次は、対をなす曲と思われますので、併記させていただきます。
第四學年用第十七課「廣瀬中佐」
一、轟(とどろ)く砲音(つつおと)飛來(とびく)る彈丸(だんぐわん)。
荒波(あらなみ)洗(あら)ふデツキの上(うへ)に、
闇(やみ)を貫(つらぬ)く中佐(ちゆうさ)の叫(さけび)。
「杉野(すぎの)は何處(いづこ)、杉野(すぎの)は居(ゐ)ずや。」
二、船内(せんない)隈(くま)なく尋(たづ)ぬる三度(みたび)。
呼(よ)べど答(こた)へず、さがせど見(み)えず。
船(ふね)は次第(しだい)に波間(なみま)に沈(しづ)み、
敵彈(てきだん)いよいよあたりに繁(しげ)し。
三、今(いま)はとボートにうつれる中佐(ちゆうさ)、
飛來(とびく)る彈丸(たま)に忽(たちま)ち失(う)せて、
旅順港外(りよじゆんかうぐわい)、恨(うらみ)ぞ深(ふか)き、
軍神廣瀬(ぐんしんひろせ)と其(そ)の名(な)、殘(のこ)れど。
第四學年用第二七課「橘中佐」(岡野貞一曲)
一、かばねは積(つも)りて山(やま)を築(つ)き、
血汐(ちしほ)は流(なが)れて川(かは)をなす、
修羅(しゆら)の巷(ちまた)か、向陽寺(しやおんずい)。
雲間(くもま)をもるる月(つき)靑(あを)し。
二、「みかたは大方(おほかた)うたれたり。
暫(しばら)く此處(ここ)を。」と諫(いさ)むれど、
「恥(はぢ)を思(おも)へや、つはものよ。
死(し)すべき時(とき)は今(いま)なるぞ。
三、御國(みくに)の爲(ため)なり、陸軍(りくぐん)の
名譽(めいよ)の爲(ため)ぞ。」と諭(さと)したる
ことば半(なか)ばに散(ち)りはてし
花橘(はなたちばな)ぞ、かぐはしき。
海軍廣瀬、陸軍橘両中佐、ともに「軍神」ですね。「廣瀬中佐」の唱歌は、教科書になくとも地元大分で習って知っています。けれども、「橘中佐」の唱歌は聴いたことがありませんでした。
曲調が好対照です。「廣瀬中佐」はニ長調でやや明るく、「橘中佐」はイ短調で劇的かつ悲壮感が漂います。部下思いの廣瀬中佐に対し、率先垂範の橘中佐といったところでしょうか。どちらも好きな曲です。
ありがとうございました。
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