お代官さまへ年貢を納めねばならず、申告書類作成のため暫く更新を怠けてしまいました。確定申告するようになってから今日まで、いつも納め過ぎだからと還付してくださる。世界に冠たる「悦服統治」の国ならではこそ、まことに有り難いお話であります。
とは“言い訳”に過ぎず、内実はイヤホン(ヘッドフォン)の聴き比べに現を抜かしておりました。保有するシュアー製SE215、SE535LTD、ゼンハイザー製IE80という三本のイヤホンに加え、つい先週、初心に戻ってヘッドフォンまで買っちゃいました。
というのも、始めに携帯用DAP(デジタル・オーディオ・プレーヤー)ありきの選択自体が間違いだった、と気づいたから。ポピュラー系ならいざ知らず、バッハの教会カンタータは宗教行事用であり、これを教会外で聴いてはならない決まりはないものの、寝そべったり歩きながら聴く音楽ではないはず。1979年に世界で初めて携帯用オーディオ機器を考案した、ソニーにも責任の一端がある。“Walkman”というネーミングがいけない。まるで“歩行者専用”と言わんばかり。
【初心に戻って】との意は、自身のオーディオ遍歴を振り返ってのこと。最初は親に買って貰ったレコードプレーヤーをラヂオに繋げて聴いていた。LP・EP盤用で、音声は勿論モノラル。次に卓上式ステレオを買って貰った。社会人になって、自分のカネで買ったのがパイオニアの廉価なオーディオコンポ。その後、ティアックのテープデッキやカセットデッキが加わったほか、プレーヤーは日立、アンプはヤマハ、スピーカーはオンキョーといった具合に買い換えていった。偶々ソニーの営業マンが職場に出入りしていたため、出始めの頃のCDプレーヤーやAV機器ではED-βのビデオデッキまで買わされるハメに・・・。
レコード鑑賞にあたっては、当然ながらスピーカーを通して聴くことになるが、近所迷惑を考えると大音量にするわけにはいかない。そこで、ヘッドフォンのご登場と相成るわけであります。ヘッドフォンを初めて買ったとき、Walkmanはすでに市販されていたし持っていたが、このヘッドフォンで聴いてみようとは思いもしなかった。Walkmanで聴く音楽テープは歌謡曲ほかの娯楽で聴くポピュラー系ばかりで、クラシック音楽をカセットに詰めて持ち歩く発想自体がなかったからである。こうした自分なりの使い分け意識があったせいか、Walkman用は付属の耳乗せタイプ小型ヘッドフォンで聴き、レコード鑑賞には耳覆いタイプの本格的な大型ヘッドフォンで聴くもの、と端から決め込んでいた。
自宅のオーディオ装置を弄らなくなって久しい。もう四半世紀近く、使ってないように思う。別に壊れたわけではないので今でも使えるはずだが、二年前の東北大地震でオーディオラックが傾いたまま、放ってあるありさま。有るのに聴けないとなると、無性に聴いてみたくなるもの。急にスピーカーで聴いていた頃が懐かくなってきた。ただ、昨今は大音量でスピーカーを鳴らす時代ではないので、本格的なヘッドフォンを物色する仕儀となった次第。
さんざん迷ったあげく、イヤホンが全て舶来品(実体は中国製)なので、「日本製」に限定してみた。因みに、オーディオに凝ってた頃の舶来品はメチャクチャ高価で手が届かず、勢い国産品ばかり。ヘッドフォンも最初がパイオニア製、その後ソニー製Zシリーズを愛用していた。しかし、国内大手メーカーがほとんど多国籍化してしまった今日、パイオニアにしろソニーにしろ、もう純然たる「日本製」とは呼べないのかも知れない。そこで浮上したのが“SoundWarrior”なるマイナーブランド。
ブランド名を直訳すれば、差し詰め《音響の武士》といったところか。製造元の城下(しろした)工業によると、録音スタジオ・放送局・レコード(CD)店等の業務用ヘッドフォンを一般市販品として仕様変更したものだとか。
http://kakaku.com/item/K0000067987/
買ったのはe☆イヤホンのWEBサイト。注文した翌日には到着する迅速さが素晴らしい。大阪日本橋が本店らしいですが、商品自体は秋葉原から来たみたい。私奴が買ったためか、在庫表示が“×品切れ”になっちゃいましたね。
肝心の音質は、まだ慣らし(鳴らし?)運転中で本領発揮に至ってないにも拘わらず、価格.comのレビューにもあるとおり、総てが素晴らしい。前稿臨場感 - 実演と録音の違い -で貼ったYouTube動画が、会場で聴いた生(なま)の響きを彷彿とさせてくれる。スピーカーの前で畏まって聴いていた《あの頃》が甦る感じですね。DAP直挿しも可能だが、据置型オーディオ機器を想定した作り(インピーダンスがやや高め)のため、非力なDAP内蔵アンプだけでは音量が取りにくい。ポタアンを介すとベストマッチである。音質が悪いとさんざん貶した我がiPod touchも、Picoを挟みSW-HP10で聴くことにより、高級オーディオ装置を手に入れたも同然と言った塩梅。しかし、携行するには不向き。持ち歩くことは想定外なのでしょう。
このヘッドフォンを聴いてしまうと、さしものSE535LTDが赤ん坊みたい。解像度を誇るイヤホンが籠もり気味に感じるほどだから不思議である。もう一方のIE80にしても然り。特長とする低音の膨らみがむしろだらしなく聞こえる。しかも、舶来高級イヤホンより遙かに廉い一万円そこそこで買えるのだから、笑いが止まらない。
室内専用として聴くなら、お勧めのヘッドフォンです。
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