中国・王毅外相が岸田首相に「一線を越えるな」と警告の真意。
背後に安倍元首相の「気になる」動き
11/5(金) 8:10配信/BUSINESS INSIDER JAPAN
中国の王毅外相が台湾問題で「一線を越えるな」と、日本の岸田新政権に注文をつけた。
岸田首相は中国と良好な関係にある自民党派閥「宏池会」出身のため、中国では関係改善に期待する声がある一方、台湾を重視する岸田首相の「友台」路線への警戒感も根強い。
スタートしたばかりの岸田政権に対し、王毅外相がくぎを刺した真意はどこにあるのか。
■「一つの中国」政策の順守を
冒頭の発言が飛び出したのは、衆議院選挙が終盤を迎えた10月25日、日中両国の識者が議論する「東京─北京フォーラム」へのビデオメッセージだった。
台湾問題について「両国の政治的基盤にかかわる」と指摘した上で、「一線を越えたりルールを破ったりしてはならない」と警告。
さらに、「台湾は中国の不可分の領土」とする中国の主張を日本が理解し尊重すると表明した日中共同声明(1972年)をあげ、「いかなる状況でも厳守すべき」と強調した。
王毅外相の言う「一線」が、「一つの中国」政策の順守を指していることは明らかだ。
米中対立の最重要争点となっている台湾問題は、日米関係にとっても重要なテーマと言える。
菅前政権は日米首脳会談(2021年4月)後の共同声明に「台湾海峡の平和と安定の重要性」の文言を約半世紀ぶりに明記し、日米安全保障条約の性格を「地域安定」装置から「反中同盟」へと変質させた。
その直前の3月には、東京で外務・防衛閣僚による日米安全保障協議(いわゆる「2プラス2」)を開催。このとき岸信夫防衛相はオースティン米国防長官に「台湾有事では緊密に連携する方針」を確認。台湾支援に向かう米軍に自衛隊がどのように協力できるか検討すると約束している。
台湾問題を「内政問題」とする中国からみれば、台湾をめぐって日米が軍事協力を強化する展開は容認できない。
岸田首相は年内に訪米して日米首脳会談を実現し、ワシントンで2プラス2を再度開く予定。そこでは、台湾有事における米軍の後方支援に向け、集団的自衛権行使を容認する安保法制の法的枠組みを盛り込みたい考えだ。
一方、中国側は日米2プラス2について、(1)米軍の中距離ミサイルの日本配備問題(2)「航行の自由作戦」への自衛隊参加(3)南シナ海などでの民間船の安全確保、などの論点に関心を抱いているとみられる。
また、中国と台湾が9月半ばに相次いで加盟申請した環太平洋連携協定(TPP)を、議長国の日本がどう処理するかにも、中国側は強い関心を寄せている。
もし日本が台湾の加盟手続きを先行させれば、中国は「一線を越える」として激しく反発するだろう。
■岸田首相の「対中国」「対台湾」観
それにしても、岸田首相はどのような対中国・台湾観を持っているのだろうか。
10月8日の所信表明演説で、岸田首相は「自由で開かれたインド太平洋」を推進していくことを強調した上で、国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画(中期防)の改定をあげた。いずれも対中防衛力の強化を意図したものと考えられる。
岸田首相は日中関係について、日米同盟、日朝関係改善のあとに取り上げており、優先順位は相対的に低い。
また同演説では、「普遍的価値を共有する国々と連携」して「(中国に)主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求める」と述べており、関係改善へのポジティブな姿勢は読み取れない。
では、そうした姿勢は近年の対中政策と比較してどう位置づけられるか。
安倍元首相は施政方針演説(2020年1月)で「首脳間の往来に加え、あらゆる分野での交流を深め広げることで、新時代の成熟した日中関係を構築する」と、関係改善への積極姿勢を見せた。
当時は習近平国家主席の訪日が目前に迫っていることもあったと思われる。なお、3月には新型コロナ感染拡大を理由に訪日が延期されている。
続く菅前首相は施政方針演説(2021年1月)で、「両国にはさまざまな懸案が存在するが、ハイレベルの機会も活用しつつ、主張すべきは主張し具体的な行動を強く求めていく」と述べた。
「ハイレベルの機会」とは、首脳往来への言及とも受けとれるが、岸田首相の所信表明演説ではそれすら消えてしまった。
こうしてみると、岸田首相の対中姿勢はきわめて冷淡と言っていい。
