バッハ『カンタータ第65番』
《みなサバより来るらん》
-顕現節(1月6日)用-
信徒でない当方には、「顕現節」がどういう意味ある日なのかは皆目わからないし、知りたいとも思わない。勢い、信教としてではなく、純音楽的な聴き方にならざるを得ない。葛飾北斎『富嶽三十六景』は、19世紀にジャポニズムの潮流を興してフランス印象派画家に大きな影響を与えたことは有名である。しかし、それは美術的観点での影響にとどまり、神道的信仰の対象としての「富士山(フジヤマ)」ではなかった。つまり、このジャポニズムの裏返しとしてのユーロニズム的鑑賞法なのかもしれない。
リヒター盤(1967年録音)
指揮:カール・リヒター
ミュンヘン・バッハ管弦楽団&合唱団
エルンスト・ヘフリガー(テノール)
テオ・アダム(バス)
日常の愛聴盤。リヒターは、聖トーマス教会聖歌隊出身で、同教会のオルガニストでもあったが、後に西側(ミュンヘン)に転じて成功した指揮者兼オルガニスト。デビューから暫くは、きびきびしたテンポの痛快な演奏を特徴としたが、'70代頃からロマン的傾向が強くなり、往年の精気を失ったのは残念である。この録音は、初期の良さが残っていた時期のもの。合唱団はアマチュアとのことだが、よく訓練されて素晴らしい。特にこうした宗教曲は、妙にプロずれした歌唱では聴けたものではない。ヘフリガーの決然とした真摯な歌唱が光る。純音楽的には、大好きなホルンがこだまし、縦笛、イングリッシュホルンを加えた牧歌的雰囲気が堪らない。
因みに、ミュンヘンを含む南独・墺太利などは、どちらかと言えばカトリック圏に属する。その影響かどうかはわからねど、基本的にオーケストラの音色が明るい。これに比し、旧東独圏の北部・中部ドイツは仄暗い響きが特徴である。尤も、宗教的影響というより、気候的な差異がそうさせているかもしれない。想い出したけど、東独の楽団(ベルリン交響楽団)は、未だ木製フルートを使っていたな。古楽器に近い編成だから渋い音色になるのかもしれない。同じベルリンでもベルリンフィル(西)とベルリン響(東/現コンツェルトハウス管)を聴き比べるとよく解る。
ラミン盤(1952年録音)
指揮;ギュンター・ラミン
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
ライプツィヒ・聖トーマス教会聖歌隊
ゲルト・ルッツェ(テノール)
ヨハンネス・エッテル(バス)
リヒター盤に比べるとゆったりとしたテンポで、牧歌的雰囲気がより強調される。合唱部が成人男女混声でなく少年(少女は入隊不可)のみなので、穢れなき純真さが感じられて好ましい。ベルリンフィルがカラヤンによって悪い意味でピカピカに磨き上げられたように、ゲヴァントハウス管もクルト・マズアによってグローバルサウンドに塗り替えられ、昔日の渋い響きを失くしてしまった。これは、旧き佳き時代の演奏である。
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