英国TPP新規加盟で〝中国排除〟 台湾には強い援軍
WTOに代わる「自由民主主義陣営共通ルール」のひな型に
7/25(火) 17:00配信/夕刊フジ電子版
【ニュースの核心】
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に加盟する日本など11カ国が、英国の新規加盟を正式承認した。ロシアによるウクライナ侵略を受けて世界経済の分断が進むなか、公平かつ公正な自由貿易圏の拡大は、独裁専制主義国である中国やロシアを見据えた経済安全保障の視点からも歓迎すべきだ。中国当局は、東京電力福島第1原発の処理水海洋放出計画を非難し、日本から輸入した水産物に対する全面的な放射線検査を始めたが、タチの悪い意趣返しなのか。ジャーナリストの長谷川幸洋氏は、自由民主主義国を牽引(けんいん)する日本の覚悟と責任に迫った。
英国が16日、日本などが参加するTPPに加盟した。11カ国で発足したTPPが新規加盟国を受け入れるのは、これが初めてだ。欧州からの参加は、アジア太平洋で強まる一方の「中国の脅威」に対抗するうえでも意義深い。
2020年にEU(欧州連合)から脱退した英国は脱退後に経済が低迷し、EUに変わる新たな自由貿易協定の相手を求めていた。TPP参加による経済浮揚効果は英政府の推計で毎年、GDP(国内総生産)の0・08%程度とみられているが、英国の参加でTPP自体の存在感が高まる効果が大きい。
世界の貿易秩序は世界貿易機関(WTO)によって形作られてきたが、中国がWTOに加盟した後、秩序の形骸化が目立つようになった。紛争解決機関は米国の反対を受けて、調停に当たる肝心の「裁判官」不在の状態が続いている。その結果、WTOに提訴しても審理が進まず、ルール違反は「やったもん勝ち」になった。
例えば、米国は昨年8月、インフレ抑制法とCHIPS法を相次いで成立させ、自国の電気自動車と半導体産業優先の政策を進めている。WTOの内外無差別原則からみれば、違反に当たる可能性が高く、英国や韓国は不満を抱えているが、WTOに提訴しても意味がないので、黙認せざるを得ないのだ。
日本は3月に米国と重要鉱物サプライチェーン強化の協定を結び、電気自動車に使われるバッテリーの原材料であるリチウムの囲い込みに動いた。本来なら、WTOルールの強化を訴えたいところだが、背に腹は代えられなかった。
WTOが形骸化するなか、英国を加えて12カ国に拡大したTPPが結束するのは、米国、EU、ルール無視の中国といった経済大国・地域に対する発言力を強めるうえで意味がある。日本やオーストラリアなどが個別に声を上げるより、各国がまとまって発言した方が影響力が大きくなるからだ。
今回の英国参加に、もっとも衝撃を受けているのは中国だろう。
中国と台湾もTPPに加盟申請しているが、中国が自由貿易と投資のルールを守るとは、とても思えない。そもそも、国営企業に対する巨額の補助金が自由経済に背くルール違反なのだ。
そんな中国の加盟を阻止するうえで、英国は日本やオーストラリアなどとともに、もっとも頼りになる存在だ。TPPの意思決定は全会一致が原則なので、日英両国が反対すれば、中国は加盟できない。逆に、台湾は日英の後押しが強い援軍になる。
英国はTPP加盟によって、EU脱退のマイナスを補う発言力を確保するかたちになる。TPPから抜けた米国は独自路線を進みそうだが、EUは将来、TPPとの連携を模索する可能性もある。
長い目で見れば、日米欧を中心とする自由民主主義国は、中国やロシアのような独裁専制主義国と、同じルールの下での共存共栄を望めない。TPPはやがて、中ロも加わるWTOに代わって、自由民主主義陣営が守る共通ルールのひな型になるのではないか。
■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア―本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。
コメント総数;152件
一、台湾加入は中国が東南アジアの国にどれくらいの強度で圧力を掛けられるか次第なんじゃないかな。
ただこの間のASEANでも中国が日本の処理水放出を議題に取り上げてASEAN問題にしようと工作したが失敗したし、全ては日本や米国の対応次第か。
台湾はさておき中国と韓国はそもそも日本の水産物や農産物に輸入規制をかけているので、TPP加盟は土俵にも上がれないよね。
二、英TPP加盟
TPPは「自由・民主主義・基本的人権・法の支配」という基本的価値観に賛同する国々の集まりです。
そのTPPルールに沿った価値観を共有できる国の集まりであることから、TPP加盟には加盟国全会一致の原則があり、高い壁として立ち塞がります。
英国が加盟したことにより、中国や水面下で加盟申請提出を模索し、日本政府に協力要望する韓国は価値観の共有すらできないことで、加盟はできません(これは日本と韓国の問題では無いことから)。