台湾政策はそれと対照的だ。
衆議院代表質問(2021年10月)で台湾について聞かれた岸田首相は、台湾を「わが国にとって基本的な価値観を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人」「非政府間の実務関係として維持していく日本政府の立場を踏まえ、日台間の協力と交流のさらなる深化を図っていく」と答えている。
この表現は2016年1月、蔡英文氏が台湾総統に当選した際、岸田氏が日本外相として初めて祝賀談話を発表したメッセージとまったく同じものであり、日本政府の「主体的な」台湾関与政策の基調をなす認識と言える。
親台姿勢の安倍首相から指示があったとみられるものの、第二次・第三次安倍政権の4年7カ月にわたる岸田外相時代に、日台の公的関係が前進したことは間違いない。
■安倍元首相が主導する「台湾との対話」
日本と台湾は2013年4月、尖閣諸島(台湾名・釣魚台)南方の東シナ海の日本の排他的経済水域(EEZ)で、台湾の漁業者による操業を認める暫定海域を定めた「日台漁業取り決め(協定)」に調印している。
当時の安倍首相が、尖閣問題で共通の姿勢をとる(中台)両岸の関係に「クサビを打つ」狙いは明らかだった。
また、2017年1月には台湾との民間交流機関「交流協会」の名称を「日本台湾交流協会」に変更。同年3月には赤間総務副大臣(当時)が台湾に出張。日台断交後、副大臣が公務で台湾を訪問するのは初めてで、交流レベルの格上げと言える。
安倍政権下で進んだ「反中」の裏返しとしての「友台」は、続く菅政権でも進んだ。
台湾への新型コロナワクチンの供与は10月末までに計6回約420万回分に達した。安倍氏が水面下でアメリカと台湾に働きかけ、その連携下で実現したものとされる。
安倍氏は7月末、アメリカの上下両院議員、台湾の立法委員(国会議員)と初の戦略対話をオンラインで開き、台湾への圧力を強める中国の軍事拡大に強い懸念を表明している。この戦略対話は今後も定期的に開くという。
「親米・反中・友台路線は日本の最大公約数であり、岸田でも変わらない」
台湾大手紙の聯合報は、自民党総裁選で岸田氏が当選した日にそう書いている。
同紙が指摘するように、日米安保を対中同盟に変質させても野党から反対の声はあがらず、敵基地先制攻撃やGDP2%超の防衛費も選挙の争点にはならなかった。
中国社会科学院の呉懐中・日本研究所副所長は「嫌中」「反中」「抗中」が日本国内で政治的正義になっており、支配的価値観の変化を意味する「パラダイムシフト」が起きていると分析している。
対中・台湾政策について、岸田首相はキングメーカーたる安倍元首相の強い磁場からは自由になれないだろう。
■王毅外相「警告」の真意
冒頭で紹介した王毅外相の「一線を越えるな」との警告には、自民党右派が国会上程を計画している「日本版台湾関係法」も含まれるはずだ。
米国家安全保障会議(NSC)のカート・キャンベル・インド太平洋調整官は、日米首脳会談直前の4月初頭に極秘来日した際、北川国家安全保障局長ら政府当局者に対し、米台湾関係法にならって日本も台湾に兵器・兵器技術供与を可能にする枠組み(日本版台湾関係法)を導入するよう要求したといわれる。
また、安倍元首相は7月末に産経新聞のインタビューに応じ、台湾訪問の希望を表明。これを受け、台湾の民間シンクタンクは同元首相の訪台時に立法院での演説を設定する準備に入ったという。
中国はバイデン米政権が「一つの中国」政策の空洞化を狙っていると警戒する。そして王毅外相の警告も、日本版台湾関係法や安倍元首相訪台による「一つの中国」空洞化に向けられたものと理解すべきだろう。
◆執筆者/岡田充(共同通信客員論説委員)
コメント総数;791
一、「いかなる状況でも厳守すべき」「一線を越えてはいけない」
中共は香港に何をしたのですか
一線を越え、中共の都合のいいように状況を変えた
台湾は一度も中国の物になった事はありません
いかなる状況でも厳守すべきです
二、「「嫌中」「反中」「抗中」が日本国内で政治的正義になっており、」
ウソが多すぎる。他国を脅す。自己正当化が過ぎる。こんな国、嫌われて当然だろう。それをさも意外かのように。どこまでズレているのだろう。
三、安倍氏の訪台は凄くいいと思うよ。1個人としていけば別に問題ないでしょ。
イチャモン付けられる筋合は無いです。弟も1個人として訪台していますから。
四、何で中国から命令されなきゃならないの?
