韓流時代劇に『大長今(대장금;テ・ジャングム)』(2003年MBC-TV)がある。邦題が『宮廷女官チャングムの誓い』と名付けられてあるとおり、“長今(장금)”とは人名である。李朝中宗期(16世紀)の実在人物とされるが、「実録」でさえ都合よく改竄してしまう彼国のことゆゑ、極めて怪しい。何よりドラマ自体が、韓流お得意の我田引水、牽強附会に満ちた全くのフィクション(つまり“作り話”)である。どうでもいいけど、タイでも放映されたとか。
☆ 『大長今』オープニング
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他の韓流に較べたら料理や医学の話題が挟まる分、幾らか愉しめるが、結局が才色兼備の宮女(みやおみな)と男前で有能な御武家様との恋物語に収斂してしまい、当時ではあり得ない御伽話にがっかりさせられる。それでも、チャングム役のイ・ヨンエ(李英愛)さんは人好きのするご尊顔だし、チョンホ役のチ・ジニ(池珍煕)もダメ男がお似合いの俳優さんだから、“寸止め”としてあげよう。
ドラマの好演者を選ぶとすれば、個人的な好みもあって断然チェ尚官(キョン・ミリ甄美里)とクミョン(ホン・リナ洪利奈)のコンビだ。悪役との対比で主役は引き立つ。とはいえ、悪の権化チェ・バンシル(イ・ヒド李熙道)では如何にも悪人顔で落選。イ・ヒド氏、ごめんね。そこへいくと高慢な役どころが多いキョン・ミリさんには妙な親近感があるし、ホン・リナさんは同時代が舞台の『王朝の暁~趙光祖伝~』(1996年KBS-TV)では、士林派趙光祖の貞淑な妻という美味しい役柄を演じてます。日常は虫も殺さぬ顔の女が、まさかの悪巧み。こうでなくっちゃ陰謀など成り立ちません。本当の悪女(毒婦)は、一見、善良そうに見えるから、錯覚した浅薄な男どもが吸い寄せられ、いつの間にか手玉に取られちゃうんですね。
私利私欲のためにあらゆる謀略を企てるところも凄いが、性別・身分・職業・門地による差別が凄まじい。現代の感覚では信じ難いが、李氏朝鮮時代には当たり前のことだったのか。その残滓が、現代劇にも強い影を落としている。
例によって音樂がいい。受けを狙った今風な流行り歌でなく、昔風の伝統楽器を使った曲構成なのが好ましい。サントラ盤からどうぞ。
☆ 창룡(青龍)
悪くないけど、ドラマ内容を逸脱したかなり好戦的な曲ですね。
☆ 오나라1(オナラ1)
04 오나라 1 oh na ra (theme song)をダウンロード
片仮名表記が憚られるような曲名ですが、わらべ歌風でよい。
☆ 연밥(蓮の実)
邦訳が「蓮の実」だが、연(yeon)は“年間”、밥(bap)は“御飯”のこと。調理場の音楽だし、例えば「めしどき」とか、ほかに適当な訳はないのだろうか。
嗚呼、急に비빔밥(ビビンバ)喰いたくなった。
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