■ 第二十六課 勞 働
人ハ己ノ力ニテ生活スル覺悟ナカルベカラズ。勞働ヲ賤シキモノト思ヒ、何事モ爲サデ暮スヲ善キコトノヤウニ考フルハ、大イナル誤ナリ。「額ニ汗シテ食へ。」トハ、人ノ片時モ忘ルベカラザル格言ナリ。
タトヒ幸ニシテ富家ニ生レタリトモ、決シテ空シク日ヲ送ルベカラズ。職業ヲ努メテ、益々其ノ財産ヲ殖ヤシ、之ヲ公益慈善ニ用フベシ。又、若シ不幸ニシテ貧家ニ生レタランニハ、大イニ其ノ職業ヲ勵ミテ財産ヲ作り、身ヲ立テ、世ヲ益スルヤウ心掛ケザルベカラズ。
職業ノ爲メニ心身ヲ勞スルハ、タゞ苦シキノミニハ非ズシテ、マタ大イニ樂シキモノナリ。即チ農夫ガ田畑ヲ耕作スル時、工匠ガ器物ヲ製作スル時、商人ガ物品ヲ賣買スル時等ニハ、其ノ間自ラ樂シミアルモノナリ。終日働キテ、其ノ職務ヲ盡シタル後ニ、一種ノ愉快ヲ感ズルハ、何人モ經驗スルトコロナルベシ。
加之(しかのみならず)、勞働ハ人ノ健康ヲ保ツニ必要ナルモノナリ。安逸ニ耽ル者ハ多ク病身ニシテ命短ク、勞働スル者ハ健康ニシテ命長シ。
勞働ハ神聖ナリ。人ハ五體ノミニテ生レ來レルモノト心得、心身ヲ勞シテ、自活センコトヲ計ルベシ。農夫トシテ働ケ。職工トシテ働ケ。或ハ商人トシテ働ケ。其ノ他何ナリトモ、己ニ適スル職業ニ就キテ働ケ。其ノ職業ノ何タルカハ、敢テ問フヲ要セザルナリ。
・ 練 習
一、「額ニ汗シテ食へ。」トハ、ドウイフコトデスカ。
二、勞働ノ樂シイコトヲオ話シナサイ。
三、勞働ノ健康ニ必要ナコトヲオ話シナサイ。
労働を苦役と考える西洋流価値観とは対極にある日本型経済観念を示す好例でしょう。富は独り占めしてはならず、公(おほやけ)に還元してこそ金銭の役割が全うされる、とは我が社祖の教えですが、この教科書に添っています。また、「額ニ汗シテ食へ。」と似た言葉も遺しています。
日下公人氏によると、日本独自の経済学は、二宮尊徳にその基礎があるということです。報徳思想については近年になって知ったことですし、体系立って経済学を学んだこともありませんが、よくよく顧みると、自分の金銭観や労働観は、尊徳や社祖の教えに遵ってきたように思えて不思議です。今流行りのグローバルスタンダード(実は米国主導)には大いなる違和感を抱きます。
みなさんはいかがでしょうか ?
ありがとうございました。
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