日本も恫喝できるネタはあるのだから、言い返してやれば良い。
五、表向き一つの中国の原則はアメリカもEUもそして日本も維持はしてます。ただ、各国が台湾への歩みよりを見せているのは、中国が現状を力で変えようとしている事への警戒感からです。日本は特に尖閣がらみ。こちらから言わせれば、原因は中国。 この王毅さんの発言にしても上から目線の発言。日本人が反発するのは当たり前です。EUだって台湾を訪問した。今年になってからの情勢は全然違う。どんどん孤立感を深めているは中国です。
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人心を離反させるばかりの「戦狼外交」は、中共が如何に無知無能であるかを物語るニュースである。何より愚策に気付いてないところが独裁政権たる所以だ。つまり、ウシハク(≒独裁政治)しか知らないから、シラス(≒民主政治)社会に於ける真の権力者を、政財官学マスコミ界指導層と錯覚しているのである。
中共プロパガンダに曰く「台湾は中国の一部」、所謂「一つの中国論」である。中共の主張が正しいとすれば、台湾人は民族的にも中国人でなければならない。ところが、日清戦争の結果台湾は、大清帝国から大日本帝国に割譲(1895年)されたのが歴史的事実である。かつ、清国王朝は満洲民族が興したのであるからして、中国人(漢民族)国家ではない。従い、民族学的にも台湾人を中国人(漢民族)とする学説など存在しない。確かに、オランダ・ポルトガルなどの西洋人勢力が台湾を植民地的に占領していた中世に於いて、シナ大陸から苦力として連れて来られた者が居たのも事実だが、かと言って中国(明国)人が支配していたわけでもない。
台湾人(戦後渡来した中華民国籍の軍民を除く)が中国人でない理由を文化的側面で捉えてみよう。『殺人刀活人剣』という言葉がある。
【殺人刀活人剣】-せつにんとう かつにんけん-
仏教禅宗で、妄情を断ち切る禅者の働きを刀剣に喩えていう。
【殺人刀】-せつにんとう-
人を殺すために使う刀。殺人剣。
【活人剣】-かつじんけん-
本来、人を殺傷する目的のための刀剣が、使い方によって人を活かすものとして働くこと。
仏教は、天竺(印度)から唐国(中国)・百済(韓国)を経て六世紀頃我国に伝来したとされる。しかし、中国や韓国では定着せず、単に通過しただけというのが歴史的事実である。『殺人刀活人剣』の心(こころ)とは、武器(道具)であっても使い方次第で凶器にも護身用にも使えるという意味である。類似語に『両刃の剣』『頭と道具は使いよう』などがあり、一例を挙げれば、安全設計の最新型車であっても、使い方(運転)を間違えれば、忽ち〝走る凶器″と化す。こうした正負両面ある諸問題を解き明かす我国特有の考え方で、特亜三国(中・韓・北)はもとより西洋先進国にも概ね存在しない。彼等にとって刀剣類は飽くまで矛(ほこ=武器)であり、防御には盾(たて)を用ゐるとの二者択一的単純発想しか出来ないのだ。
彼らの思考パターンは、黒白がはっきりしたデジタル回路(単純化)なのだ。しかし、自然界や世の中は複雑怪奇、何事も二者択一で解決できるほど単純ではない。我国の場合、先人たちは、自然界や世の中を人間の叡智だけで制御(統治)できるほど簡単でないことを知っていた。それが仏像・建築・造園などの形となって現れている。各仏像は個性に溢れ、建築・造園とて何一つ同じものが存在しない。要するに我ら日本人は、西洋近代主義の人工的・機械的・画一的な思考パターンとは対極の考え方が出来るということだ。
その点、約半世紀にわたって日本統治時代を経験した台湾人には、『殺人刀活人剣』的精神が、李登輝元総統らの〝日本精神″となって、戦後日本人より純粋な形で受け継がれている。東欧を中心としたEUの中国離れと台湾接近は、【弱きを救け強きを挫く】という伝統的な我国の正義感が、国際的なトレンドになりつつあるのだと思う。
歴史は、一握りの権力者のみが作るわけではない。その時代を生きるひとりひとりの人間が共存共栄・互助互恵の関係を以て創造して行くものなのだ。
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