第三部より、助さん役(杉良太郎→里見浩太朗)が交代。また、新たなレギュラー出演者に霞のお新(宮園純子)が加わる。なお、第三部までのタイトルクレジットが短縮版のため、レギュラー以外の配役は詳らかでない。
・第三部第10話吉田「泣く子にゃ勝てぬ黄門さま」(昭和47年1月31日放送)
監督;山内鉄也、脚本;稲垣俊
ゲスト出演者;田中邦衛、山本豊三、二本柳俊衣
黄門一行は山中で赤ん坊を拾う。この赤子、実は当地の若君。世継ぎ問題に絡む反対派家老一味の手先兵馬(山本豊三)に狙われ、乳母が咄嗟に隠し置いたのだった。旅籠で泣き声がうるさいと毛脛のヘラ平(田中邦衛)と名乗る渡世人が怒鳴り込むが、藪蛇となって宿代踏み倒して夜逃げしようとする。しかし、待ち受けた反対派及びそれと組んだ黄門一行を狙う柘植九十郎(成田三樹夫)に見つかり、捕らわれる。事情を悟った黄門一行が、最終的に悪家老一味を退治する物語。
劇中、「子は国の宝」の台詞が出て来るし、ヘラ平の赤ん坊を負ぶって逃げ惑う場面が愉快。この、大の男が赤ん坊を負んぶした姿は、ついつい女房に逃げられたダメ亭主を連想してしまう。
・第三部第18話岡山「人情刀鍛冶」(昭和47年3月27日放送)
監督;山内鉄也、脚本;葉村彰子
ゲスト出演者;志村喬、夏八木勲、北林早苗、神田隆
備前長船で八兵衛(高橋元太郎)が辻斬りに遭って負傷したため、黄門一行は刀鍛冶助貞(志村喬)の家に泊めてもらう。物語の本筋は、領主池田公若君への護り刀献上に当たって、助貞長男(村井国夫)、次男(夏八木勲)を競わせ、勝った者に跡目を継がせようというもの。そこへ邪な家老(神田隆)が検定職を悪用して不正を働こうとするが、土壇場で黄門一行に見破られ、一件落着。
刀剣の趣味があるわけではないものの、伝統工芸に対する職人魂伝授法を窺い知ることが出来て興味深い。それは、「教える」のではなく「学ばせる」ということ。現代教育とは対極にある考え方である。チャンバラがあまり出て来ない特異な回だが、見方を変えれば刀工一家の家族愛を描いた作品とも言える。個人的には、全シリーズ中でも出色の出来栄えと観る。
本作を採り上げたのは他にも理由がある。幼児の頃からとにかく鍛冶屋が大好きなのだ。古典音楽(クラシック)ならヨーゼフ・シュトラウス『鍛冶屋のポルカ』、唱歌は『村の鍛冶屋』、歌謡曲であれば『鍛冶屋のルンバ』ってな具合。まだ母親の背中に負んぶされてた昭和24年頃、我が生地の村(福岡県筑紫;現筑紫野市)にも鍛冶屋があった。時代の流れで主に農具を作っていたのだが、特別の日には烏帽子を着けて衣を正し、刀剣類も打っていた。トンテンカンと鐵打つ響き(リズム)が身体に染み込んでおり、おのれの波長にピッタリ合うから、ア~ラ不思議。
・第三部第22話下関「消えた姫君」(昭和47年4月24日放送)
監督;鎌田房夫、脚本;葉村彰子
ゲスト出演者;八代順子、八木孝子、黒木進=小野武彦、沢村宗之助
毛利家鶴姫(八代順子)は、堅苦しいお城の生活に飽きて下関で遊んでいた。悪戯心から町娘に変装し、腰元楓(八木孝子)を連れて陣屋を抜け出す。ふぐ刺し屋で助さん、八兵衛と相席になるが、町方に遭って身分がバレるのを恐れ逃走。そこへ次席家老太田黒将監(沢村宗之助)の悪巧みが絡み、危うく殺害されんとするが、事件の真相を知った黄門一行が危機を救う。
「王子と乞食」物の変種。世間知らずの鶴姫と姫君とは知らぬ八兵衛の噛み合わない会話が面白い。どうでもいいけど八兵衛さん、毎回よく喰いますなぁ。けれどもこのキャラクター、好きですねぇ。高橋元太郎は男アイドルグループの元祖スリーファンキーズの所属歌手だった人。本来のお笑い芸人ではないため、笑わせようとの下心がない分、却って自然な笑いを誘うのかも知れない。本作は東映が制作参加しているが、八代順子さんは元大映女優。ピンク映画(お色気物を当時こう称した)や『ガメラ』などの怪獣映画に出ていた。大映倒産後は軸足をテレビドラマに移したらしい。テレビ界ではレギュラーはないが、『ウルトラマンA』『ウルトラマンレオ』などにもゲスト出演している。「ウルトラシリーズ」といえば、本シリーズ第12話では桜井浩子さんが出演している。こちらは『ウルトラQ』の江戸川由利子記者、元祖『ウルトラマン』のフジアキコ隊員として有名ですね。したがってSF物女優のイメージが強すぎ、どうしてもカツラ物(時代劇)は似合いませんなぁ。
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