音声のみのラヂオと違って、テレビには映像が加わる。テレビが入った当時(昭和34年)、視ることに夢中で気が付かなかったが、これには一長一短がある。つまり、歌にしろドラマにしろ野球中継にしろ、聴覚のみに頼らざるを得ないラヂオでは、それなりの想像力を必要とする。しかし、聴覚・視覚ともに入るテレビとなると、視たもの聞いたものが全てで、想像力を働かせる余地は殆どない。
変な話、執筆中の“懐メロ”といえども、当時からレコードの現物があったわけじゃなく、少なくともこれま採り上げた曲は、ラヂオを聴いて知ったものばかり。音源はSP・EP・LPそれとも放送用録音? そんなことは関心外だったし、知る由もなかった。ジャケット写真に見覚えがないのも当たり前。しかも、耳情報だけに頼ると、こういう錯覚を起こしやすい。映画主題歌をラヂオ劇主題歌と勘違いして憶えてしまった次第。
逆にテレビ時代になると、視覚のほうが先に立つ。どうなるかというと、学生時分に『若者たち』(フジTV)というドラマがあった。主題歌を歌うは【ブロードサイド・フォー】。だが、ドラマより先に【ブロードサイド・スリー】時代を知っている。実は、TVサウンドトラックと後発レコードとでは【音】が違う(別録音)。ゆゑに、少なからぬ違和感を覚える。
てなわけで本稿は、レコードより放送開始年を基準に記します。
☆ TBS『月光仮面』主題歌(昭和33年~) - 近藤よし子
大分在住時、自宅では視ていない。福岡県の電波が受かる友人宅で視せてもらった。したがって、毎回視ていたわけでなく、断片的な記憶しかない。何でかというと、OBSは本来TBS系だが、放送開始時は大分で唯一の民放とあって、クロスネットの番組編成だった。そのため、当該番組は外されたのだろう。それでも関東へ出てきて、再放送を視た憶えがある。
☆ TBS『月光仮面』挿入歌(昭和33年~) - 三船浩
ひぇ~、何とSP盤じゃありませんか。10分番組だった第一部では、原作者の川内康範自身が歌っている(と思う)。この三船浩盤と前述の主題歌『月光仮面は誰でしょう』がテレビに登場するのは、第二部以降である。事実、レコード発売年は翌昭和34年。レーベルにもあるように劇場版映画と共通になっていて、人気に肖ったことがわかる。個人的には、幼児っぽい主題歌より“小父さん”の風格漂う三船浩に軍配を揚げたい。
☆ NET『七色仮面』主題歌(昭和34年~) - キング子鳩会
『月光仮面』の代わりにOBSで放映されていた番組。動画は劇場版映画のようだが、TV版と同一。この波島進の『七色仮面』も、続く千葉真一の『新七色仮面』も自宅で視ていた。主題歌の歌手は同じでも、『月光仮面』よりむしろ、こちらのほうが馴染みがあるし懐かしい。
☆ TBS『あんみつ姫』主題歌(昭和33年~) - 中原美紗緒
おぉっ、このLPレコード持ってるぞ。同じTBS系でも、OBSでそのまま放映されていた。ただし、キー局放映時間帯と異なり、日曜日の昼間だった気がする。少女雑誌に連載された漫画が原作だけに、原作漫画はもとより、映画版があることも知っている。主演の中原美紗緒を除けば、お笑い芸人を集めたハチャメチャなドラマで、少女物なれど理窟抜きに愉しめた。
調べてみたらTV版は、ちょうど四半世紀(25年)後に、未見なるも小泉今日子でリメイクされているんですね。
☆ NHK『バス通り裏』主題歌(昭和33年~) - 中原美紗緒
ホームドラマでよく視たのは、これ。歌手自身は出てなかったと思う。精神的な意味での純和風ホームドラマであった。思い込みだけで書くのもナニだが、【あぁ、みんな日本人なんだな】と思わせるこんなドラマは、逆立ちしても外国人には作れまい。いや、《アメリカニズム》が蔓延した現代日本では、こうしたドラマのほうが駆逐されてしまったかも。
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