不勉強で知らなかったが、この世に文化依存症候群なる病気(?)があるという。もともとは、欧米人から観た珍奇な精神疾患の研究から始まった学問らしい。それに、19世紀後半の西洋植民地主義とズブズブの関係にあるとか。ゆゑに、主として被支配国に多発する精神病理とも言えるが、近年にあっては拒食症などが欧米発の文化依存症候群に加えられている。
日本で言えば、対人恐怖症がこれに当て嵌まるらしい。人前で恥をかきたくない、失敗したくないという思いが極度の緊張を生み、あがり・どもり・赤面の症状となって顕在化する。自分にも覚えが無いわけでなく、とりわけ日本人に多いそうで、これぞまさしく《恥の文化》の証左であろう。
それで以て《恨(ハン)の文化》たる韓国(含;北朝鮮)の場合を観ると、これが有名(?)な火病(화병;ファビョン)なんですね。「火病」の語ぐらいは知ってたが、具体的な症状(?)まで関心がなかった。でも調べてみると面白い、と言ってはアレだが、なかなか興味深い。
虐げられた民族の長い歴史から、面従腹背の日常生活を余儀なくされ、積年の鬱憤(恨み辛み)が強いストレスとなって、弱者や周囲に八つ当たりするのだそうな。一説によると、韓国民の七割以上が何らかの火病患者であるという。韓流ドラマはやたら復讐劇が多いし、御膳をひっくり返したりして、周囲に当たり散らすシーンが目立つ。異国人の当方から観れば、こんな狂った行動がまったく理解できなかったが、火病の何たるかを知って納得。
その典型的なドラマが、BS11で目下放映中。『妻の誘惑』(2008年SBS-TV)がそれ。“復讐の女”ことチャン・ソヒ(장서희張瑞希)さんが主役を演じる。題名が何で“妻の誘惑”なのか知らないが、主人公のウンジェ(チャン・ソヒ)が双子姉妹同然に育ったエリ(キム・ソヒョン)から逆恨みされ、夫を奪われた挙げ句に殺されかけて遂に復讐の炎を燃やすというストーリー。
復讐劇だからシリアスなはずが、真面目な場面ほどなぜか滑稽に映る。まるでコメディでも視るかのよう。なぜって、登場人物が総じてトンデモ人間ばかり。知的障害者という設定の義理の叔母さんハヌル(オ・ヨンシル)がまともに見えるほど酷い。まあ、このドラマの見所は、火病が満載で妙に愉快なところ。それを除いたら幼児向けとしか言いようのない稚拙なドラマです。したがって、主題歌だけを貼っておきましょう。邦訳歌詞付なので、主人公の内心がよくわかると思います。
☆ 許せない - チャ・スギョン(「妻の誘惑」主題歌)
SBSドラマの主題歌なのに、ライバル局のKBS歌謡番組で歌っているところが凄い。ただ惜しいことに、わりかし好きな歌にもかかわらず、歌声が途切れたりして聴きづらいですね。チャ・スギョンさんのご尊顔は悪いけど好みじゃないし、サントラ盤の音源をご参考までに。
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