仏大統領の「台湾関係ない」発言、中国つけ上がらせる恐れ 欧米で物議
4/12(水) 16:44配信/時事通信電子版
【AFP=時事】 フランスのエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領が台湾への対応をめぐり、欧州は米中いずれにも追随すべきではないと発言し、物議を醸している。専門家は西側に新たな混乱をもたらし、中国を勢いづかせる恐れがあるとみている。
今月7日、3日間の訪中を終えて帰国したマクロン氏は、仏経済紙レゼコー(Les Echos)やニュースサイト「ポリティコ(Politico)」などに対し、台湾問題について「最悪なのは、欧州が米国の動きや中国の過剰反応に追随し、同調しなければならないと考えることだ」「(欧州は)自分たちとは関係のない世界の混乱や危機に巻き込まれるべきではない」との持論を展開した。
この発言は、自立を貫こうとするフランスの長年の外交政策の一環とも、米中間の対立に欧州が巻き込まれることへの不安の表れとも解釈できる。だが、米国がウクライナ支援を通じて欧州の安全保障を維持するために数十億ドルを投じ、西側の結束が特に重要とされる時期だけに、欧米の多くの専門家や政治家から批判が相次いでいる。
仏パリのシンクタンク「戦略研究財団(Foundation for Strategic Research)」で中国研究を専門とするアントワーヌ・ボンダズ(Antoine Bondaz)氏はAFPに、台湾をめぐる緊張の責任は中国ではなく、米国にあると言わんばかりの発言だったと指摘した。
「台湾支配をもくろむ『修正主義大国』(中国を指す)が現状を変更しようとしているにもかかわらず、不安定化の責任は米国にあると言うのか。責任の所在があべこべだ」と批判した。
さらに、最も大きな影響は、仮に中国が台湾に侵攻して制圧するような事態になってもフランス、そしておそらく欧州は介入しないだろうと中国に思わせてしまうことにあるとし、「(中国への)抑止力を弱めることになる」と分析。「ウクライナから学ぶべき教訓があるとすれば、(ロシアのウラジーミル・)プーチン(Vladimir Putin)大統領を抑止できなかったことだ」と述べた。
■「戦略的ナンセンス」
米ホワイトハウス(White House)は10日、フランスとは「素晴らしい二国間関係」を築いていると表明し、事態の沈静化を図ろうとした。
だが、共和党のマルコ・ルビオ(Marco Rubio)上院議員はネットに投稿した動画で、「マクロン氏が全欧州を代表し、台湾をめぐって欧州は米中いずれの側にも付くつもりはないと言うのなら、わが国も(ロシア、ウクライナ)いずれかの側に付くのをやめて(欧州に)ウクライナ問題を任せるべきかもしれない」と訴えた。
同じく共和党の有力者、リンゼー・グラム(Lindsey Graham)上院議員はマクロン氏の訪中について、「中国共産党と習近平(Xi Jinping)国家主席をつけ上がらせるものだ。その習氏は、世界秩序の書き換えと台湾の武力併合に執心しているようだ」とツイッター(Twitter)に投稿した。
シカゴ国際問題評議会(Chicago Council on Global Affairs)代表で、バラク・オバマ(Barack Obama)元大統領の顧問を務めたアイボ・ダールダー(Ivo Daalder)氏も、「ウクライナ紛争のような欧州の危機に対処するためにマクロン氏が米国の安全保障義務に頼ることに問題は全くない」と指摘。その一方で、欧州は無関係の危機に巻き込まれるべきではないと言い張るのは「『戦略的自立』ではない。『戦略的ナンセンス』だ」とツイートした。
ドイツの保守系議員で外交政策に詳しいノルベルト・レトゲン(Norbert Roettgen)氏は日刊紙ビルト(Bild)に、「マクロン氏は完全に正気を失っているようだ」と語った。
■過去にも失言
仏大統領府(エリゼ宮、Elysee Palace)は11日、火消しに追われた。
側近の一人は「マクロン大統領はフランスの立ち位置について、米国との距離と中国との距離は同じではないとたびたび発言している。米国は同盟国であり、価値観を共有している」と述べた。
ただ、専門家に言わせれば、マクロン氏は過去にも失言している。2019年には、北大西洋条約機構(NATO)は「脳死」状態だと発言。昨年にはウクライナ侵攻の外交的な解決に向け、「ロシアに屈辱を与えてはならない」と語り、同盟諸国の反発を招いた。
