昭和初期の平井英子が童謡レコードの祖ではない。ラッパ(機械)吹込の大正時代から同種のレコードはあった。納所三姉妹や本居三姉妹がそれである。前者は納所弁次郎(1865-1936)、後者は本居長世(1885-1945)という作曲家の娘である点で共通する。要するに、父親の作品を歌うために駆り出されたというわけ。
納所弁次郎の童謡・唱歌代表作
兎と亀(石原和三郎作詞)
おつきさま(石原和三郎作詞)
桃太郎(田辺友三郎作詞)
さるかに(石原和三郎作詞)
牛若丸(大和田建樹作歌)
納所三姉妹
長女;文子(1896-1964)
次女;米子
三女;みち子
本居長世の童謡代表作
お山の大将(西條八十作詞)
七つの子(野口雨情作詞)
青い眼の人形(野口雨情作詞)
赤い靴(野口雨情作詞)
十五夜お月さん(野口雨情作詞)
めえめえ児山羊(藤森秀男作詞)
汽車ぽっぽ(富原薫作詞)
本居三姉妹
長女;みどり(1912-1942)
次女;貴美子(1914-1972)
三女;若葉(1919-2011)
それぞれ一つずつ聴いてみよう。何せ電気録音以前のラッパ吹込ですからね、音が貧しいこと夥しい。
納所文子-桃太郎~菊の花~犬
童謡は概して短いので、文部省唱歌『菊の花』と『犬』もおまけに収まっている。ピアノ伴奏はもちろん納所弁次郎。『菊の花』は聴き憶えがないけど、『犬』は戦後も教科書に載ってたと記憶する。何時頃の録音か知らねど、子供にしては随分と大人びた声質ですね。
本居みどり-青い眼の人形~お月さん
戦後の舌足らず童謡歌手連とは対照的に、成人顔負けのオペラチックな歌唱法ですね。如何にも童謡然とした少女っぽい曲より、同じ父親作でも『お山の大将』のような、堂々とした男児向け曲のほうがお似合いだなぁ。←同曲のCDを所有していて確証済である。
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