を掲げ、チェコを含む沿線上の各国に巨額の投資を行っていることは周知の通りだ。しかし、チェコ中央銀行の統計によれば、チェコの輸出額のうち、80%はEU加盟各国向けで、対中輸出は財の輸出が1.3%、サービスの輸出は2.3%にとどまる。一方、輸入額で見ると、全体の15%が中国からとなっており、これは主に電子関係の設備、モジュールや部品だという。
チェコ経済界のみならず、国民もが中国への信頼関係を失う象徴的な出来事は、「対チェコ向け直接投資(FDI)の不履行」だったとされる。2016年に習近平主席がチェコを訪問、その際に「950億チェココルナ相当(約4500億円)を同年中に投資、さらに2320億コルナを5年以内に投じる」と約束した。
ところが蓋を開けてみたら、2017~18年の中国からの対チェコ投資はなんと赤字で、チェコからの投資額の方が大きいという結果に終わった。
チェコから見たFDIの流入額割合を見ても、最も依存度が高いのは欧州諸国で95%に達するのに対し、中国からはわずか0.4%にとどまる。
■プラハ市長は「投資はほとんど実現していない」と批判
こうした事態について、対中強硬派で、北京との姉妹都市提携を反故にしたプラハ市のフジブ市長は、「中国はチェコで多額の投資をすると約束したが、ほとんど実現していない」と批判。チェコの一部の政治家やメディアが経済的な利益を誇張し、中国に融和的な世論を喚起しているとした上で、「中国がわが国の国内総生産(GDP)に与える影響は1%に満たない」と述べ、親中派勢力の主張を切り捨てた。(時事通信、9月4日)
つまり、約束を破る国とは話をする意義などない、と決めつける格好となっている。
世界を席巻する「中国人インバウンド効果」についても、チェコの訪問客統計を見る限り、同国における中国人客は多くない。ちなみにアジアからの国籍別トップは日本人で、次いで韓国人と続き、中国は3番手に過ぎない。余談だが、韓流ドラマ「プラハの恋人」の大ブレイク以来、韓国人観光客の背中を押しているという。
■中国側は「重い代償を払わせる」と応酬
一方、中国の王毅外相は8月31日、チェコに対し「重い代償を払わせる」「台湾問題で『一つの中国』に戦いを挑むことは、14億人の中国人民を敵に回すことで、国際的な背信行為だ」と述べた。
チェコ代表団が台北から無事に首都・プラハに帰り着いたのちも、中国からの「報復」は続いている。9月7日、奇妙なニュースが流れてきた。中国の顧客がチェコ製ピアノの発注を取り消した、というのである。
日本経済新聞(9月7日)によると、中国政府がチェコ製品に禁輸を科すことになり、これを受け、北京の顧客が約530万コルナ(約2500万円)に相当する老舗ピアノメーカー「ペトロフ」へのピアノ発注を取り消したという。
在チェコ中国大使館の資料によると、2018年にペトロフの全出荷台数のうち3分の1が中国で売られたという。同社にとって、中国マーケットがいわば最大のお得意様で、これを失ったら、存続を左右する死活問題になりうる。
■大統領自らピアノ演奏を行う友好ぶりだったが…
中国では2018年以来、「一帯一路」沿線各国で作られた中国向け貿易品目を展示する「中国国際輸入博覧会(CIIE)」を毎年上海で開いている。これの第1回開幕に合わせ、チェコのゼマン大統領が訪中。その際、チェコのブースに展示されていたペトロフ製ピアノを使って、習近平国家主席を前に、同大統領が自ら記念の演奏を行った。曲は、ジャズのスタンダードナンバーとして有名な「センチメンタル・ジャーニー」。上海ジャズの歴史は世界に知られることから、それを意識しての選曲だったのかもしれない。こうした経緯から、ペトロフの中国での「行方」が、国際問題の場に持ち出されてしまったとも言えようか。
かようにチェコは「ある時点」まで、中国を友好国として捉えていた。ところが、「大統領の習主席へのピアノ演奏プレゼント」をよそに、徐々に中国のチェコにおけるプレゼンスの低下が露呈。今ではチェコにとって、「経済上では対中関係はあってもなくても良いレベル」となっている。(日経アジアンレビュー、9月7日)
■EU圏最大の鴻海拠点をもつ国でもある
中国と明確に対峙する一方、チェコは台湾資本を積極的に受け入れている。
