趣味としてのTV録画は相変わらず惰性的に続行中だが、ここのところ韓国ネタにかまけて懐メロを含む音楽ネタから遠ざかってしまった。しかし、ソニーのDAP=NW-ZX300に落として日々ネホンすることを忘れたわけではない。旅行中は、気楽に聴けるオールディーズ、歌謡曲、邦画音楽、韓流ドラマOST、中国民族楽・時代曲、台湾ポップス、タイルークトゥン・ポップスなど種々雑多を持ち歩くが、自宅ではクラシック(古典音楽)を専らとする。これらのうち、好んで聴いてる曲を記事にしてみよう。
第1回目は、ブラームス『交響曲第2番ニ長調』(1877年作)。
ブラームスは、ロマン派全盛期に生きながら新古典派と呼ばれる保守的な作風で知られる。したがい、曲調は総じて渋く地味である。そんなわけで、万事派手好みかつ流行に敏感な若い時分は理解しきれなかった。教育実習中(1969年)、ブラームス好きの先生が居て、『二重協奏曲』や『クラリネット五重奏曲』を話題にしてたが、ネクラにしか聞こえなかった。しかし、齢四十を過ぎた辺りから良さが少し分かるようになった。【男の哀愁】を感じとったからだ。家族を率いる長(おさ)として、決して「涙」を見せるわけにはいかない。けれども人間だから、時には泣きたいこともあろう。平静を装いながらも内心で泣く。これが【男の哀愁】だと思う。つまり、表情は普段と変わらぬものの、背中では泣いているのだ。
そうした哀感は、『二重協奏曲』『クラリネット五重奏曲』などに染みわたる。それに比べると『第2』は、寂寥感には乏しく陽光が射し込む明るさばかりが目立つ。全四曲のうち有名なのは『第1』『第4』の両短調曲で、こちらは演奏機会も少ない。それでも、全集を含めて9種のCDを保有している。
1.トスカニーニ/フィルハーモニア管(1952年/モノ)
2.フルトヴェングラー/ベルリンフィル(1952年/モノ)
3.シューリヒト/ウィーンフィル(1953年/モノ)
4.ケンペ/ベルリンフィル(1955年/モノ)
5.カイルベルト/ベルリンフィル(1959年?)
6.モントゥー/ロンドン響(1962年)
7.ボールト/ロンドンフィル(1971年)
8.ヘルビッヒ/ベルリン響(1979年)
9.ザンデルリンク/ベルリン響(1990年)
好みで言えば3-6-5-2-7-1-4-9-8の順になるが、「3」「6」「5」以外はDAPにも入れておらず、一度聴いたきりでお蔵入りの有様である。
ブラームス『交響曲第2番ニ長調』-第1楽章
by シューリヒト指揮ウィーンフィル(1953年録音)-上記「3」
ベートーベン『第6』に対するブラームスの『田園』とも呼ばれる。ゆゑに多くの演奏は、春から夏にかけての季節感が横溢する。ところがこの盤だけは別格で、枯淡な水墨画みたいな孤高の演奏が、積雪の田園風景を想起させて寂寥感に誘われる。こんな渋い『第2』は、後にも先にも耳にしたことがない。当時のウィーンフィルは、未だフルトヴェングラーの時代であり、後にカラヤンがピカピカに磨き上げて地方色のないグローバル(世界標準)サウンドに改変してしまう前の話である。どことなく土の薫りが漂う音色を嗅ぎ分けてみるがよい。
これぞまさしくホンモノのブラームスと称讃したい。
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