米国も中国も韓国も信用できない時代、今こそ台湾に向き合おう
8/20(木) 16:05配信/NEWSポストセブン
新冷戦ともいわれる米中の対立、悪化し続ける韓国との関係──日本の外交はかつてない難局を迎えていると、メディアの論調も悲観的なものばかり。だが日本人は忘れているのではないだろうか。頼れる、そしてなじみ深い隣国の存在を。台湾──すでにその価値を日本以外の国は気づいている。
近年、日本を取り巻く国際情勢は大きな変革期を迎えた。
最大の要因は、米中の衝突だ。2013年の習近平国家主席就任以来、覇権主義を強める中国は、札束外交で各国を傘下に置き、今年6月には香港に「国家安全維持法」を制定し民主派を追いつめている。
一方の米国は、2017年のトランプ政権発足以来「アメリカ・ファースト」を推し進め、台頭する中国を封じ込めようと躍起だ。最近は互いの総領事館を閉鎖するまで、米中対立が激化している。
従来、安倍政権は親米路線だが、トランプ大統領は自国第一主義を深めるうえ、前言撤回や態度豹変が日常茶飯事であり、全幅の信頼を置くことはできない。
そうした間隙を縫って存在感を増すのが台湾だ。
8月9日、米国のアザー厚生長官が台湾を訪問し、10日には蔡英文総統と会談。1979年の断交以降、最高レベルの高官の訪台となり、米国の本気度が窺える。
だが米国以上に台湾との関係を重視すべきなのは、日本かもしれない。双日総合研究所チーフエコノミストの吉崎達彦氏が指摘する。
「米中対立が激化する中、“米中のどちらを選ぶ”と迫られた時、日本と台湾は同じ立場で悩める関係です。ともに親米路線ですが、露骨に米国を選ぶと近隣の超大国である中国から巨大なプレッシャーをかけられるため、中国にも配慮が必要になる。同じポジションにいるからこそ、日台はともに悩んで知恵を出し合う関係を築けます。韓国も同様の立ち位置のはずですが、現段階で日韓は歴史問題を巡って対立しており、協力的な関係を築くことは難しい」
経済での連携も欠かせない。トランプ政権は6日、動画アプリ「Tik Tok(ティックトック)」とメッセージアプリ「ウィーチャット(微信)」を運営する中国企業との取引の禁止を発表。日本国内でも今後、何らかの措置が取られる可能性が出てきた。
こうした中、頼りとなるのが台湾だ。
「台湾はハイテク産業が伸びていて、半導体の開発製造の実力が高く、半導体が衰退した日本企業が連携を深めるメリットは大きい。台湾を代表するIT企業、鴻海(ホンハイ)がシャープを救済したことが好例です」(吉崎氏)
実際、昨年10月に世界経済フォーラムが公表したイノベーション力指数で台湾は世界4位となり、6位の韓国と7位の日本を上回った。
コロナ対策で脚光を浴びたデジタル担当相の唐鳳(オードリー・タン)氏は日本のアニメの大ファンで、「コロナ対策やスタートアップ振興などで日本と協力したい」と語っている。「天才デジタル担当大臣」のこうした路線も日本経済の追い風となるはずだ。
安全保障面でも日本と台湾は「ウィン・ウィン」の関係を築ける。元航空自衛隊3佐で評論家の潮匡人氏が指摘する。
「一国二制度を唱えながら、香港の弾圧を始めた中国を見て、“明日は我が身”である台湾は、自由主義国の日本と連携する必要性を感じているはずです。日本にとっても台湾はシーレーン上の要衝であり石油をはじめとする多くの資源をこのシーレーンを通して輸入している。万が一、台湾が中国に渡ったら、タンカーは遠回りしなければならず、資源価格が一気に高騰する可能性がある。日台の連携は、お互いの安全保障面からも重要です」
日台関係は、台湾の目と鼻の先にあり、中国が虎視眈々と占拠を狙う尖閣諸島の領有権問題にも直結する。
台湾の戦略的重要性に気づき始めた日本政府は、2020年度版の外交青書で初めて台湾を「極めて重要なパートナー」と位置付けた。
だが日台の歴史を振り返れば、青書は遅きに失したと言わざるを得ない。
李登輝氏が込めた期待
歴史的に見ても台湾とは連携が取りやすい。日本と台湾の交流は、1895年からの日本統治時代に遡る。
「この時代に日本は台湾の近代化を推進しました。縦貫鉄道や港湾、飛行場や電話網などのインフラ整備が進み、灌漑や品種改良などで農業技術が向上し、教育水準も上がったことが、戦後に台湾が経済発展する礎となった。
しかも台湾では、戦後に中国から流れてきた国民党の統治があまりに強権的だったため、日本時代の寛容な統治を好意的に懐かしむ人が多かった」(潮氏)
日本統治時代を知り、日台関係を象徴する人物が、7月30日に他界した李登輝元総統だ。
李登輝氏は日本統治時代に高等教育を受け、「22歳までは日本人だった」と語っていた。
「1988年に総統になった李登輝氏は民主化に舵を切り、中国に背を向けて、自由主義陣営に入る意思表示をしました。彼の頭の中には常に日本があり、かつて統治関係にあった日本と台湾が団結して、中国の脅威に立ち向かうことを望んでいました。李登輝氏はよく、『台湾と日本はお互いに運命共同体であり、より一層密接な関係を深める必要がある』と述べていましたが、その言葉の裏には、日本への期待が込められていたのです」(潮氏)
