前々稿でTBS系同枠先行二作『水戸黄門』(昭和44年)、『大岡越前』(昭和45年)との比較に於いて、『江戸を斬る』(昭和48年)を酷評した。しかし、まだ「第四部」(昭和54年)だけしか視ない段階だった。元来、主演の西郷輝彦が好きでないため、偏見を以て視たのも事実。冷静に評価すれば、同じ昭和50年代作なら先行組とて劣化著しく、観賞に適う代物ではない。
目下、CS-TBSチャンネル2(有料)にて「第一部《梓右近隠密帳》」(昭和48年)が再放送されている。こちらは竹脇無我主演、『大岡越前』シリーズの蘭方医榊原伊織役ですっかりお馴染み。余事ながら昭和40年代は、加藤剛と並んで人気絶頂期にあり、ほぼ毎日ブラウン管で見掛けた。なお、直前の『大岡越前 第三部』とは親和性があって、主演の竹脇無我だけでなく、常連の片岡千恵蔵、大坂志郎、松山英太郎、高橋元太郎、志村喬らも番組横断的に挙って出演している。そんな贔屓目もあって「第一部」だけは別格。但し、先行二作に匹敵し得る出来栄えという意味ではない。歴史上実在したとされる人物及び講談・浪曲(浪花節)・児童本等を通じて子供の頃から知っている伝説上の人物が多数登場するからだ。
・徳川家光(長谷川哲夫)・・・第三代江戸幕府将軍(在職1623-1651)。
第1,2,6,10,16,18~20,25,26回
・徳川頼宣(江原真二郎)・・徳川家康の子、水戸藩主→駿府藩主→紀州藩主。
第10,25,26回
・柳生但馬守(志村喬)・・・将軍家剣術指南役・幕府大目付。
第1,9,10,14,15,22,24,25回
・柳生十兵衛(若林豪)・・・但馬守の長男、隻眼の柳生新陰流剣豪。
第1,9~11,14,25,26回
・松平伊豆守(神山繁)・・・幕府老中首座、通称「智慧伊豆」。
第1,2,6,16,20,25,26回
・大久保彦左衛門(片岡千恵蔵)・・・通称「天下のご意見番」。
第1~3,8,9,12,15,17~19,21,24~26回
・一心太助(松山省二)・・・講談等による伝説上の人物。職業魚屋、江戸っ子気質。
第1~3,7,8,11,15,17,21,26話
・由井正雪(成田三樹夫)・・・幕府転覆を企図した「慶安の変」(1651)の首謀者。
第1~3,6,7,9~12,14,15,19,21~26回
・丸橋忠弥(加東大介)・・・槍術の名人。
第1,2,4,15,26回
・葵小僧(松山英太郎)・・・但し、実在の強盗・強姦魔でなく、梓右近の密偵として。
第1~13,15,16,18~22,25,26回
・曲垣平九郎(中丸忠雄)・・・馬術の名人。
第6回「曲垣流霞隠れ」
・荒木又右衛門(夏八木勲)・・・仇討「伊賀上野鍵屋の辻」(1634)で有名な剣豪。
第9回「決闘鍵屋の辻」
・田宮坊太郎(長田伸二)・・・歌舞伎『幼稚子敵討』等で伝わる仇討少年剣士。
第11回「小坊主剣客」
・八百屋お七(村地弘美)・・・井原西鶴『好色五人女』で知られる放火犯少女。
第13回「巷談/八百屋お七」
・木内惣五郎(木村功)・・・百姓救済のため将軍に直訴(1653)した義民「佐倉宗吾」。
第16回「悲願の直訴状」
・左甚五郎(樋浦勉)・・・日光東照宮「眠り猫」等で有名な伝説的彫刻名匠称号。
第17回「飛竜祈願」
・春日局(北城真記子)・・・江戸城大奥の基礎を築いた女人。将軍家光の乳母。
第18回「大奥に挑む」
実在にせよ伝説(架空)にせよ、両者が入り乱れて登場するところが凄い。第9回など、梓右近、柳生十兵衛らが同門(柳生一門)の誼か知らねど、一方的に荒木又右衛門、渡辺数馬(小川真司)組に加勢し、仇敵河合又五郎(中田博久)一派をメッタ斬りにする始末。史実にない空前絶後の誇大妄想絵巻(?)が展開せられ、視る側のド肝を抜く。まぁ、TVドラマになった時点で、もはや【創作劇(作り話)】なのだから、これもよかろう。
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