本来は童謡でなく、流行歌として世に出た『めんこい仔馬』(1940年)が、子供の頃から大好きである。
めんこい小馬-陸軍省情報部撰定
サトウ・ハチロー作詞/仁木他喜雄作曲
一、ぬれた小馬の たて髪を
撫でりや両手に 朝の露
呼べば答へて めんこいぞ オーラ
駆けて行こかよ 丘の道
ハイド ハイドウ 丘の道
二、藁の上から 育ててよ
いまぢや毛並みも 光つてる
お腹こわすな 風邪ひくな オーラ
げんきに高く ないてみろ
ハイド ハイドウ ないてみろ
三、紅い着物(べべ)より 大好きな
小馬のお話 してやろか
遠い敵地で お仲間が オーラ
手柄たてた お話を
ハイド ハイドウ お話を
四、西のお空は 夕やけだ
小馬かへろか おうちには
お前の母さん 待つてゐる オーラ
唄つてやろかよ 山の唄
ハイド ハイドウ 山の唄
五、明日は市場か お別れか
泣いちやいけない 泣かないぞ
軍馬になつて 行く日には オーラ
みんなで バンザイ してやるぞ
ハイド ハイドウ してやるぞ
めんこい仔馬
歌;二葉あき子、高橋祐子、日蓄児童合唱団
映像のレーベル面にもあるとおり、もともと東宝映画『馬』(1941年3月公開)の主題歌として作られたにも係わらず、実際には使われなかったらしい。そうとも知らずレコード盤は、先行して1940年12月に発売されている。そのこととは無関係に、NHKが“国民歌謡”として採り上げ、松原操(ミス・コロムビア)の歌唱で1941年1月にラヂオ放送されている。
映画は未見なれど、時節柄、戦時色が強いことは否めまい。したがって、該当歌詞(三番、五番)を改変乃至削除して戦後も歌い継がれている。
それはともかく、この歌詞のキモは二番に収斂される。即ち、我国の家族主義的社会を否応なく想起させてくれる。祖父母・親兄弟・子孫等の血縁者はもちろん、使用人・飼犬猫・家禽畜に至るまで「家族」同然に遇する文化をいうのである。とりわけ、二番を児童合唱団が歌っているのが効いている。動物(この場合“小馬”)を世話することで、親が子を思う心情を理解しつつ自分が大人になったとき、我が子にも同じように受け継がせる、そういう日常生活全般が世渡りの道場(訓練場)になっていた、ということ。
*ご参考*
戦後歌詞改変版(昭和20年代の録音?)
歌;伴久美子(1942-1986)、コロムビア杉の子子ども会
う~む、取り立てて違和感はないが、生活感が抜け落ちてしまった。無理もない、戦後となれば、馬を飼う家のほうが絶滅危惧されるほどなのだから。
どうでもいいけど、「仔馬」「子馬」「小馬」???
いったいどれが本当なのか。
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