台湾の抗日(?)映画『梅花』(1975年)については、五月十日付の台湾ではなく中華民國の愛国歌 《梅花》で書いた。この映画にもサントラ盤らしきものがあるんですね(左写真)。ただ、肝心の主題歌は、映画に関わった三人娘(甄妮・鳳飛飛・尤雅)のうち甄妮だけ。その代わり、おまけ(?)として作者(劉家昌)自身が歌ったものが入っている。
少し補足しておきましょう。
☆ 劉家昌の自作自演 『梅花』
☆ 甄妮 『梅花』
鳳飛飛版は別のアルバムにある。
☆ 鳳飛飛 『梅花』
尤雅版は何処を探しても見つからず。関係ないけど、どうして日本だけ“優雅(ゆうや)”と呼ばれているのか。調べるうちにわかったことは、映画『梅花』が世に出る直前、CBSソニーから優雅の芸名で日本デヴューしてるんですね。
☆ 優雅(尤雅) 『処女航海』(1974年)
話が逸れたが、この歌を自家薬籠中の物とするテレサ・テン(鄧麗君)版を逸するわけにはいかない。
☆ 鄧麗君 『梅花』(1980年)
う~む、こうして聴き比べてみると、この曲に限っては各自の持ち味が逆転してますね。翳りの濃い声質の鳳飛飛さんならば、地のまま歌うだけでいいのに、なにゆゑ柄にもない甘味をだそうとするのか理解に苦しむ。一方、声質まで変えられないと悟ったかのようなテレサさんの場合、曲に対する人一倍の思い入れがあるのだろう。“一曲入魂”の気合で歌って成功しているように思う。愛国歌とは、蛮声張り上げて高唱すればよいというものではない。“こゝろ”で歌うものである。
ところで、『華夏笙歌~愛国歌曲~』(左写真)という音楽帯を所有している。このカセットテープには、“中華民国”の愛国歌と称する曲が収められていて、このなかに『梅花』を行進曲風にアレンジしたものがある。実は、テレサ版『梅花』を聴いて映画のオリジナル盤が欲しくなり、つい“梅花(合唱)”の文字に釣られて衝動買いしたものである。曲自体の当ては外れたが、存外に佳曲が多い。それらは別の機会に譲ろう。
☆ 梅花進行曲
どうでもいいけど、ご紹介した花の台湾四人娘(厳密には甄妮だけ香港生まれ)は、面白いことに皆さん1953年(昭和28年)生まれなんですね。年長者順に鄧麗君、甄妮、鳳飛飛、尤雅という序列になる。このうち二人はすでにこの世になく、残る二人も“懐メロ歌手”に甘んじる現状は、“昭和は遠くなりにけり”であります。
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