先月ご紹介した『結婚できない男』(関西テレビ;2006年)の続編ともいうべき『ゴーイングマイホーム』(関西テレビ;2012年)が、日本映画専門チャンネルで再放送されている。これが【ホームドラマ】かどうかは異論もあろうが、いちおう三世代に渡る家族が登場するので、自分の物差しでは紛れもない【ホームドラマ】である。この種のドラマがめっきり減ったこともあり、今時の【ホームドラマ】(と言っても初放送は三年前)がどういうものかと興味を覚えて視始めた次第。
まだ、全11話中第4話までしか視てないが、自分が若い頃視ていた【ホームドラマ】のイメージからすると、良くも悪くも隔世の感を否めない。それもそのはず、このドラマの出演者で言えば、夏八木勲、西田敏行、吉行和子といった爺さん婆さんを演じる世代に、もはやおのれの年齢が達してしまったということ。十年一昔というけれど、手前勝手に比較対照としているのが、五昔も前のドラマとあっては、違って当たり前か。まぁ、世代的には、両親を【パパ・ママ】と呼ぶなんぞ激しい抵抗感がある。因みに、私奴が中学二年生(昭和36年)時分、【パパ・ママ】と呼んでいた生徒(女)は、約50人の同級生中たった一人だけでしたよ。今頃どうしているかなぁ。
もちろん、好みに合致したドラマというほどでもないが、かといって決して嫌いではない。何より自分から観たら孫世代にあたる坪井萌江(蒔田彩珠)の【世の中は、眼に見えるモノだけで出来てるわけじゃない】という台詞がいい。半世紀(50年)前と比べると、さすがに全体として当世流行りの即物的な作風になるのはやむを得まい。しかし、同じ即物的であっても、ここが今時の韓流ドラマと決定的に違うところ。テーマも、“眼に見えない生き物(「クーナ」とかいう小生物)”を探そうというのだから、後半のメルヘンチックな展開が期待される。若い(多分)とは言え、さすがは日本人スタッフが作ったドラマである。
物語の本筋ではないにせよ、建国神話とも結びつく。土地(このドラマでは信州<長野県>地方)の土着信仰に題材を得ているからだ。韓流ドラマには、『朱蒙』、『鉄の王キム・スロ』『善徳女王』『ソドンヨ』『幻の王女チャミョンゴ』といった古代に纏わる歴史劇は多いが、現代(劇)にそれらの故事来歴・伝説が登場することはまずない。逆に我国の場合、有史以前の古代が舞台のドラマは極めて稀である。その換わり、説話・伝説・伝統のかたちで現代(劇)にも脈打っているところが面白い。
これも国の成り立ちが違うからか。建国以来、万世一系の天皇を戴く我らであれば、古代の国号が「大和」であろうと「倭」であろうと、過去現在未来を通じて絶対的大多数の日本人は【我国】という認識で間違いあるまい。ところが、易姓革命を是とし、その繰り返しを歴史に持つ儒教国家の支那や朝鮮半島では、時代(王朝)が代われば、【別の国】といった認識なのかもしれない。つまり、現代韓国は戦後生まれた新しい【国家】であって、朝鮮半島古代三国(高句麗・百済・新羅)の支配階級とは民族的な血の繋がりはないし、歴史的にも断絶していると考えてよいのではないか。従い、現代韓国の人々が自慢げに遣う《우리나라(ウリナラ)》は、邦訳では《我国》の文字が充てられるが、日本語でいう【我国】とは用法が異なる。つまり、我田引水的な意味合いを含むのが【우리나라】に他ならない。
現代の世の中はアメリカニズムの毒素が世界中に蔓延し、何処の国もゲゼルシャフト(利益社会)化が加速しているが、我国はゲマインシャフト(共同社会)的な要素を色濃く残した類い稀な国家と言ってもよいのではなかろうか。アーノルド・トインビーだったか、世界有数の学者が、『世界の文明は、やがて日本型に収斂される』と説いている。是非そう願いたいものである。
*ゴーイングマイホーム*
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