前年に引き続き、この年も《グループサウンズ》が大ブレイク。前稿で、先行組と後発組とでは“サウンド”が違う旨を書いた。そこで、何処が違うのかを改めて聴き比べてみた。飽くまで個人的かつ恣意的な観方ではあるが、前者が男の視点に立つとすれば、後者は遙かに女性好みの作風になっている。甚だしきは、最後発と言っていい翌年の『スワンの涙』(オックス)など、【お話ししましょう】という女口調の歌詞が繰り返し出てきて気色悪い。
☆ 乙女の祈り(昭和43年) - 黛ジュン
ベートーヴェン『エリーゼのために』と並ぶクラシックピアノ曲の定番、女流作曲家パダジェフスカの同名曲を念頭にこれを聴けば、乙女にあるまじきハチャメチャな響きに誰もが腰を抜かすに違いない。自分は好きですけどね。ビートルズ(オリジナルはチャック・ベリー)に『ベートーヴェンをぶっとばせ(Roll Over Beethoven)』という物騒なロックンロール曲があったが、さながらその女性版で『パダジェフスカをぶっとばせ』といった感じ。
後記> 単なる語呂の都合だと思うが、歌詞にある「顔(かお)」が「かほ」ではなく文字通りの現代式発音なのに、「頬(ほお)」の部分を「ほほ」と歴史的仮名遣い風に歌ってるところが面白い。
☆ ゆうべの秘密(昭和43年) - 小川知子
本来がTVドラマの子役で世に出たタレントであり、自分には“歌も歌える女優”とのイメージである。好んで聴いたこの曲にケチをつけるつもりはないが、甚だ今風の権利意識旺盛な人のようで、ゴシップに枚挙の暇がないらしい。
☆ 霧にむせぶ夜(昭和43年) - 黒木憲
映像無しでこの人の歌声を今聴くと、なぜか石原裕次郎と勘違いしてしまいそう。当時はテレビを視てこの曲を知ったわけだから、夢にも思わなかったが・・・。
☆ 海は恋してる(昭和43年) - ザ・リガニーズ
このグループは、カレッジフォークに分類されるようだけど、加山雄三『君といつまでも』などとは何処が違うのだろう。曲調が暗いからなのかなあ。
☆ 小さな日記(昭和43年) - フォー・セインツ
これもカレッジフォークとされるが、カレッジポップスからグループサウンズに流れたグループに比べて、確かに暗いですねえ。実はこのカレッジフォーク、校園民歌と呼ばれる'80年代台湾のニューウェーブとズブズブの関係にあるのですよ。
☆ 友よ(昭和43年) - 岡林信康・高石友也
当時の新左翼運動(反権力闘争)を象徴する歌。と言っても、その目的で作られたわけではなく、こうした政治運動に尽く利用されただけで、曲自体に罪はない。
翌年の『10.21新宿(国際反戦デー)闘争』の際だったか、一通行人として大合唱の現場を目撃した。その時は猪瀬直樹現東京都知事も権力側に非ず、闘争参加者(反権力)の一人だったというのだから、時代が変わったと言えばそうなのかもしれない。
*ご参考* 友よ(同名異曲) - AKB48
同名異曲ながら聴き比べてみると、昔と変わらなく見える世の中も、確かに大きく変わっているようですね。
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