《 第57話 》 「火焔魔出現」
【 あらすじ 】 どくろ仮面は桟橋から船で逃走し、スネークが月光仮面を待ち受ける。火焔魔スネークは炎で月光仮面を苦しめるが、海に落とされる。翌日、祝は繁と木の実を連れて入院中のタイガーを見舞う。タイガーは身を案じてくれる祝の言葉に心打たれる。
タイガーを病院に見舞う祝と繁・木の実。
祝 「祝だ。傷の具合はどうかね。」
タイガー 「ああ、おかげで・・・。」
祝 「そりゃあよかった。退屈だろうと思って家の子供たちを連れて来たよ。」
繁・木の実 「こんにちは。」 丁寧にお辞儀。
木の実 「小父さん、傷痛む?」
祝 「あまり気にせんで、子供たちと遊んでい給え。」
タイガー 「しかし、どうして僕のような悪党を、そんなに心配してくれるんです?」
祝 「理由は簡単だよ。同じ日本人同士、仲良く暮らすに越したことはないからだ。」
タイガー 「それにしても、あんたは搦め手から何かを白状させようとしているんでしょ。」
祝 「そうかもしれない。どうとろうと君の自由だが・・。じゃあ、小父さんと遊んでなさい。」
繁・木の実 「は~い。」
祝 「(タイガーに)じゃ、失敬。」
タイガー 「小父さんを怖くないか。」
繁 「うん。」
木の実 「祝の小父さん、本当はいい人だって言ってたわ。ねえ、お兄ちゃん。」
繁 「うん。」
タイガー 「いい人だって?」
木の実 「そうよ。ねえ、お兄ちゃん。」
繁 「うん。誰だって人間は、はじめから悪い人になろうなんて、考えてなるんじゃない。だから小父さんに親切にしてあげなさい、って言われたんだよ。」
タイガー 「祝さんが? 祝さんってそんな人なのか。」
この場面こそ、第一部の核心部分と思います。祝の「理由は簡単だよ。同じ日本人同士、仲良く暮らすに越したことはないからだ。」には、共感を禁じ得ません。子供を使った祝の「演出」には頭が下がります。子供が祝の心情を代弁しているわけですね。誰だって、はじめから悪い人になろうなんて、考えてなるんじゃない。これは案外の至言かもしれません。
今まで見てきたように、如何に悪党とて、「義理」一筋にはなかなか徹し切れないものです。だから、「義理」があっても「人情」もある善人(というより凡人)生活のほうが、易きに流れることを是としないまでも、無難な生き方なのかもしれませんね。
山本 「やあ、タイガーはどうでした?」
祝 「元気だったよ。」
山本 「何か白状しましたか。」
祝 「いやあ、まだ何もしてないが、そのうち自分の過ちに気がつくよ。」
山本 「つきますかねえ?」
祝 「僕は、人間の善意というものを信じたいんだ。それよかまだ新聞には出さんだろうね。」
山本 「それこそ信じてくださいよ。僕は、祝先生の期待を裏切ってまで、手柄を立てたいとは思っていませんよ。」
祝 「(頭を下げて)有り難う。」
山本 「あ、これからどちらへ?」
祝 「柳木先生のお宅にお伺いする。」
山本 「例の火焔魔、スネーク中村は?」
祝 「昨夜、自殺したよ。」
山本 「しかし、何も死ななくても・・・」
祝 「いや、そこが今回の事件の恐ろしさだよ。何処の国でもそうだが、国際スパイ団に一度入ると、まあ、生きて辞めるということは難しいんだ。辞めれば必ず殺される。捕まっても必ず殺される。アダラ・カーンにしても、死んだ中村にしてもそうだ。」
山本 「じゃあ、いま捕まってるユリも・・。」
祝 「ん。この事件が解決するまでは危険だよ。」
山本 「じゃあ、タイガーも?」
祝 「彼ら(どくろ一味)は僕もタイガーも、爆死したと思っている。山本君、そのことについて、君にお願いがあるんだ。」
山本 「何ですか?」
祝 「これを今夜の夕刊に出してくれ給え。」 紙切れを渡す。
山本 渡されたメモを見て 「あっ、これは・・・。」
祝 「祝十郎は死んだんだ。そして、タイガーも・・。そう思ってこれを記事にしてくれないか。頼む。」
山本 「わかりました。」
祝 「有り難う。」
山本は新聞記者の視点で事件を見ているようですが、祝のほうは、もっと人間の根源的な心の動きに高い関心があるようです。それが、「僕は、人間の善意というものを信じたいんだ。」に表れているのではないでしょうか。
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