☆ 會議の方法
談合事などは、まづ一人と示し合ひ、その後聞くべき人々を集め一決すべし。さなければ、恨み出来るなり。又大事の相談は、関係なき人、世外の人などに、潜かに批判させたるがよし。贔屓なき故、よく理が見ゆるなり。ひとくるわの人に談合候へば、我が心の利方に申すものに候。これにては益に立ち申さず候由。
【 訳 】
相談事などは、まず一人と話し合い、その後意見を聞くはずの人たちを集めて決定すべきである。そうしなければ、恨む人が決まって出てくる。また、大切な相談事は、関係ない人、世俗外の人などに、秘かに批判させるのがよい。えこ贔屓がないから、よく道理がわかるものである。類縁の人に相談したりすると、自分(相談した人)にとって有利な言い方をしがちである。これでは、役に立たないということだ。
【 解 説 】
中国では、昔から会議を開くのに、出席者の一人一人をよく説得して、会議を開けば同時に合意に達するような工作をしてから、会議を開くのが慣習であったと聞いている。このような政治的な知恵はそういう慣習を持たない日本人の中で、「葉隠」がつとに推奨しているところのものである。
昨今、「談合」という熟語自体が、悪の巣窟のように捉えられているようですが、果たしてそうでありましょうか。
だんがふ 【 談 合 】
(1) 話し合うこと。話し合い。相談。
(2) 競争入札の際に、複数の入札参加者が前もって相談し、
入札価格や落札者などを協定しておくこと。
「葉隠」が言ってるのは(1)であろうし、問題にされているのは、(2)の場合だろうから、まったく意味合いが違うが、なぜ「談合」がいけないのか。確かに、馴れ合いではいけないだろうが、それなりのよさもあったのではないか。
会社の健保組合議員をやっているころ、保養所を巡る談合疑惑(?)が持ち上がり、入札方式に切り替えることとなった。自社にとっては、安価に保養所が出来るというメリットがでた反面、保養所所在地の建設業者でなく、遠隔地業者が落札する結果となって、地元から総スカンを喰らうデメリットも生じた。何事も、一長一短ということだろう。
「葉隠」の言わんとするところは、会議や相談事(意見を聞く)の場合、予め根回ししておかないと、纏まる話も纏まらなくなるという教訓でしょうね。そして、己に対する辛辣な意見をよく聴きなさい、というところがポイントか。
我が社祖の言葉にも似たものがあります。「汝の敵を愛せよ。」と。なぜかというと、親しい間柄の者は、気分を害さないようにとの配慮からか、遠慮して弱点・欠点のことはあまり指摘しない。しかし、相手が敵となれば、己の弱点や欠陥をこそ、鋭く抉り出してくれるから、ということらしいです。なるほど、自分もそう思います。
ところで、「談合」(根回し)は、支那伝来ということのようですが、果たしてそうかな、という気もします。
ありがとうございました。
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