韓流ドラマに対する激しい違和感は免れ難い。これも「異文化」なるがゆゑだろうが、かといって他の海外ドラマにはこの種の違和感はない。なぜなら、“異国のドラマ(文化)”と認識して視るから、違って当たり前という心積もりが出来ている。ところが韓流の場合、最初からつまずいた。子供時分を想起させるような昔風の光景や所作に惹き寄せられて、あたかも国内ドラマ(の亜流)を視るかのように錯覚してしまったのである。
初見の番組は、主役カップルの小学生時分を毎回挿入した『あんぱん』(2004年MBC-TV)。自分にも憶えのある子供の遊びが出て来るし、笑えるラブコメディだったので、「文化の違い」など気にも留めなかった。これに釣られて他番組を数々漁ってみたが、どうもしっくりこない。真面目(?)であればあるほど、それが際立つ。まるで正反対と言っていいほど、自分とは物の観方・考え方が違っている。
メロドラマともなると、「幸せにする」「愛する」「信じる」「守る」など、歯の浮くような台詞がポンポン飛び交う。しかし、言葉とは裏腹に、肝腎の情感がちっとも伝わってこない。自分が滅多に口にしない重みある言葉をかくも安易に遣うから、有難味が薄れて空疎なこと夥しい。
何と言ったらいいか、喜怒哀楽を露わにした大仰な演技が必要なほど、韓国民は他人の気持(内心)を察せられないのだろうか。とにかく人間味に乏しいというか、心の温もりが感じられないのである。額に汗して働くことを厭うが故に、泥に塗れて仕事に打ち込む姿や女が家事に精出す場面はほとんどなく、主人公は決まって財閥の御曹司か令嬢であり、時代劇なら国王・王妃ら王族乃至はせいぜい両班どまり。間違っても庶民レベルが主人公にはなり得ない。これでは生活臭などするわけがない。如何にも「お伽話」を作りましたといわんばかりの虚飾に満ちた内容に呆れてしまう。
ただ、BS11で放映中の『名家(명가:ミョンガ)』(2010年KBS-TV)だけは、韓流らしからぬ崇高な精神(ノブレス・オブリージュ)に挑戦した意欲作と言えよう。こんな主人公なら、自分も斯くありたいと思う生き方と大差なく、ドラマの内側に入り込める。
しかしですね。一大長編ドラマの予定が超低視聴率に悩まされ、あえなく16話で打ち切りになったとか。権力に媚びて生きるしかなかった歴史的経緯からか、世のため人のために尽くす人など居るはずがないと考え、韓国民にとって、そんな人は“偽善者”としか映らなくなっているのでしょうか。また、幼児番組と見紛う幼稚な作りが、著しく品位を下げていて勿体ない。それでも、フルオーケストラによるクラシカルな樂の音に心が洗われる。
例によってサントラ盤をお聴きください。
01 명가(名家:ミョンガ) title
太鼓(ティンパニ)入の、物々しいオープニングですねえ。一大長編ドラマの予定だったのだから、このくらいは当然か。
02 그대 뒤에서(あなたの後ろで)-As One
As Oneという歌手は、ほかのドラマ挿入歌も歌っているが、媚びて甘えるような歌声がどうも好きになれない。この歌い方がなにゆゑにミスマッチなのか、諦観からくる超然とした歌詞を貼っておきましょう。
저 멀리 보이는 그대 뒷모습
遠くに見える あなたの後ろ姿
오늘하루 어땠나요 힘들진 않았나요
今日はどうでしたか 苦労なさってません?
아련히 들리는 다정한 목소리
ほのかに聞こえる 懐かしい声
지금도 그때처럼 가슴이 따뜻해요
今もあの時のように 胸が熱くなります
아무도 모르게 오래 그리워하고
誰も知らない 昔の想い出
언제나 혼잣말처럼 그대 안부를 묻고 있죠
いつも独り言のように あなたのことを気遣ってます
나무라지 말아요 가여워도 하지 말아요
怒らないで 憐れまないで
이대로도 괜찮아요 내가 선택한 길이니까
このままでいい 自分で選んだ道だから
날 애써 외면하나요 그대 조금은 서운할지 몰라도
私のことは心配しないで あなたは不満でしょうが
지금처럼만 있어줘요 그저 바라볼 수 있게
今のままでいい ただ眺めるだけでいい
후회는 없어요 내가 사랑하니까
後悔などしてません 私には愛があるから
언제나 그림자처럼 그대 편이고 싶은거죠
いつも影のように あなたの傍にそっと居たい
나무라지 말아요 가여워도 하지 말아요
怒らないで 憐れまないで
이대로도 괜찮아요 내가 선택한 길이니까
このままでいい 自分で選んだ道だから
날 애써 외면하나요 그대 조금은 서운할지 몰라도
私のことは心配しないで あなたは不満でしょうが
지금처럼만 있어줘요 그저 바라볼 수 있게
今のままでいい ただ眺めるだけでいい
05 Till The End(最後まで)
好きですねえ、この曲。時の流れを感じさせてくれるメロディ。
12 하늘아(空よ)
急に思い出したけど、東映映画『ちいさこべ』(昭和37年)の音樂(伊福部昭)に似てませんか?
おしまひ
コメント