前稿で『黄河』と『梁祝』の二大協奏曲を採り上げた。されど確かにチャイナメロディは出て来るものの、全てが西洋楽器では異国情緒に乏しい。そのせいでもあるまいが、『梁祝』の場合、独奏部分を二胡や琵琶などの民族楽器に置き換える試みが作曲者自身によって行われたりもしている。そのCDもある。前稿「保有CD」のうち、下記がそれに該当する。
4.『梁祝』-1984年録音-(香港唱片盤=中国唱片原盤=CD制作;日本コロムビア)
何樹英(琵琶):夏飛雲指揮/上海民族楽団
尤も、バッハやモーツァルト、ベートーヴェンなどの西洋古典派の作品から、「異国情緒」を求めるバカ者はおるまい。そんな鑑賞法は、西洋人ではない好事家の”ないものねだり”に過ぎなかろう。なお、『黄河』に至っては、洗星海原作を第三者集団が勝手に盗作したと言えなくもない。まぁ、著作権など問題にしなかった時代、バッハだってヴィヴァルディの曲を改編したりしてますけどね。
話が逸れた。もともと民族伝統楽器を独奏に据えた協奏曲風作品もある。一つでも民族楽器が入ると異国情緒が弥増す。
☆作曲/張曉峰、劉永共作;叙事曲『琵琶行』(1983年録音;中国唱片原盤)
by 徐紅(琵琶)、張振山指揮/上海交響楽団(香港唱片盤;CD制作日本コロムビア)
曲名から推測出来るとおり、唐代の詩人白居易(白楽天)の長編詩『琵琶行』を曲想とする作品である。但し、メロディから察するに直接でなく、粤劇(広東省香港地域オペラ)『琵琶行』がオリジナルな気がする。
粤劇『琵琶行』
by 演員;彭熾權 林佩珍
粤劇だからもちろん広東語である。このオペラを基にした流行歌まであるらしい。
粤劇と同様に、民族楽器主体となるともはや西洋近代音楽を離れ、古色蒼然たる渋い支那土着古曲といった超ローカルな風情になる。
叙事曲『琵琶行』
by 琵琶/黃勝宏、指揮/陳如祁、台北青年國樂團
音楽と関係ないけど、チャルメラの音を聴くと、何故か激しくラーメンが喰いたくなる。これも明星食品の即席麺『チャルメラ』CMのせいだろうか。
註)台湾では、昔から民族楽器曲を”國樂”と呼んでいる。
民族楽器といっても、琵琶なら我国にも伝来しており、珍しくもない。琵琶の音で真っ先に連想するのは小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が著した『耳なし芳一』物語である。そんなわけで次稿では、我国には輸入(?)されなかった胡弓奏者を客演に迎えた中国クラシック音楽を採り上げてみたい。
【追伸】
気付かなかったけど、琵琶は西洋楽器のLUTE(リュート)に該当するんですね。これなら、バッハにも『リュート組曲』なんかあるぞ。琵琶とは奏法こそ異なるが、起源は多分同じだと思う。
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