■ 第二十課 机ノ物語
私ハ机デゴザイマス。私ガ此處ヘマヰッタノハ、此ノ學校ガ建ッタ年デゴザイマスカラ、今年デモウ、カレコレ十年ニナリマス。其ノ間ニ多クノ子供ヲ見マシタ。十人十色ト申シマスガ、マコトニ其ノ通リデ、顔ノチガウヨウニ、性質モ色々カハッテ居マシタ。
アクビヲシタリ、ワキ見ヲシタリシテヰテ、先生ニ何カ聞カレテモ、答ヘルコトガ出來ナイデ、顔ヲ赤クスル子供モゴザイマシタ。チャント姿勢ヲヨクシテ、氣ヲ付ケテヰテ、何ヲ聞カレテモ、ハッキリト答ヘル子供モゴザイマシタ。
字ヲ書クノニ、筆ヲ落シタリ、墨ヲコボシタリ、書キソコナッテ、紙ヲ澤山ホゴニシタリスルヨウナ、ソソッカシイ子供モゴザイマシタ。ヨクオチツイテヰテ、少シモ書キソコナヒナドヲシナイ子供モゴザイマシタ。
度々缺席シタリ、遅刻シタリシテ、先生ニ叱ラレタ子供モゴザイマシタ。一日モ缺席モセズ、遅刻モシナカッタ子供モゴザイマシタ。
學校デ先生ニ叱ラレ、友ダチニモキラハレタ惡イ子供ハ、大人ニナッテカラ、大抵ツマラナイ人ニナッテヰマス。
私ハ一タイ子供ガ好きデゴザイマスガ、八九年ノ間ニ、ドウシテモキラヒナ子供ガ、七八人ゴザイマシタ。私ノ體ガ、コンナニ、グラツクヨウニナッタノモ、其ノ子供タチノ、イタヅラカラデゴザイマス。コンナニキタナクナッタノモ、其ノ子供タチガ、澤山、墨ヲツケタカラデゴザイマス。
・ 練 習
一、善イ子供ノコトヲオ話シナサイ。惡イ子供ノコトヲオ話シナサイ。
二、次ノコトバヲ讀ンデ、「イ」ト「ヰ」トノツカヒ方ニ注意シナサイ。
(イ)イト(絲) イル(入) ソソッカシイ
(ロ)ヰド(井戸) ヰル(居) マヰル(參)
三、次ノコトバヲ讀ンデ、「ヱ」ト「エ」トノツカヒ方ニ注意シナサイ。
(イ)ヱ(繪) ツクヱ(机) ウヱル(植)
(ロ)エダ(枝) フエ(笛) キエル(消)
こういう擬人化した表現は好きですね。何だか机に観察されながら、授業を受けているような錯覚に陥ります。
「八九年」「七八人」という記述は、89年、78人と読んでしまいましたが、8~9年、7~8人でしょうね。
「ヰ(ゐ)」と「ヱ(ゑ)」は、現代仮名遣いでは使われないので、幼児の頃は漢字だと思っていました。
日本通貨単位の「円(圓)」は、「YEN」で表されます。「ヱン(ゑん)」と読むからですが、現代仮名遣いになって、なぜ「YEN」なのかがわからなくなってしまいました。
どうでもいいことですが、麦酒好きの人には「ヱビスビール」のラベルが「YEBISU」となっていますし、漫画「サザエさん」も正しくは「サザヱさん」であり、ローマ字綴りは「SAZAYE」のはずです。
従って、練習問題三の「机(つくゑ)」は「TUKUE」でなく、昔は「TUKUYE」と発音されていたのでしょう。しかし、歴史的経緯を無視した現代仮名遣いによって、古語の理解が難しくなるのは、まことに残念なことであります。
ありがとうございました。
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