連続TV映画『月光仮面』（51）

《 第59話 》 「ドラゴン来る」

【 あらすじ 】 祝が爆死したとの記事が新聞に掲載され、町では騒ぎが起きる。同じ頃、どくろ仮面のアジトに国際スパイ団本部から派遣されたドラゴンがやって来る。ドラゴンから新聞記事を見せられたどくろ仮面は、タイガーのことが記事に出ていないのを気にかける。

 第58話の続き。

博士 「そりゃあ、迂闊だったね。あのオルゴールがなくては、いざの場合に月光仮面に助けを求めるわけにはいかなくなる。（松田に）おお、何か手がかりでも・・・。」

松田 「どくろ仮面は多分、勝手口から忍び込んでお嬢さんの部屋からオルゴールを奪って逃走した、と推定されます。ただし、誰か内部から手引きをしたか、お婆さんが居眠りでもしていなかったら、入り込む余地はなかったはずです。」

お由 「松田さん、申しわけございません。」

松田 「じゃあ、お前があのオルゴールを。」

お由 「いいえ、とんでもございません。ただ、わたくしは、居眠りをしておりましたので・・。」 深くうなだれる。

松田 「う～む。」

お由 「お嬢様、あたしを叱ってやってくださいまし。あたしさえ居眠りをしなければ、あのオルゴールは盗まれずに・・・。」

あや子 「（否定の）うううん、いいのよ。婆やがもし居眠りしなかったとしても、きっとどくろ仮面は盗っていったわ。それに、あたしも不注意だったの。」

博士 「ふむ。婆や一人の責任ということはないよ。いやあ、私にもいちおうの責任はある。」

松田 「いやあ、そう言われますと、一番責任を感じなければならないのは、わたくしですからねえ。」 お由の肩を叩いて 「まあ、気にせんで。オルゴールは何とか捜し出す。」

お由 「ぜひ一つ、よろしくお願いを致します。」 九十度のお辞儀。

 お由の態度にご注目ください。お由が犯人であることを我々は知っていますが、責任は自分にあると申し出ています。これが、日本人（本来の意味での）の潔さ、なんですね。だから、それを是とする誰もが自分にこそ責任がある、と言い出すんです。こうして、責任の引き受け合いがはじまるってわけ。

 責任転嫁の応酬に明け暮れる現代社会とは、まるで逆の世の中が、確実にこの国にはあったのです。

 どくろ仮面一味のアジト。盗んだオルゴールを前にして、

どくろ 「ふっへっへっへっへ。ババアのやつ、なかなかやりおるわい。このオルゴールがあれば、必ず月光仮面を誘き出せるわけだな。」

とみ 「ええ、開けてみましょうか。」

どくろ 「待て、いまは拙い。下手に此処へ呼び出して失敗でもしたら、後々仕事がやりにくくなる。」

とみ 「でも、何時までもこうしては居られないでしょ。欧州からドラゴンが来た以上、早いとこ秘密を手に入れなくっちゃ。」

どくろ 「ん～む、あと少なくとも二十日。五月の末頃までには。」

ドラゴン 「いや、五月の末では遅すぎる。」

どくろ 「えっ？ おお、ドラゴン。」

ドラゴン 「ボス（どくろ）、君は少なくとも日本における最大のボスだ。だから、僕は君の指命遂行を、あくまで助ける立場にある。」

どくろ 「わかっておる。違反者は、スパイ能力のない者として抹殺される。」

ドラゴン 「それは、貴男ばかりではない。日本への使者としてきた僕の運命でもある。」

とみ 「月光仮面の邪魔がなければ・・・。」

どくろ 頷きながら 「ん～む。それに、祝十郎の行方が・・・。」

ドラゴン 「それは安心。彼は夕べ死んでいる。」

とみ にっこり 「えっ、じゃやっぱり成功したのね。」

どくろ ドラゴンに渡された新聞を手に 「ん～む。どうやらうまくいったらしいな。ふへへへ。」

とみ 「これで祝のほうは安心ってわけですね。」

どくろ 「いや、待てよ。タイガーのことが出とらんが、ひょっとするとこりゃあ月光仮面が打った芝居かも。」

ドラゴン 「というと祝十郎は生きているとでも。」

どくろ 「そうじゃない。祝は確かに死んだはずだ。ただ、今朝の新聞に出てなかった。つまり、下手をすれば、やつは大怪我をして何処かの病院に運び込まれた。俺はそう考えていたんだ。だが、結局は死んだ。や、それにしても、タイガーのことが気にかかるのだ。」

とみ 「じゃあ、タイガーは死んでいないと・・。」

どくろ 「ん～、死なずに月光仮面に助けられているとしたら、このアジトは直ぐにわかってしまう。」

ドラゴン 「それなら、僕が欧州から持ってきた眠り爆弾を使おう。どんな強い者でも、忽ち眠りを催して動けなくなる。」

どくろ 「ん～、それはいいことに気がついた。眠り爆弾とこのオルゴールがあれば、ふへへへ、月光仮面がいくら不死身でも・・・。よ～し、月光仮面を誘き出すんだ。」

 さして重要な場面ではありませんですが、どくろ仮面の口調にまんまと嵌って（？）しまい、これが面白いので採り上げました。


ありがとうございました。