台湾に付いては、何の問題も無く加盟できると思いますが、邪魔する国があるということを留意しておかなくてはいけません。
三、TPPはトラちゃん=アメリカが脱退して、日本を中心にしてよいものができた。これからも発展させていくべき。
「環太平洋」といいながら、太平洋に領土がなくても加入できる。
イギリスの加盟は決定、後はフランス、あるいはEU。そして台湾。ちょっと警戒が必要だが、インドとブラジル。
TPPは約束を守らない国は入れてはいけない。例示をすると、中国、半島の南北、ロシア。
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国際的なリーダーシップ不足を指摘されて久しい戦後の日本政府だが、「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)」で主導的な役割を果たしている。原加盟11か国(日本・メキシコ。シンガポール・ニュージーランド・カナダ・オーストラリア・ベトナム・ペルー・マレーシア・チリ・ブルネイ)に欧米超大国や中国・ロシアが居ないため、G7の一角カナダが加盟しているものの経済規模が最も大きい日本がイニシアティヴを執るのは自明の理である。むしろ、米国が抜けたことが〝災い転じて福となった″と言えなくもない。「米国追従」の謂れなき非難を浴びることもないからだ。
今回、香港問題で中国に裏切られた英国が加わったことで、中国排除の色彩が強まると思われる。飽くまで想像に過ぎないが、中国のTPP加盟申請は台湾加盟阻止への嫌がらせに過ぎないと観る。現に加盟要件に反して福島原発処理水放出問題に支離滅裂な難癖をつけているではないか。
「環太平洋」に属さない英国の加盟を疑問視する向きもあるが、名称を変えさえすれば済む話だ。筆者の長谷川氏は東京新聞記者上がりで、今は〝保守″を標榜しているが、本を質せば左翼の出である。ゆゑに、伝統的保守派とはやや趣を異にする。斯く言う自分も、現役時代は労組役員だったわけだから、同じ穴の狢かもしれませんがね。
ところでこのTPP、『大東亜共栄圏』の戦後版だと思っている。『大東亜共栄圏』とは、アジア諸国が一致団結して欧米勢力をアジアから追い出し、日本(現台湾・北朝鮮・韓国・パラオ含む)・満洲・中国(汪兆銘国民党政権)・米領フィリピン・タイ・英領ビルマ(現ミャンマー)・英領インド(現パキスタン・スリランカ・バングラディッシュ含む)を中心とし、フランス領インドシナ(仏印=現ラオス・ベトナム・カンボジア)、イギリス領マラヤ(現マレーシア・シンガポール)、イギリス領北ボルネオ(現ブルネイ・マレーシア)、オランダ領東インド(蘭印=現インドネシア・東チモール)、オーストラリアによる政治・経済的な共存共栄を図る政策である。
戦時中と異なるのは、悪しきウシハク思想(覇権主義=「植民地主義」を捨てた欧米諸国が、共存共栄を旨とするシラス思想(日本型統治形態)に共鳴しつつあるということだろう。
【シラス】-知らす・治らす・統らす-
人類を含む万物を自然界全体の共有財産とする考え方
互助互譲互恵・共存共栄型利他的社会
【ウシハク】-主佩く-
人類を含む万物を主(あるじ=支配者)の私有財産とする考え方
弱肉強食型利己的社会
唐突ながら、プロ・アマを問わず野球を観なくなって久しい。自分は日本の「野球」と米大リーグを頂点とする「ベースボール」は違う文化だと思っている。ところが、昨今は、限りなく「ベースボール」を希求するが如き風潮が気に入らないからだ。
「ベースボール」も「フットボール(サッカー)」も本来団体競技だが、西洋発祥のこれらスポーツは概ね個人技の集合体と捉えられがちである。ところが、日本式「野球」乃至「サッカー」の場合、何よりチームプレーが最優先される。三振も単なるアウトの一つと割り切る西洋人に対し、自身はアウトになっても走者を進める打撃を〝進塁打″と呼ぶのは日本だけである。
我国には、古来より「道(どう)」という考え方がある。「茶道」「華道」「剣道」「柔道」「合気道」など、その道(みち)を究める(希求する)ことを言う。野球も「野球道」なのだ。野球用具を大切にした王貞治選手もイチロー選手も求道者のように思えたのは私奴だけだったろうか。
【求道者】-ぐどうしゃ-仏教語
①仏の教えを求める者。
②真理を求める者
ところで王貞治(1940年生)氏は中華民国籍だが、実は台湾との縁はない。自分も誤認していたが、戦前の台湾は日本領でかつ東京生まれの氏には無関係でしかない。浙江省生まれの父王仕福氏が中国(当時の支那=中華人民共和国は存在しない)国籍だったことに由来するらしい。
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