日本型企業経営が行き詰まり、形態の欧米化がはじまって久しい。伝統的な終身雇用制や年功序列の昇進制度を覆し、何処も西洋的価値観に基づく実力主義の導入と利潤追求を大義名分とした合理化への方針転換である。しかし、必ずしも成功しているとは言いがたい。本質を見ずして、外見を模倣したにすぎないからである。立ち行かなくなった要因は外見ではない。
日本型組織の特徴は、忠誠心と終身雇用制、年功序列型昇進制度そのものにあった。終身雇用制は「成員の身分保障」という機能に支えられ、諫言や異議申し立てによる組織の腐敗防止、活性化に不可欠な従業員の自立的行動を保障していた。その精神的支柱となった忠誠心は、身分保障によって育まれる。不安定な雇用関係下では醸成されにくい性質のものである。年功序列型昇進制度は、職務経験、技能の高度化、それを裏付ける業績等を基準に、公正な出世競争を通して順次昇進していくシステムで、実は能力主義そのものであった。
ところが、バブル崩壊で業績不振に陥ると、経営者は守りに転じ、リストラと称して競争原理に基づく実力主義を諸制度に導入、合理化の一環として不採算部門の切捨てがはじまった。あおりを受けたのは、罪なき末端の従業員である。労組など批判勢力も懐柔され、あるいは遠ざけられていった。本末転倒もはなはだしい。業績悪化の原因は、見通しを誤った経営陣の責任であって、決して社内制度や従業員の問題ではなかった。
日本型経営の行き詰まりは、自ら組織に内包する従業員の自立性を破壊してしまい、自浄作用をなくした結果ではないのか。
2006年2月9日(木)の記事
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