《目覚めよ、と我等に呼ばわる物見らの声》BWV140
三位一体節後第二七日曜日用カンタータ。書簡章句は「テサロニケ人への第一の手紙」、福音書章句は「マタイ伝」が出典。
【 解 説 】
三位一体節後第27日曜日は、復活節のごく早い年にしか出現しない。この日のためのカンタータは、BWV140のみである。初演はおそらく、1731年11月25日。
福音書章句は、花婿の到着を待つ乙女の喩えを用いて、神の国の到来への備えを説く。カンタータはこれを踏まえ、真夜中に望楼から呼ばわる物見らの声を先導としてキリストが到着し、魂との喜ばしい婚姻へと至る情景を、円熟した筆致で描いてゆく。
構成は、P・ニコライ作「キリスト再臨のコラール」を第一、四、七曲に用いた。物見の呼び声が夜のしじまを破って響く冒頭の合唱曲、シオンの娘の喜びを歌う中央のテノール楽曲(第四曲)は特に名高く、後者はオルガン用《シュープラ-・コラール集第一曲》にも編曲されている。魂とイエスの交わす霊化された愛の二重唱も、憧れと幸福をこもごもに表現して素晴らしい。
解説にある第一・四・七曲が聴きどころです。
☆ 第一曲 コラール合唱(四声部;ホルン、オーボエ、弦楽、通奏低音;変ホ長調)
目覚めよ、と我等に呼ばわる物見らの声、
いと高き望楼より響けり、
目覚めよ、エルサレムの町よ!
時刻は、いましも真夜中にかかる。
その呼ばわる声、さやかに告げていう、
汝等賢き乙女は、何処なるか?
いざ目覚めよ、花婿は来ます、
起き出でて燭火を取れ!
アレルヤ!
身支度を調えよ、
婚礼の筵(むしろ)に出ずべく。
行きて花婿の君を出迎え奉れよ!
☆ 第四曲 コラール(テノール;弦楽、通奏低音;変ホ長調)
シオンは物見らの歌うを聞けり。
その心は喜びに躍り、
かくて目覚めて速(すみや)けく出で立ちぬ。
その愛する者は天より晴れやかに来たる、
恩恵(めぐみ)にて強く、真理(まこと)にて猛き勇士として。
シオンの光は輝き、その星は昇れり。
いざ来ませ、尊き冠なる君、
主イエス、神の子よ!
ホサナ!
我等はこぞりて
喜びみてる宴の広間に従い行き、
晴れの晩餐を共に祝わん。
☆ 第七曲 終結コラール(四声部;器楽全編成;変ホ長調)
Gloria sei dir gesungen
グローリアの頌め歌、汝に上がれ、
Mit Menschen- und englischen Zungen,
人と御使の舌をもて、
Mit Harfen und mit Zimbeln schon.
琴と鉦(かね)の音もうるわしく。
Von zwölf Perlen sind die Pforten,
汝の都の門は十二の真珠に輝く。
An deiner Stadt sind wir Konsorten
我等は御使の群に入りて、
Der Engel hoch um deinen Thron.
高き御座をめぐりて仕えん。
Kein Aug hat je gespürt,
目いまだこれを見ず、
Kein Ohr hat je gehört
耳いまだこれを聞かざりし
Solche Freude.
妙なる喜び、
Des sind wir froh,
されば我等は歓び呼ばわる、
Io, io!
イオー、イオー!
Ewig in dulci jubilo.
とことわに甘き喜びの中に。
好きな曲なので四種を所蔵しますが、どれをとっても一長一短あり、満足いかない。ラミンが遺さなかったのが悔やまれます。
1.ヘルマン・シェルヘン指揮ウィーン国立歌劇場管(昭和二七年)
2.クルト・トーマス指揮ライプツィヒゲヴァントハウス管(昭和三六年)
3.カール・リヒター指揮ミュンヘンバッハ管(昭和五二年)
4.エリオット・ガーディナー指揮イングリッシュバロックソロイスツ(平成二年)
トーマス盤が、聖トーマス教会の本場物だけあって、いちおう無難な演奏でしょうが、前任のラミン当時とは十年も経っていないのに、演奏陣の弛みぶりがひどい。指導者によってこうも変わるものか。それとも東独に何か御家の事情(?)でもあったのでしょうか。
ありがとうございました。
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