第四部より、タイトルクレジットが初放送時のままの「完全版」となる。同時に、BGM主題歌も、里見浩太朗、横内正が唄う当時のままで、再放送用に編集加工されていないオリジナル版である。なお、第16・17話「北海の反乱 前・後篇」は欠番扱い。これは初回放送当時、アイヌ有志より事実と異なる内容があるとの苦情によるためだとか。
なにぶんにも昔のこととて、今では放送禁止語(悪名高き「言葉狩り」)となった台詞も頻出する。それを今日の放送コードに照らして該当音声だけ潰してあるから、聞き苦しいこと夥しい。けれども例えば、第6話「ごますり剣法免許皆伝」に出て来る【剣術気違い】の台詞は、そのまま放送されるなど、必ずしも統一されておらず運用基準自体が曖昧かついい加減である。因みにパソコンの日本語変換でも、【気違い】の語は漢字変換候補に出て来ない。わざわざ【気】、【違い】と音節を区切って入力する必要がある。
・第四部第4話三国峠「鬼と呼ばれた娘」(昭和48年2月12日放送)
監督;山内鉄也、脚本;大西信行
ゲスト出演者;安田道代、新克利、野々村潔、川合伸旺、神田隆、金井大
“小野道場の鬼娘”と異名を取る七重(安田道代)という登場人物、ウーマンリブの時代を反映してか、TV時代劇にも強くて勇ましい女が目立ちはじめる。女性に対する[強い]「勇ましい」は、昔なら侮蔑語に等しかったのに、価値観の倒錯が進行しだ証拠である。
悪家老(神田隆)に取り入って剣術指南役の座を狙う須貝玄五郎(川合伸旺)だが、病気療養中の現指南役小野十右ヱ門(野々村潔)の娘七重が毎年優勝して容易に叶わない。須貝らの悪巧みで小野道場は寂れるばかり。そこへ師範代小向蔵人(新克利)が、武者修行を経て戻ってくるが、なぜか七重には未だ敵わない。「相手を意識し過ぎて勝てない」と見抜いた黄門さまが秘策を授けた結果、七重に打ち勝ち剣術大会を制覇する、という話。
・第四部第5話長岡「黒いひげの黄門さま」(昭和48年2月19日放送)
監督;内出好吉、脚本;葉村彰子
ゲスト出演者;磯野洋子、島田順司、笠置シヅ子、稲葉義男、横森久、北原義郎
そっくりさん物。今回は黄門さまのそっくりさん登場。副題は、強欲なそっくりさん丹後屋光右衛門(東野英治郎二役)に間違えられて酷い目に遭ったことから、髭を筆で黒く塗り替えて区別が付くようにしたことに由来する。[暖簾第一]の丹後屋商人気質と[企業は人なり(スポンサー松下幸之助の持論)]を説く黄門さまの論戦が見どころ。どちらが正しいという問題でなく、人それぞれの考え方次第だが、ここではスポンサーに敬意を表して(?)か、丹後屋が折れるかたちで丸く収まるように作られている。
・第四部第14話弘前「落ちて来たおしら様」(昭和48年4月23日放送)
監督;山内鉄也、脚本;池田一朗
ゲスト出演者;松本克平、成瀬昌彦、河野秋武、横森久
「おしら様」とは奥州地方農業の守護神なのだとか。過って谷底に落ちた黄門さまを助けた姉弟(隅田和世、矢崎知紀)は、危険を顧みず村同士の争い事解決に尽力する黄門さまの姿を見て、「おしら様」だと信じ込む、と言うお話。
・第四部第21話盛岡「南部鉄瓶由来」(昭和48年6月11日放送)
監督;内出好吉、脚本;葉村彰子
ゲスト出演者;島田正吾、本阿弥周子、小林重四郎、砂塚秀夫、細川俊夫
南部藩名産鉄器は、伝統的に一部大名、富豪層のための茶器として珍重されていたが、これを庶民の日用品として使えるよう、若い職人が新たな鉄瓶を考案するお話。伝統墨守の老工から次世代若者への世代交代がテーマ。世代間対立を黄門さまが取りなすところは、もちろん史実ではない。
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