先日、ヒマなものだから知人のオフィスを訪ね、冷やかしてきた。チェンマイでの定宿になった当マンションを借りる際、何かとお世話になった人である。彼は日本生まれの在日韓国人(在タイなのに「在日」とは妙な表現か)。昔、電気水道代を払わぬまま帰国したことがあって、その時は、大阪にある彼名義の銀行口座へ振り込んだ。また、親・兄弟が既に日本国籍であるにも拘わらず、日本に住んでないため、一人だけ帰化できないらしい。
その辺りの事情に興味があって、いろいろ訊いてみた。韓国籍だから、パスポートは韓国政府発行のものとか。ところが、多少の親類縁者があるだろうに、韓国へは一度も行ったことがない、という。事実、本貫(本籍地)は韓国内某所のはずだが、ハングルが読めないし韓国語を解せないから、何処だかわからないのだそう。
対日本人向けのポーズかも知れないが、祖国(韓国)を想う気持は微塵もないようだし、かといって日本人にもなれない。非常に中途半端な境遇ではなかろうか。以下は彼の話を離れた、私奴の勝手な《在日韓国人》論に過ぎないので、くれぐれも誤解なさらぬよう。
良し悪しは別にして、韓国と日本では文化が違う点を押さえておく必要があろう。その国の文化は、まず言葉(敬語・丁寧語・謙譲語)に顕われる。最近では形骸化されつつあるとはいえ日本の場合、身内同士であれば上位者に対して敬語を遣うが、部外者との会話では、例え自分の上司・親・兄・姉の話題といえども敬称は付けない。ところが韓国の場合、会話の相手とは無関係に、自分を基準とした上位者を話題にする際には、全て敬称(敬語)を用いる。
卑近な例を挙げると、日本語の『兄』だけでは単に兄弟間の序列を示す語に過ぎず、『兄貴』『お兄さん(さま)』と敬称をつけた呼び方で初めて『兄』への敬意が籠もる。逆に『弟』に対して、兄弟身内間で『弟さん』と呼ぶ習慣はない。こういう呼び方は、部外者が会話相手の『弟』を敬って呼ぶ場合に限られる。時代劇で『兄上』とか『兄君』はあっても、兄弟同士で『弟上』『弟君』とは決して呼ばない。ところが韓国語では、『형(ヒョン;義兄弟的な兄貴)』と『오빠(オッパー;お兄さま)』とがあって、『형』も一般に『형님(ヒョンニム;自分の耳には“ヒョニン”と聞こえる)』という具合に『님(さん・さま)』の敬称をつけて用いられる。韓国人にとっての上司や親・兄・姉は、常に上位者であるから、韓国語で呼び捨ては許されないのである。
従って、韓流ドラマへの違和感は、こうした些細な日常会話にさえ文化の違いが顕われることも理由の一つである。考えてもみよかし。『こちらの方が、ウチのお兄さまでいらっしゃいます。』などと紹介されようものなら、気色悪くて逃げ出したくなってしまう。
ところで、在日韓国・朝鮮人のルーツは、戦時中の徴用により、祖国朝鮮から嫌々日本へ強制連行されてきたかのように喧伝されているが、苛烈な身分制度に縛られて住みづらい朝鮮を捨て、多くは日本本土で一旗揚げようと、自らの意志で渡来したのが実態らしい。ゆゑに現代韓国側から観れば、祖国を捨てた裏切り者としか映らず、挙げ句には“親日派”のレッテルまで貼られてたいそう蔑まれているとか。現に韓国では、“親日派”というだけで立派な《罪》になるのだから、彼らが韓国へ帰りたいなどと考えるはずがないのである。なのに、一部の排外主義者らが《朝鮮人は半島へ帰れ!》などとデモを繰り返しているが、徒に彼らの感情を逆撫でするだけで、在日韓国・朝鮮人の立場を知らなさすぎる。こんなデモに日章旗を悪用しないでもらいたい。同じ日本人として、実に恥ずかしい。
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