これが日本に真の「働き方改革」を起こす筋道だ!
米経済メディア知日派コラムニストが提言
10/3(木) 19:00配信 クーリエ・ジャポン
結局「生産性」の問題に…
根本的な問題は、人口の高齢化だ。年金制度は逼迫(ひっぱく)し、現役労働者はますます増える退職者を支えざるをえなくなっている。
合計特殊出生率は1.42と比較的低く(2.1が人口置換水準とされている)、競争力を維持しつつ、公的資金を確保していくには、急速に生産性を上げる必要がある。
男女平等が雇用数としては改善しているとはいえ、日本はまだ職場での平等実現に苦戦している。
安倍晋三首相は、「2020年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする」と宣言したにもかかわらず、現時点でその割合はわずか13%に甘んじている。
そのことがおそらく、生産性(女性たちの才能が利用されていないので)も出生率も押し下げており、したがって日本の長期的な経済課題を大きくしている。
雇用制度の改革を急げ
国の未来のために、日本の企業文化は進化すべきだ。
ひとつの鍵となる変化は、努力重視から結果重視の文化への転換だ。従業員が机の前にどれだけ長く座っているかを管理する代わりに、企業は仕事の持ち帰りを認めるべきだ(そうすれば仕事しながら子育てしやすくもなる)。昇進・給与はもっと、年功よりも技術と結果に基づくべきだ。
こうした変革を始めている会社はいくつかあるが、この流れが加速する必要がある。
第二の重要なステップは、日本の硬化した雇用制度の改革だ。
現在、職のタイプは2つある。常勤職と臨時職だ。常勤の働き手は一般的に、年功に基づいた昇給・昇進を受ける。一方、契約・パートタイムの働き手にはその道が用意されていない。近年、企業は経費削減のため、後者をより多く雇用している。
当然、女性がこの不平等な制度の影響をもろに受けている。2018年に雇用された女性のうち、ほぼ4分の3が非正規職に押しやられた。正規職に就いたのは、働く女性の半分以下だ。男性だとほぼ5人中4人が正規職を得ている。
進路を切り替えにくいことも、この格差を広げる要因となっている。
「就活」と終身雇用制、いつまでやるの?
伝統的に、日本企業の大半は、「就活」と呼ばれる制度を通して、新卒生を直接採用する。企業はこれまで、非正規労働者を正規職として採用することに消極的だった。一方で、終身雇用制のせいで、中途転職の機会は少ない。
したがって、就活はいちかばちかの賭けとなる。新卒で望ましい就職ができない人は、やりがいのずっと少ない進路を余儀なくされることが多い。しかもそこから抜け出せる望みは薄いのだ。
こうして必然的に、性差別がさらに助長されることになる。何十年も前の就活制度で不当にも非正規職を余儀なくされた女性たちは、たとえ性差別が減っても、将来のない進路を行くほかないのだ。
硬直した終身雇用制はおそらく、生産性にも支障を来している。働き手を採用すると、何十年もずっと一緒に仕事することになる。
だから日本企業は、雇用に関して過度に保守的にならざるをえない。重要なイノベーションをもたらすとか、あるいはビジネスを新しい方向に導くかもしれない見込みのある新星にかけないのだ。
また、年功序列の昇進によって、最新のビジネスをあまり理解していないおじさんたちが経営陣に据え置かれることになる。
新しい労働システムへ
幸いなことに、この凝り固まった不公平な制度を変えはじめている企業もある。
日本の有力ビジネス団体「経団連」は最近、これまで定めてきた「就活ルール」を廃止すると発表した。
一方で、転職も、控えめながら増えてはいる。これが好況ゆえであることは明白だが、テクノロジーによるところもある。
実業家の仲暁子が創設した求人型SNS「Wantedly(ウォンテッドリー)」は現在、月間アクティブユーザー240万人を誇る。これは日本の全労働人口の約3.7%に相当する。
日本政府は、この労働市場の転換加速を促進する必要がある。企業に中途採用を増やし、Wantedlyのようなサービスを活用するよう働きかけるべきだ。中途採用をする企業に対する減税すらありうるだろう。
政府は、常勤職の法的必要条件を緩和し、契約・パートタイム労働者のそれを強化し、企業が従業員の正規・非正規雇用を変えることにあまり慎重にならずに済むようにもすべきだ。
終身雇用制と正規・非正規にきっぱり分かれた労働市場は、日本の戦後の産業化をよく支えた。だが、それはいまや負債だ。生産性と公平性のために、日本は新しい労働システムを必要としている。
寄稿者;Noah Smith
コメント;
欧米に言われるままに変えて来た結果が今の状態ですよ。
1980年代に独自のやり方で事実上独り勝ちだったものを、変える必要の無い事を欧米に言われるままに変えて来た結果、日本の持つ強みを完全に失い、コミュニティの崩壊と2極化と出生率の低下を招いたのは間違い無いと思いますね。
かつては欧米が真似したくても出来ない社会が日本にはあったんですよ。
欧米人エコノミストの寄稿と思われるが、記事のままに実行したらとんでもないことになる。当方が言わんとするところはコメントの指摘に尽きる。
欧米から観たら旧弊と映る終身雇用にせよ、年功序列賃金にせよ、労働を悦びとする気風にせよ、それが我国の風土に合っていたのである。経済大国に成長した我国を妬む欧米から「働き過ぎ」とのいわれなき中傷を受け、無理矢理欧米的価値観に基づく変革を迫られて可笑しくなったのである。
「現代ビジネス」の配信では、上記寄稿に真っ向から対立する論文が出ていた。確か、米国某大学の知日派教授だったと思う。これを載せたかったのだが、何故かYAHOOニュースから即座に削除されてしまった。
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