そのうち、オトウトがなついてくれた。鳩にも個性があるもので、オネエチャンは親の言いつけをよく守る「おりこうさん」だが、オトウトは「やんちゃ坊主」である。私が近づくとオトウトは寄ってくるが、オネエチャンは知らん振り。
生後約4週間ほどすると飛行訓練がはじまる。父親の指導にオネエチャンは忠実だが、オトウトは練習そっちのけで私にエサをねだる。父親は私に「エサをやるな」と怒る。そんなわけで、オトウトはなかなかうまく飛べない。
やがて巣立つときがやってくる。オトウトは着地に失敗して落ちてしまい、階下の住人によって絞め殺されてしまった。何という無慈悲な人間だろう。そのときの両親のあわてようは、とても正視に堪えなかった。その夜、オネエチャンは一羽になった悲しみをこらえていたが、翌朝親鳩がやってくると激しく泣いた。そして巣立っていき、いまどこでどんな暮らしをしているかはわからない。
2006年1月29日(日)の記事
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