☆ 交際の誠実
「人の心を見んと思はば煩へ。」と云ふことあり。日頃は心安く寄合ひ、病氣又は難儀の時大方にする者は腰拔けなり。すべての人の不仕合せの時別けて立ち入り、見舞・付屆仕るべきなり。
恩を受け候人には、一生の内疎遠にあるまじきなり。斯樣の事にて、人の心入れは見ゆるものなり。多分我が難儀の時は人を頼み、後には思ひも出ださぬ人多し。
【 訳 】
「人の心を見定めようと思ったら、病気をしろ。」という言葉がある。日頃は心やすく付き合いながら、病気や災難に際して知らん顔する者は、卑怯者である。何と言っても人の不幸には、親身になって付き合い、見舞いや届け物をする必要がある。
恩を受けた人には、一生の間疎遠になってはならない。このようなことで、人の真情といったものは判るのである。ところが普通の場合、自分が困っている時には人頼みするくせに、あとではまるで思い出さない人が多い。
【 解 説 】
「葉隠」のデリカシーは人との交際においても、真心(まごころ)が第一であることを教えている。この考えは現代にそのまま用いて、少しも齟齬するところはない。
ここへ来て『葉隠』で言うところの「武士道」の何たるか、が見えてきたようですね。
勝手な我流解釈ながら、それは
「まごころ(誠実)」・「思いやり(優しさ)」・「勇気」
と結論づけてみたのですが、如何でございましょう。
また『葉隠』の別項で「知・仁・勇」も出てきます。具体的には、
知=他人の話をよく聞くこと。
仁=他人が望むことをしてやること。
勇=歯を食いしばって我慢すること。
だそうです。
ありがとうございました。
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