李登輝氏の思いこそ、日本と台湾が共有する最大の財産ではないか。
「もともと日台関係は良好で、お互いが気持ちよく付き合える関係性があります。同じ自由主義陣営で価値観を共有し、歴史問題も台湾は未来志向で、個々の問題にも是々非々で対応する。日本は新たな日台関係を構築すべきだと思います」(ジャーナリスト・野嶋剛氏)
今こそ頼れる隣国の存在に向き合うべきだろう。
※週刊ポスト2020年8月28日号
1.日本のマスメディアは特段話題に挙げませんが、日本で大きな災害が発生した時に、諸外国の中でも迅速かつ大胆に動いてくれているのは台湾です。支援して頂いている身で他の国々を比べるのは大変失礼だとは思いますが)。台湾などの、いわゆる親日国(区域)からは損得勘定や外交政策とは異なる、別の暖かみを感じます。個人の力ではどうしようもない窮地に立たされると、特に「人と人」「国と国」といった繋がりを普段よりも強く感じるからでしょうか。そういった意味でも、やはり中国と台湾は似て非なるものだと個人的に思っています。中国も大事な隣人ではありますが、やはり台湾とは本質的には別個の存在です。受けた恩は相手にも恩で返すべきで、信頼してくれている相手には信頼で返すべきです。台湾から受けた恩を台湾に返すために、まして台湾が消えそうなときは台湾を救うのが、日本人としての本義なのではないでしょうか。
2.日本との関係では中韓は論外。アメリカと同盟関係にあるとは言え、どこまで信頼出来か分からないところとある。その点、いつも日本に何かあった時は心のこもった対応をしてくれる台湾こそ真の友人、今は国交の樹立は難しいかもしれませんが、大切にお付き合いしたい「国」。中国に負けない台湾を応援したい。
3.その通りなのだが、台湾も決して一枚岩ではない。台湾にも、親中反日の外省人は山ほどいるし、福建省出身の新移民も少なくない。現に、日本ほど多くはないだろうが、台湾にも中共のスパイはたくさんいる。次に国民党が政権を執ることがあれば、一気に中共を招き入れるだろう。だから、台湾と関係を強化するなら、台湾のどういう勢力を支援するのか、細心の注意が必要だ。日本国内にいるような感覚では、台湾国内の中共スパイにやられるのがオチである。
米中新冷戦下、とかく西洋的価値観のみに基づいて、米国(民主主義・自由主義・法治主義)対中国(全体主義・没自由主義・人治主義)のどちら側に就くかという二者択一式の論調が多い中、珍しくコトの本質に迫る良い記事だと思う。
そもそも、我国の「民主主義」も「自由主義」も「法治主義」も、訳語(日本語)になった時点で、原語の「デモクラシー」「リベラリズム」「リーガリズム」とは微妙に異なる日本的要素が加味されている。「大正デモクラシー」を敢えて〝大正民主主義″と呼ばないのも、時代劇は別として米国を「メリケン」と呼ばないのもそのためだ。現代でも、米国「民主党」的政治イデオロギーを〝リベラル派″と呼んで、我国では左派系政党の専売特許(?)になったり、自民党に入り込んでは「新自由主義」と呼んでサヨクのそれと区別しているのがその証拠である。語源は同じであるにも係わらず。
そんな煩わしく考えるより、もっと単純に国家権力対一般国民の関係で考察したほうが分かり易いのではないか。つまり、前稿で書いたように、その国の権威・権力者が、一般庶民(国民)に対してどれほどの愛情(信頼)を以て国家運営に臨んでいるかに尽きる。もっと言えば、我国古来の〝シラス・ウシハク思想(出典「古事記」)″に照らすと分かり易い。
*お浚い*
・シラス=知らす(治らす)
=万物を万民の共有物とする考え方
=万民平等(非階層)型社会=貧富・上下・知力等の格差が小さい
=共存共栄・互助互恵に根ざした相互信頼に基づく友好的人間関係
≒血縁地縁友情などゲマインシャフト(共同体)的な利他型精神
・ウシハク=主人履く
=万物を主人(統治者)の所有物とする考え方
=階級(ヒエラルキー)型社会=貧富・上下・知力等の格差が著しい
=諸物を巡って争い奪い合う相互不信に基づく排他的人間関係
≒ゲゼルシャフト(利益体)的利害関係で合従連衡を繰り返す利己型精神
(カネの切れ目が縁の切れ目)
もちろん、世の中は二元論で片付くほど単純ではないが、凡そどちらが望ましい姿かは見当がつくと思う。我国を含めて各国政権は〝永久不滅″ではない。重要なのは、政治的党利党略ではなく、一般庶民の内心動向(所謂「庶民感覚」)だと思う。諸外国を「親日」「反日」で判断するのは簡単だが、何を以て「親日」「反日」と定義するかさえ明確ではない。しかし、シラス思想は暗示する。「信義(真心を以て約束を守り、相手に対する道義的責任を果たす)」で固く結ばれた関係が、簡単には崩壊しないことを。
この「信義則」で国際情勢を俯瞰すれば、我国が何処の国と付き合い、どの国と距離を置くべきかは自明であろう。西洋諸国は並べてウシハク的だが、信義を守らない国々ではない。蔡英文台湾総統も、米国民主党的リベラル政権ではあるが、信義に問題はあるまい。信義に背を向ける国となると・・・。やめておこう、言わずもがな、だから。
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