昨年8月、中台韓日 『軍歌』 聴き比べと題して東亜四カ国の《軍歌》を聴き比べてみた。《軍歌》にこそお国柄が顕われているように思ったからだ。なるほど、日中台韓それぞれに違う音色や響きを持っている。戦後日本の場合、軍備放棄を謳う憲法の制約があって、建前上は“軍隊”が存在しないのだから、《軍歌》などあるはずがない。強引に、自衛隊の“音楽隊”を他国の“軍楽隊”に見立てて比較してみたのだが、徒労に終わった。そもそも、両者間では存在意義が異なっているのだから、当然の結果と言えばそうかもしれない。
で、タイの軍歌ってどうなんだろうと検索してみたが、みつからなかった。そのかわり、タイ映画《คู่กรรมくーかむ》のサウンドトラックに『同期の桜』のメロディが使われているのを発見。
この《คู่กรรม》という映画は、1970年のTVドラマ版がオリジナルで、その後、映画・舞台・TVドラマに再三再四リメイクされており、今年もまたTVドラマ版と映画版の両方が新作で登場したほど、タイ人なら誰もが知っている有名な作品。日本では『メナムの残照』という邦題だが、原題を直訳すれば【運命の相手】といった意味になる。先の大戦中、バンコクに駐留した日本海軍大尉小堀とタイ人女性アンスマリンとの悲恋物語で、原作はタイの女流作家トムヤンティの長篇小説。
個人的にはチンタラー・スカパットがアンスマリンを演じた1988年版映画が気に入っている。
映画《メナムの残照》-1988年版
ところで、“灯台下暗し”とはこのことか。掲題にふさわしいDVDを何と所有していたのだ。昨年6月6日付記事でご紹介したMusicTrainレーベルのDVDで、タイの三人娘สาว สาว สาว(サウ・サウ・サーウ)のことに目を奪われて気づかなかったが、驚くなかれหรั่ง ร็อคเคสตร้า(ラン・ロックオーケストラ)なるたいそうな芸名を持つ歌手が歌うรักเธอประเทศไทย(タイが大好き)という曲がそれ。
รักเธอประเทศไทย - หรั่ง ร็อคเคสตร้า
音源は所有するDVDと同じものとしても、YouTube映像は後年のものだし、オツに澄ました官製臭さが漂う感じ。また、肝腎の歌手も出てこない。しかし、DVD版は長髪を振り乱して如何にもプアチヴィット(タイのロック)歌手らしく、外連味たっぷりに歌う歌手の姿が随所に出てくるし、映像も官製ではないタイらしさを感じさせる民間人(特に子供)の表情を主体に捉えていて好ましい。
今では国民的愛唱歌なのか、タイ国軍軍楽隊と協演した映像もあるみたいですよ。
รักเธอประเทศไทย - หรั่ง ร็อคเคสตร้า (タイ国軍軍楽隊との協演版)
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