大手レコード会社は、戦前にはコロムビア、ビクター、ポリドール、キング、テイチクの五社があった。それぞれが専属童謡歌手も抱えていた。戦前のキングレコードを代表する童謡歌手と言えば、河村順子(1925-2007)さんで異論あるまい。元を質せば童謡作曲家河村光陽を父とする三姉妹の長女である。
河村順子ディスコグラフィー(保有盤のみ)
・嬉しい雛祭り(1936年2月;サトウハチロー作詞/河村直則作曲)
・かもめの水兵さん(1937年4月;武内俊子作詞/河村光陽作曲)
・赤い帽子白い帽子(1937年11月;武内俊子作詞/河村光陽作曲)
・仲よし小道(1939年1月;三苫やすし作詞/河村光陽作曲)
・リンゴのヒトリゴト(1940年4月;武内俊子作詞/河村光陽作曲)
総て聴き憶えのあるヒット曲ばかり。とくに『かもめの水兵さん』は、戦前・戦中を通じて童謡部門ベストセラーレコードなのだとか。音質が“竹藪の火事”でアレですが、何てたってこれを聴かなきゃ始まらない。
かもめの水兵さん(歌;河村順子)
かもめの水兵さん 並んだ水兵さん
白い帽子 白いシャツ 白い服
波にチャップチャップ 浮かんでる
かもめの水兵さん 駆け足水兵さん
白い帽子 白いシャツ 白い服
波をチャップチャップ 越えていく
かもめの水兵さん ずぶ濡れ水兵さん
白い帽子 白いシャツ 白い服
波でチャップチャップ お洗濯
かもめの水兵さん 仲良し水兵さん
白い帽子 白いシャツ 白い服
波にチャップチャップ 揺れている
如何にも幼児向けの簡単明瞭な歌詞だが、メロディがわすれられない。
続いては秋田喜美子さん。音羽ゆりかご会(1933-)で歌唱指導を受けたことしか判らない謎の童謡歌手。レコードも『アノ子ハタアレ』(1941年2月)しか知らない。ネットで調べたところ、件の『親子で読んで楽しむ日本の童謡』の本に、この歌の来歴があるらしい。しかし、それが未だ見つからないのですよ。
アノ子ハタアレ(歌;秋田喜美子)
細川雄太郎作詞/海沼実作曲
アノ子ハ タアレ タレデセウネ
ナンナンナツメノ 花ノ下
オ人形サント アソンデル
カワイイ ミヨチアンヂア ナイデセウカ
アノ子ハ タアレ タレデセウネ
コンコン小ヤブノ ホソ道ヲ
竹馬ゴツコデ アソンデル
トナリノ ケンチヤンヂヤ ナイデセウカ
アノ子ハ タアレ タレデセウネ
トントン 峠ノ 坂道ヲ
一人デ テクテク アルイテル
オ寺ノ小僧サンヂヤ ナイデセウカ
アノ子ハ タアレ タレデセウネ
オマドニ ウカンダ クロイカゲ
オソトハ イツシカ 日ガクレテ
オソラニ オ月サンノ ワラヒガホ
作詞者によると、「ダアレ」と濁らず「タアレ」と清音に拘ったらしい。「誰」の古典的発音は、確かに「だれ」でなく「たれ」だった。ところが、実際に聴くと、守っているのは歌い出しだけで、後半は現代風に歌ってますね。どうでもいいけど、「ミヨちあん」と「ケンちやん」では、どう違うのだろう? 同じように聞こえるけど・・・。
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