正月三が日は2日(木)に墓参りへ行っただけで、日常と何ら変わらなかった。しかしその時、久しぶりに東西線で船橋の実家へ帰ったのだが、快速で東陽町から西船橋の地上区間の変わりように「浦島太郎」みたいな気分になってしまった。
というのも、東西線開業(昭和44年)時、通学・通勤に利用していて当時の状況をよく知ってるからだ。学校が高田馬場だったし、就職先の新人教育施設がたまたま茅場町にあった。その後、最初の赴任地川越も、アパートを借りるまで実家から一都二県を股に掛けて通勤していたので、この線にはずいぶんお世話になった。
で、約半世紀前はどうだったのか。何を隠そう、人里離れた田圃の真ん中をはみ出さんばかりの超満員電車が走る、という異様な光景であった。それが今や一大住宅街と化してますからね。一方、電車のほうは、それと反比例するかのようにガラガラ空いている。尤も、休日の昼間だったし、本数自体が大幅に増えたせいかもしれない。要するに、それだけ世の中が便利になったわけだ。
この「浦島太郎」気分は、今視ている国内ドラマの再放送でも味わされている。例えば、小林稔侍という俳優は“売り出し”の頃から知っているが、当初のハードボイルドな役柄とは百八十度違う“好々爺”的役どころに変わってしまった。また、『駅弁刑事・神保徳之助』『税務調査官・窓際太郎の事件簿』では、親子共演してるんですね。前者が小林健(長男)、後者が小林千晴(長女)。もちろんお二人とも、当方が東西線で通ってた頃には未だ生まれてなかったわけで、全く知らなかった。まぁ、生来が独り身だからピンとこないが、徒食を貪って歳(65)ばかり喰ううちに、世の中は確実に世代交替が行われているのでしょう。
ところで、後者の第18作(2009年)では、エンドロールに森口博子、高橋元太郎の名前を見つけ、我が目を疑った。出演していたとは露ほども気づかなかったからだ。役者ならいろんな役柄があるのは解るが、ご両人とも本来が歌手だったはず。我が記憶にあるのは、彼らの若かりし歌手時代の姿だけなのだ。
国内ドラマの再放送は1990年代以降(つまり、平成になって)のものがほとんどだが、昭和期のドラマも皆無ではない。その一つに、『鬼平犯科帳'75』(丹波哲郎版)がBSフジで再放送されている。どうでもいいけど、NET(現;テレ朝)のドラマが何でフジTV系列なのだろう。丹波哲郎版は初見だが、初代“鬼平”役の松本幸四郎版(1969~1970)は視た記憶がある。この頃の時代劇ドラマは“ビデオ”でなく“フィルム”だったんですね。
この『鬼平犯科帳』(1969~2001)は、『水戸黄門』(1964~2011)や『大岡越前』(1970~1999)などと並ぶテレビ時代劇の人気シリーズらしい。このうち『水戸黄門』については退職直後(2005年)、地上波TBSでの再放送をチラッと視たことがあるが、役者が替わるだけでなく作風も時代とともに変化しているような気がした。『水戸黄門』の月形龍之介(初代)と東野英治郎(二代目)まではリアルタイムで視ていたから何とも懐かしいが、西村晃(三代目)以降の佐野浅夫(四代目)、石坂浩二(五代目)、里見浩太朗(六代目)になるとどうもピンと来ない。なかんずく石坂浩二の場合、若かりし頃のNHK大河ドラマ『天と地と』(1969)が“原風景”なので、制作期に約三十年の隔たりがあるとは言え、いきなり白髪姿で出てこられたんじゃ激しい違和を覚える。
熟々考えてみるに、国内テレビドラマの原点は時代劇が『水戸黄門』、現代劇なら『男はつらいよ』(映画で有名だが、元々はテレビドラマだった)にあるような気がする。どちらも全国(諸国)を巡る点で近似性がある。前者が義侠心を煽り立てる単純な勧善懲悪物とすれば、後者はおバカな寅さんの単なる人情喜劇にすぎないが、この二つが人気シリーズになったのは、代々日本人の心情に合致しているからではなかろうか。
前者の【義侠心(弱きを助け、強きを挫くこゝろ)】は、昔から【判官贔屓(弱者や薄幸の者に同情し味方すること)】とされる日本人特有の心情構成要素の一つだし、後者の【人情(他人への思いやり)】もまた【惻隠(同情すること)】に繋がる。
つまり、古来より【困っている人を観たら助けたくなる】のが「日本人」ってものでしょう。しかし、ドラマの作風だけで判断するのは早計とは思うが、昭和から平成へ御世が代わってから、“勝ち組”といった表現に代表されるような、オツムがすっかりアメリカニズムに汚染された“新人類”が出現し、伝統的な精神が失われていくような気がして残念でならない。
【あとがき】
関係ないけど先日、愛用イヤホンIE-80のイヤーチップを取り替えようと捻って無理に引っ張ったら、円筒状のノズル部分ごと根っこからもげちゃった(左耳側だけ)。
一年半使ってきたから有償修理だろうし、いつ戻るかわからないので、ヨドバシカメラへ寄って新品に買い換えた。なにせボクちゃん、“小金持ち”だもんね。
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