チェコに進出している外国法人で最大投資者は台湾に本社を持つ鴻海科技集団(フォックスコン)だ。同社は電子機器の生産を請け負う電子機器受託生産(EMS)では世界最大の企業グループで、あのアップル社のiPhoneの組み立て工程も引き受けている。
その他にも、ASUSやACERといった世界に知られるPCメーカーがチェコでビジネスを展開している。目下、米中関係が著しく悪化する中、鴻海はサプライチェーンを中国国内とそれ以外とを分断する構えを見せており、そうした流れを見てもチェコ拠点の重要性はさらに高まる。
ちなみに鴻海のチェコ拠点は、同社にとって欧州連合(EU)内に持つ最大規模。チェコにおける輸出品生産企業というポイントで見ると、同国を代表する自動車メーカー・シュコダ(SKODA)に次いで、鴻海は2番目の地位を占める。
これまで述べたように、チェコは自国の経済に対する対中依存度が相対的に低い一方、台湾からの投資が突出して大きかったという背景があり、最終的に今回のような「大決断」ができたとも考えられよう。
現地の経済アナリストは「チェコのマクロ経済は、外国からの投資を受けて安定している」とした上で、「チェコ経済が中国からの投資に依存しているという考え方は正しくない。中国からの投資を受けるために他のことを犠牲にしなければいけない状況にもない」と分析しており、「中国に対する忖度はチェコでは不要」とみるべきだろう。
■各国も台湾との結びつきを重要視するのでは
チェコに牙をむく中国に対し、ドイツのマース外相は9月1日、欧州5カ国を歴訪した中国・王外相との共同会見の場で「われわれは国際的なパートナーには敬意をもって接する。相手にも同じことを期待する」と明確に中国側を牽制した他、フランス外務省やスロバキアのペレグリニ首相もEU加盟国であるチェコとの連帯を強調した。
アナリストの間ではこんな見解も聞かれる。
「独仏両国の発言が後押しとなり、各国の政治家は今後、『一つの中国の原則』を放棄しないまま、台湾との経済的な結びつきを重要視するのではないか」
世界が冷戦構造から脱する機会となった「ベルリンの壁崩壊」は、元はと言えば旧東ドイツ国民による同国からの脱出を、当時のチェコスロバキア国民が手助けしたことが発端となっている。その後、チェコスロバキアは「ビロード革命」と呼ばれる平和な形で共産党政権を倒し、ついには旧ソビエト連邦の崩壊にまで至った。ビストルチル議長は台湾訪問に当たり、ビロード革命の指導者だった「故バーツラフ・ハベル元大統領の遺志を継ぐ旅になる」とも述べている。
「平和と自由の獲得」を是とするチェコの人々の思いも後押しした、今回のチェコ代表団の台湾訪問。この出来事はやがてどんな形で世界史の上で評価されることになるだろうか。
寄稿者;さかいもとみ(在ロンドン・ジャーナリスト)
コメント総数;104
1.新型コロナ問題、香港問題に続き、今回のチェコに対する中国の恫喝で、これまで比較的、中国寄りであったヨーロッパのスタンスが大きく変わった。中国と関係を断絶するというような極端な政策をとる国は、まずないと考えられるが、中国との距離感という意味で、明らかにフェーズの変化があるように見える。そして、中国やロシアとの距離感が、今後の各国の国際社会における立ち位置を諮る指標になっていくと思う。日本も政権が交代するが、この変化をよく見ながら、中国、台湾との関係の再構築を図っていくべきだと思う。
2.日本の政治家でもこういった動きをしたい人もいるだろうが2Fがいるから動けないんだろうな。そしてマスコミからも叩かれるんだろうな。野党も媚中だから期待できない。チェコがうらやましい。
3.日本企業は中国に依存し過ぎている。日本もアメリカに倣って、経済でカップリングを実行するべきだ。もう中国にはウンザリしている。
