タイの懐メロシリーズ、今回はNITITADレーベルのMP3二枚。別稿でも書いたように、ROSEレーベルが1980年代以前の熟年層向け“タイの懐メロ”だとすれば、こちらのほうは1980~90年代に流行った若者向けポップス系楽曲で、懐メロというより“タイのオールディーズ”といったほうがふさわしいかもしれない。
“懐メロファン”を自認してはいるが、どちらかと言えば、昔ながらの歌謡曲よりポップな曲が好みなので、NITITAD盤のほうが親近感がある。その代わり、曲名やバンド名に外来語が多くてややこしい。例えば、フォーエバー(Forever)の『パパ、ママ(Papa Mama)』。せめてアルファベットなら何とか理解できるのだが、意地悪くタイ文字されたらもうお手上げ。Foreverがฟอร์เอฟเวอร์、PapaMamaがปาป๊า มาม้าでは、タイ日辞典を捲っても載っていない。
その点、日本語は便利ですね。表意文字の漢字に加え、表音文字のカタカナ・ひらがながある。外来語は主にカタカナに置き換えるのが不文律(?)だから、とても分かり易い。タイ文字は元来が表音文字だから、一般に外来語の発音をタイ文字化するだけだが、漢字しか遣わない華字圏に行くともっと分かり難い。意訳と音訳があるからだ。意訳では、コンピュータを“電脳”と書くのがそれ。地名や人名は音訳がほとんど。しかし、同じ漢字を遣う日本人にとって分かり難いのがこの地名や人名の音訳。チェンマイが“清邁”で表わされるのはわかるとして、東京は“東京”のまま。ところが、会話では《Tokyo》でなく、《DongJing》と現地読みされる。文字を見ればわかるが、会話を聞いただけでは何処のことやら見当がつかなくなる。
縦書き且つ右書きだしの漢字圏のうち、この原則を守っているのは日本と繁体字の台湾・香港ぐらいのもの。本家本元の中国はもとより、簡体字のシンガポール、漢字を遣わなくなった韓国などは、伝統的な縦書き新聞はもはやなく、すべて横書き且つ左書きだしである。韓国の場合、日本の地名や人名はハングル化されず、漢字のままだし発音も日本語と同じ。だから安倍晋三と書いて《あべ・しんぞう》と読む。最近ではそれに倣ってか、日本の新聞も、朴槿恵大統領は《ぼく・きんけい》でなく、《パク・クネ》とルビが振ってある。自分は昔気質の人間だから、金日成(きん・にっせい)が《キム・イルソン》じゃピンと来ないけど。
話が逸れたが、実際に聴いてみよう。
12-5.รักฉันนั้นเพื่อเธอ(彼女に捧げる我が愛)
-พิงค์แพนเตอร์(Pink Panther)
聴き憶えのあるこのメロディは日本の歌謡曲だと思うが、俄に曲名が想い出せない。昭和30年代の日本において、アメリカンポップスを日本語カバーしたように、1980年代のタイでは、日本の歌謡曲も《外来曲》の一つとしてカバーされていたのですね。
12-16.ใจเธอใจฉัน(君の気持僕の気持)
-18 กะรัต(ก้อ & ไก่)(18カラット - コーとカイ)
昨年12月15日付記事で既出の曲。はっきり言って学芸会レベルの歌唱力にすぎない。女性歌手のカイさんは、これより18年後の映画《ぼくの恋人》ではノイナーの母親役を演じている。が、何だか子供みたいなこの映像からは、“母親”という役柄がどうしても結びつかない。
13-41.ปาป๊า มาม้า(パパ・ママ)
- ฟอร์เอฟเวอร์(Forever)
1988年のヒット曲。いわゆるコミックソングだが、小気味よいテンポが一度聴いたら耳に付いて離れなくなる不思議な魔力を持っている。中国文化圏の映像に見えるが、タイには華僑が多く、財界を牛耳っている。タクシン元首相やインラック現首相も、先祖を辿れば中国系のタイ人である。
【追記】 - 7月3日
12-5.รักฉันนั้นเพื่อเธอ - พิงค์แพนเตอร์(Pink Panther)
の原曲は、『夢追い酒』(渥美二郎;1978年)と判明。
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