バッハ『カンタータ第67番』
《死人の中より甦りしイエス・キリストを覚えよ》
-復活節後第一日曜日(クヴァジモドゲニティ)用-
何だかおどろおどろしい曲名である。いつもの如く礒山雅氏の解説文(リヒター1974年録音盤のライナーノーツ)を引用しよう。
1724年の聖金曜日に《ヨハネ受難曲》を初演したバッハは、続く復活節の責めを旧作にによってふさいだ後、翌週から、新たな創作を始める。その最初の作品が、4月16日に聖トーマス教会で初演された、このカンタータである。《ヨハネ受難曲》で活躍したフルートがここで初めてカンタータに採用され、珍しいスライドホルンも姿を見せる(ディスクではトランペットで代用)。
「復活したキリストを覚えよ」の宣言が壮大な合唱によって展開された後、カンタータは、復活を知りながらな疑いと恐れにさいなまれる、弱いキリスト者の姿を描いてゆく。しかし主は戦い、勝利を得た。戦いの描写の中にイエス自身が姿を現し、「平安汝らにあれ」と祝福するバスのアリア(第6曲)は、抜きんでた効果を持っている。
この曲を目当てに買ったわけではないが、以下四種のCDを保有している。
ラミン盤(1954年聖トーマス教会でのモノラル録音)
指揮;ギュンター・ラミン(トーマスカントール)
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
ライプチヒ・聖トーマス教会聖歌隊
ゲルトルート・ワグナー(アルト)
ゲルト・ルッツェ(テノール)
ヨハンネス・エッテル(バス)
リヒター旧盤(1958年録音)
指揮;カール・リヒター
ミュンヘン国立歌劇場管弦楽団
ミュンヘンバッハ合唱団
リリアン・ベンニングセン(アルト)
ピーター・ピアーズ(テノール)
キート・エンゲン(バス)
ヴェルナー盤(1960年録音)
指揮;フリッツ・ヴェルナー
ハイルブロン・プフォルツハイム室内管弦楽団
ハインリヒ・シュッツ合唱団
マルガ・ヘフゲン(アルト)
ヘルムート・クレブス(テノール)
フランツ・ケルヒ(バス)
リヒター新盤(1974年録音)
指揮;カール・リヒター
ミュンヘンバッハ管弦楽団&合唱団
アンナ・レイノルズ(アルト)
ペーター・シュライアー(テノール)
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バス)
こうして録音年代順に聴いてみると、あくまで個人的感想ながら、古いものほど感銘を受ける。再現芸術である宗教楽演奏の信教的昇華度は、経年劣化しつつある気がする。極論するなら宗教音楽でさえ、今日では或る意味で娯楽に成り下がった、ということか。困りましたねぇ。
コメント