《我等の神は堅き砦》BWV80
宗教改革記念日(10月31日)用カンタータ。宗教改革の旗手マルティン・ルター作コラール《我等の神は堅き砦》“Ein feste Burg ist unser Gott”から引用した曲。
1517年に宗教改革の狼煙を上げたルターは、ローマ教会の免罪符発行などに対し、人間はキリストをとおしてのみ神に近づき天国へ行けると考え、信者自ら神に祈り、神を賛美することを提唱した。このため、ラテン語でなく、日常の言葉であるドイツ語で歌える賛美歌を作る。即ち、「コラール」とはドイツのルター派教会に於ける民衆の祈りを歌にしたものといえる。日本語では通常「衆賛歌」とも訳される。
ということだそうです。
☆ 第一曲 合唱
我等の神は堅き砦
よきまもりなり
主は救い出し給う
悩みの淵より
さかしき仇(あだ)は
勝ち誇る
力と知恵もて
攻めあぐれば
まさるもの世になしと
対位法の技巧が、力と輝きに満ちて展開される。テノールによって高らかに歌いだされる戦闘的なテーマは、ルターの掲げた改革の御旗を表しているよう。いわゆる「コラール・モテット」という形式。コラールの各行が順次フーガ風に現れて進行するが、そのテキスト各行から受けるインスピレーションを音像として映し出し、聴く者を圧倒する。
☆ 第五曲 コラール
世に悪魔みちて
我等を脅すとも
いたき恐れなし
我等勝ちを得ん
世の力の
厳しきも
何かあらん
審(さば)きのぞみ
御言葉に撃(う)たれん
シュヴァイツァーによれば「神の砦に向かって攻め来るサタンの攻撃」の如き猛々しいジーグ風なリズムが奏される中を、合唱がルターのコラールを高らかに歌いあげる。あたかも、サタンとの激戦にあって、敢然と敵を迎えうつキリスト者の結束を象徴しているようである。
☆ 第八曲 終結コラール
Das Wort sie sollen lassen stahn
御言葉揺るがず
Und kein' Dank dazu haben.
如何なる御恵みぞ
Er ist bei uns wohl auf dem Plan
主は授け給う
Mit seinem Geist und Gaben.
御霊と喜び
Nehmen sie uns den Leib,
我が生命(いのち)
Gut, Ehr, Kind und Weib,
我が宝
Las fahren dahin,
取らるるとも
Sie habens kein' Gewinn;
我にはなお
Das Reich muss uns doch bleiben.
御国ぞ残らん
天の御国を確信して苦難に立ち向かう決意を述べ、バッハの宗教的根源であるルターとの精神的つながりを体現しつつ閉じられる。
はっきり言ってルター派信徒の「軍歌」でしょう。突撃喇叭(トランペット)勇ましく、鐘や太鼓の大騒ぎ。他のカンタータとは一線を画して、騒々しいこと夥しい。でも、陰鬱な曲よりは遙かに爽快で好ましい。
CDは、昭和五四年録音のリヒター盤のみ。結構気に入ってます。
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