世界広しと言えども、「一つの中国論」を振りかざす政党は、支那を乗っ取った〝中国共産党”と台湾を盗んだ〝中国国民党″だけである。国(政府)で言えば中国だけでしかない。台湾は地場政党〝民主進歩党″が実権を握っており、台湾が「中国」であることを否定する立場だ。台湾の「主権者」は、盗人の〝中国人(=外国人)″ではなく、地元〝台湾人”のものだから当然だろう。要するに「一つの中国」は、〝中国人″だけの絵空事(幻想)に過ぎないのだ。その意味で、中台関係を『特殊な国と国の関係』と表した故李登輝元総統は真に正しい。なおその昔(中国国民党に侵略された後)、台湾では「本省人(=台湾人)」「外省人(=中国人)」という呼称(区別)が存在したが、今は死語化している。台湾に於いて「台湾省(2019年事実上の廃止)」なる行政区分は、既に「実態」がない(ヒトもカネも存在しない)からだ。
互助互恵・共存共栄を目的とする双務主義に則った「対等な国家間関係」が国際ルールとすれば、そもそも「一つの中国論」は外交に馴染まない。中国を除く全ての国家間では、議論の対象ですらないという意味で〝どうでもいいこと″だからだ。この「現実」を踏まえたとき、〝中国(中国共産党)への忖度″が如何に理不尽で属国根性丸出しであるかが分かろうというもの。チェコにしても、台湾にしても「独立国家」として当たり前の外交を展開しているに過ぎない。中国やそれに気兼ねする国のほうがおかしいのだ。
「一つの中国」を巡って妙なことが二つある。〝一つ″に拘るからには、中国以外に「中国」を名乗る国が他になくてはならない。だが、台湾をはじめ、そんな国は何処にもない。もう一つ、中国共産党は、嘗て〝「(中国国民党が樹立した)中華民国」は滅亡した(現存しない)″と言ってのけた。国連加盟(1979年)を正当化する「一つの中国」論の原点となった発言だが、この主張が逆にアダとなって墓穴を掘る結果になった。自らを「中国」と名乗る国など、現在では「中国」だけが唯一無二だからだ。中共〝自作自演″の「一つの中国」が、策に溺れた結果、自滅というかたちで終焉を迎えようとしている。自らを「無謬」だと思い上がっている中国共産党は、一度言ったら引っ込められない自己矛盾を抱え込んでいるのだ。、
翻って、蔡英文(台湾でなく)中華民国現総統が〝中華民国台湾″と敢えて「中華民国」を強調しているのは何故か。かと言って「一つの中国」に与する政治家でないと世界中の人々が知っているのがミソ。「中華民国」が現存している(中共主張の否定)にも関らず、何ら「一つの中国」に矛盾しないことを世界中に「証明」してみせるのが狙いと観る。何故なら、蔡総統は自国を「中国」と一度たりとも認めないばかりか、否定し続けているのだ。つまり、「中国」を名乗る国は『中華人民共和国』をおいてほかになく、『中華民国台湾』も自国が「中国」であることを否定しているのだから。何のことはない、大山鳴動して単なる中共の〝独り相撲″なわけだ。
中国共産党が主張する「一つの中国」を論破するのは簡単だ。中共が最も恐れる〝台湾独立勢力″との表現がヒント。彼らが言う〝独立″とは〝「中国」からの独立″に決まっている。当の台湾政府が自らを「中国」と認めてない以上、暖簾に腕押しで論争にすらならない。それだけの話である。そう考えると我国マスコミの中国と台湾を区別した表記(例;「中台関係」「中台交流」「中台問題」など)は、必ずしも〝中国寄り″とは言えまい。「中国」と「台湾」とは〝別の国″と認識してなければ成り立たない表現だからだ。これに対し、中国政府からの抗議はない。中華民国を名乗る台湾は、既に立派な〝独立国家″であって尚且つ自らが「中国」であることを否定している。この厳然たる〝事実″がある限り、「一つの中国論」が破綻(空理空論化)したも同然。ゆゑに、中共は抗議したくとも出来ないのだ。
なお、「一国二制度」とは、香港返還で味を占めた中共が、台湾にも食指を伸ばすための詐術に過ぎないが、今日の〝香港問題″でウソが世界中にバレてしまった以上、今後は使えまい。
〈追伸〉
中国の王毅外相は8月31日、チェコに対し「重い代償を払わせる」「台湾問題で『一つの中国』に戦いを挑むことは、14億人の中国人民を敵に回すことで、国際的な背信行為だ」と述べた。
おそらく、14億人に台湾人民は含まれていまい。香港問題と違い、直接的な言葉で「中国への内政干渉」と言えず、回り諄い言い方しか出来ないのは、内心で「台湾は中国国内でない」と自覚している証拠でもある。
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