仏紙ルモンド(Le Monde)は11日、「誤解は一度なら釈明できる」「しかし、繰り返されるなら外交政策の進め方に問題がある」と批判した。
【翻訳編集】 AFPBB News
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一、フランスは中国との関係が強いので、台湾問題に関わり合いになりたくないのだろうけれど、その考え方を表に出すのは政治家として、また常任理事国の大統領としてどうかと思います。
実際に中国は台湾を核心的利益と位置付けており、統一する為に行動に出るのは確実ですが、その方法に関しては国際的な影響を考慮して、ロシアの様に厳しい制裁を受ける様なら出来るだけ穏健的な方法を模索する筈です。
しかし、マクロン大統領が台湾問題は関係ないと発言した事で、仮に台湾に対して武力攻撃を仕掛けても西側は一枚板になり得ず、奪い取ってしまえばどうにかなると考えて強硬な姿勢を採るかも知れません。
正直、マクロン大統領は口に出してはいけない事を軽率に発言した為、台湾有事が起こるハードルを下げてしまった状態で、他の欧米の国から批判されても仕方のない事だと思います。
二、ウクライナ侵攻の前後に、マクロンは自分がロシアを変えることができると勘違いし、プーチンに何度も面会、電話をしたが、何の役にも立たなかった。
(当時は「マクロンがプーチンの介護役」と欧米のメディアに揶揄されてた」)
特に、ウクライナ侵攻の直前(2022年2月8日)に、マクロンは「プーチンはこれ以上悪化させることはないと保証してくれた。そして東欧で新たな軍事行動を取らない、近くベラルーシで行う合同軍事演習後に部隊を撤退させる」とロシアの立場を公然と代弁した。
結果は周知のとおり。数多くのウクライナ一般人がプーチンに殺された。
マクロンは所詮、国際政治の舞台で踊るピエロ。
三、マクロンはお得意のスタンドプレーで存在感をアピールしたかったようですが悪手でしたね!西側諸国、特に欧州で非難が続き、火消しに追われるのでしょうね。極めつけはG7サミットで袋たたきに合うのでは?
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マクロン氏、米国の同盟国は「属国ではない」
4/13(木) 9:41配信/時事通信電子版
【AFP=時事】 フランスのエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領は12日、米国の同盟国は「属国」ではないと述べ、台湾対応をめぐって物議を醸した自らの発言を正当化した。
オランダを訪問したマクロン氏はマルク・ルッテ(Mark Rutte)首相との共同会見で、「同盟国は属国ではない。われわれには自国のことを考える権利がないということではない」と語った。
また、「(フランスと欧州の台湾政策に)変更はない」と説明。「フランスは台湾の現状を支持する」と述べるとともに、台湾情勢の「平和的解決」を目指すとも語った。
7日に訪中を終えて帰国したマクロン氏は一部メディアに対し、台湾への対応をめぐり、欧州は米中いずれにも追随すべきではないと発言。専門家からは、西側諸国に新たな混乱をもたらし、中国を勢いづかせる恐れがあるとして懸念の声が上がっている。
【翻訳編集】 AFPBB News
コメント総数;175件
イ、「台湾がどうなろうとフランスには関係ない。」という発言をしておいて、今更「フランスは台湾の現状を支持する」というのはあまりにも手のひら返しではないでし表現を和らげたのでしょうが、本心は変わらないということでしょう。
誰も米国の属国になれとは言っていないし、それを言うならフランスは中国の属国になりたいのでしょうか。マクロン大統領は中国の経済力などの利益を頼りにしていて正義感を忘れているとしか思えません。
ロ、「フランスはアメリカの属国ではない」という極論的かつ感情的な言葉を用いまずは自己の正当性を演出する。強調する部分のそれは本質に対して整合性をあまり伴わない。論点は「欧州及び米英の足並みを乱すことによる中国の助長のリスク。それに対して不必要なレベルに至る発言」だろう。
疑問視されてしかるべきリーダーといえる。
ハ、同盟国を裏切る気、満々に見える。
