《 第4話 》 「夢の恐迫者」
【 あらすじ 】 警官たちは月光仮面を殺人犯だと思い、後を追うが、月光仮面は姿を消し、撃たれた男の死体も消えてしまう。柳木博士邸の見回りをする五郎八は、博士がうなされているのを目撃する。博士は、彼の発明したHOジョー発爆弾を狙うどくろ仮面の夢に怯えていたのだ。
柳木博士が悪夢に魘(うな)される場面、その夢の中身が映像によって描かれています。
どくろ 「はっはっはっはっは。そんなことはどうでもよい。我々の欲しいのは、ジョー発爆弾に関する一切の秘密だ。」
博士 「断る。私は・・・、私は、命に賭けても・・・。」
どくろ 「はっはっはっはっは。命に賭けてか。はっはっはっは。立派な覚悟だ。しかし博士、死んだらせっかくの研究も、元も子もなくなってしまうのだ。それでもいいのか。」
博士 「構わぬ。」
どくろ 「うぬ~っ、この老いぼれめが。」と博士の首を絞める。
自分が『月光仮面』シリーズを評価するのは、子供向けとは思えぬ、こうした人間の葛藤や苦悩が随所に盛り込まれているからに他なりません。それにしても、全人類を瞬時に抹殺できるというHOジョー発爆弾なるものが、本来、人類平和のために発明されたという理屈は、にわかに合点がいきませんね。
尤も、ノーベル賞のノーベルが発明したダイナマイトや無煙火薬にしても、当のノーベルは、これでしこたま大儲けしたので、その財がたまたまノーベル賞の基金になっただけ。アインシュタイン博士の原子爆弾も、博士の意思に反して悪用された、と見るほうが「事の真相」に近いかもしれません。
文明の進歩は、人類の利便性に多大な貢献をする一方、悪用せんとする邪な人間の手に落ちたら、忽ち暗転しかねない危うさを孕んでいます。結局、この世の諸事万端、人間の“こころ”が為せる業、と愚考するのであります。
人間誰しも「良心」と「邪心」の二面性を秘めており、心の内で常に両者が葛藤し合っているのです。共同体(公)もその人間が創り出すものなれば、時として「悪」の側面が表面化するのも当たり前。
これを仮に「表」と「裏」の姿と分けて考えるとわかりやすいかもしれません。つまり、日常生活にあっては、「表」であるが故に、何事も「良心」を基軸とした仕組みになっており、決して「邪心」一本槍では生きていけないということ。論より証拠に、警察で“暴力団”の指定を受けていても、表向きは「建設会社社員」であったり、「遊技場経営者」であったりするわけで、自ら“暴力団”を名乗りはしますまい。
「裏」の掟は、それはそれは厳しいもので、失敗すれば即、死を意味します。この「裏」で繋がっているのが、金銭欲・性欲・物欲といった人間が持つ様々な欲望であります。どくろ仮面の「手口」をみても、金銭、女、宝物といったもので釣って仲間を増やし、手足として使うのですよ。そして、「褒美を取るか、死を選ぶか」と脅し脅し実行させる。
注目すべきは、欲がなく(無私)、命も要らないという真人間からすれば、この世の「裏(悪)」などちっとも怖くはないのです。相手は、死ぬことを誰よりも恐れる臆病で、小心者なのですから。善人(凡人)になるより、悪人になるほうが難しそうだ、と言うのは、上記のような理由からです。
なお、登場人物紹介で、赤星博士をHOジョー発爆弾の共同開発者(訂正済み)としましたが、どうやら当方の勘違いで、柳木博士の単なる科学者仲間ということのようです。ここに、お詫びして訂正申し上げます。
ありがとうございました。
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