確かに「属国ではない」ことは事実。しかし、同盟を「双務的」と捉えるか、「片務的」と捉えるかで、普通の国は「双務的」と考えている。
つまり「自国がピンチになったら助けて貰う代わりに、米国がピンチになったら支援・援助する」が一般的な考えで、日本では第二次安倍政権において、有事法制として制定し、相互に助け合う形に変えた。
日本ですら「双務的」に拘っているのに、NATOのフランスが「片務的」と主張するなら、フランスがピンチに陥っても、誰も助けなくなると思います。その覚悟があって、主張するなら構わないけれども、その覚悟無く主張するなら、ちょっと人格的に問題があると思います。
もし、米国の大統領がトランプさんだったら、フランスをNATOから摘まみ出しても不思議では無いほど酷いもの言いだと思っています。
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極端な米国ベッタリ政策を続ける我国政府に、左右両派から批判の声が上がっているが、米中対立下の今日、米国と距離を置くことが誰を利する結果となるかを考えた場合、容易に火元(発信源)が特定できる。要するに、中国共産党の謀略工作なのだ。
3月から今月にかけての一連の動きを観れば直ぐに分かることだが、米日蘭による半導体輸出規制が話し合われ、オランダは米追随を発表。未定だった日本に取り入ろうと中共は、媚中派林外相を北京に招いた。しかし、林外相訪中直前に日本も米国追随を発表したため徒労に終わった。次に訪中したマクロン仏大統領が標的にされたということだろう。
マクロン氏訪中時には、ウルズラ・フォン・デア・ライエンEU委員長(女性・ドイツ)も同行していた。ところが聞くところによると、中共がマクロン氏を接待漬けにしたのに比べ、ライエン氏は酷く冷淡にあしらわれたらしい。ライエン氏は怒り心頭、マクロン氏とは正反対な台湾支持の発言を続けている。
何のことはない。マクロン氏は中共のシャブ(接待)漬けに遭い、籠絡せられたのだ。煽てられ舞い上がって大物政治家にでもなったつもりで、うっかり中共へのリップサービスが、とんだ波紋を呼ぶ結果となったというのがコトの真相ではなかろうか。林外相にしろマクロン大統領にしろ、その場の空気が読めず、簡単に相手の口車に乗せられるところなぞ、〝お人好し″という意味で所謂「好い人」なのだろう。
唐突ながらテンニースの社会学説としてのゲマインシャフト(共同体)とゲゼルシャフト(利益体)との間に明確な境界線などない。したがって、様々な形で混在しているわけで、どちらを優先させるかの問題である。ただし、注意すべきは中露北などの専制独裁国家の場合、支配者の意に沿う形しか選択の余地がなく、心ならずもゲゼルシャフト的生活を強いられているだけなのだ。
【ゲマインシャフト(共同体)】≒私(わたくし)より公(おほやけ)の重視≒利他主義
生得的、有機体的な本質意志によって結びついた自然的、有機的統一体としての社会。血縁に基づく家族、地縁に基づく村落などを含む。現在では共(協)同社会、コミュニティーと同義。
〈本質意志〉→ドイツの社会学者 F.J.テンニースの用語。彼は人間の精神的意志活動の特質を,情意と思惟の2要素のからみ合いと認識し,本質意志と選択意志の2類型に分けた。本質意志にあっては,情意は人間を一つの全体の部分として結合させる特殊な社会的衝動であり,その結合力は「有機的な愛の力」であると考えられている。こうした本質意志の結合は,総人格的な親和関係や,共同体的な癒着関係,すなわちゲマインシャフトを生んでいく。本質意志の結合形式として彼は血,地,精神の3種をあげ,それぞれの結合契機に基づくゲマインシャフトの例を示している。
【ゲゼルシャフト(利益体)】≒公(おほやけ)より私(わたくし)の重視≒利己主義
共通の目的のために成員の自由意思に基づいて形成された社会。会社、組合など。都市、国家なども含む。利益社会。
自由民主国家の場合、多様な選択が許容される分、国民的意思統一の面ではむしろ弱点になる。独裁国家群はそこを衝いてくるというわけ。終戦の詔勅(所謂「玉音放送」)にある『道󠄁義ヲ篤クシ志操ヲ鞏クシ誓テ國體ノ精華ヲ發揚シ世界ノ進󠄁運󠄁ニ後レサラムコトヲ期スヘシ』とは、真に〝私利私欲の甘言を振り切って世のため人のために尽くせ″との仰せなのだろう。
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