台湾海峡問題 マクロン仏大統領の〝裏切り発言〟とEU委員長の毅然とした姿勢
広島G7正式メンバーなのにEU紹介なしとは残念
4/20(木) 17:00配信/夕刊フジ電子版
【ニッポン放送・飯田浩司のそこまで言うか!】
「欧州は龍の尻尾しか見えない。龍の牙と直接向き合っている、われわれアジアの国々とは違う」
龍とは中国の比喩表現で、アジアと欧州の対中安全保障観の違いを表した寓話(ぐうわ)です。これを実感したのが、今月初旬に訪中したフランスのエマニュエル・マクロン大統領の発言です。
仏経済紙「レゼコー」などとのインタビューで、「台湾海峡問題はわれわれ欧州の問題ではない」「最悪なのは、米中双方に『追随』しなければならないと考えることだ」と語ったのです。
これに対し、「台湾海峡問題について抑止のメッセージを出すべき時に、欧州は台湾情勢に関知せずという、脅威を甘く見た誤ったメッセージだ」「大歓待されて篭絡(ろうらく)されたのか?」といった批判が相次ぎました。
また、そもそも米国などからの自立を重視するのはフランスの伝統で、それが最悪のタイミングで噴出したとの指摘もありました。
もちろん、この姿勢はわが国の外交とも相いれるものではありません。先週、閣議了解された外交青書でも、「力による一方的な現状変更は、欧州であれ、東アジアであれ、いかなる場所でも許してはならない」と記しました。ウクライナへのロシアの侵略を許すようなことがあれば、われわれ東アジアにも跳ね返ってくる。大方の危機感、ウクライナ情勢への関心はこうしたことから来ています。
マクロン氏のような発想が欧州の多数を占めるかといえば、そうではなさそうです。
今回の訪中には、欧州連合(EU)のウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長が同行していて、報道によれば「人権状況」や「台湾海峡情勢」をめぐって習近平国家主席と応酬になったそうです。
フォンデアライエン氏は会談後に記者会見し、「一方的な力による現状変更はすべききではない」と述べ、中国を牽制(けんせい)しました。
一方、中国外務省によると、習氏は「台湾問題は中国の核心的利益の核心だ」と強調。台湾が中国の一部だという「一つの中国」原則に関し、「言いがかりをつけるなら中国政府と中国人民は絶対に許さない」と言明したという。相当激しい言い合いだったことが見て取れます。
日本としては、フォンデアライエン氏率いるEUの主張こそ、同志国として評価すべきでしょう。
その意味で残念なのが、広島で来月開催されるG7(先進7カ国)首脳会議の公式ホームページのPR動画で、日米欧7カ国のみが紹介され、正式なG7メンバーであるEUの紹介がないことです。
EU側は3月、日本外務省にこの点を指摘しましたが修正されず、同省は今後もその予定はないとしています。
日本が、EUを下に見ているかのように誤解されるのは非常にマズいことです。マクロン氏の発言があったからこそ、EUの立場を尊重すべきではないでしょうか?
■飯田浩司(いいだ・こうじ) 1981年、神奈川県生まれ。2004年、横浜国立大学卒業後、ニッポン放送にアナウンサーとして入社。ニュース番組のパーソナリティーとして、政治・経済から国際問題まで取材する。現在、「飯田浩司のOK!Cozy up!」(月~金曜朝6―8時)を担当。趣味は野球観戦(阪神ファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書など。
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一、ただ、日本がEUより上かどうかはどうでもいい。
EU内部にこういう歪みが厳然とある以上は各国別のG7で良い。
EUという一つの勢力としては日本より上だと言いたいのだろう。
しかし、日本は今も昔も一人きり国家。
偉そうなフランスにしても英国・ドイツにしても単独で米国と
ガチで戦った国はない。結果はどうあれ、世界は日本という国を
そういう面からも見ていることは日本人は知っておくべきだ。
二、知らなかった。これは日本の外務省が良くない。少なくともEUのフォンデアライエン委員長はロシアのウクライナ侵攻後、真っ先に日本に来た。そこで台湾問題にも言及された。マクロンと習近平との会談でも中国への苦言はフォンデアライエン委員長が一手に引き受けて言っている。マクロンからフォンデアライエン委員長に同行を頼んだのです。
中国との会談の前にも日本と意見のすり合わせを行っています。それだけパートナーとして日本を見てくれていると言う事。確かに国を代表した指導者ではないが、ちゃんと他国と同格に扱うべきです。
三、例えば欧州ではリトアニアやポーランド、チェコの要人が台湾を訪れた
ように、欧州はフランスを始めとする無関心組みと、中国による
台湾への侵略は許さない国々に分かれてるんだよ。
そしてフランス国内でもマクロンの発言は国民に支持されずに
年金法案と相まって支持率は下落中だ。マクロンの次の大統領に期待しよう。
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ニッポン放送は、1954年開局のAMラヂオ放送局である。メディア系列で言えばフジサンケイグループに属する。朝日・毎日・中日などの左巻きメディアと異なり、親米保守的論陣を特徴とする。因みに讀賣日テレ系は中道保守寄りとされる。その意味で親米右派から観た解説であることを念頭におく必要がある。
親米・反米、親中・反中、右派・左派、善悪、正邪、敵・味方、勝ち負けetc.・・・。これら二者択一的分類法は所謂「二元論」と呼ばれ、誤った結論を導き出し易いとされる。どちらかと言えば西洋的思考パターンである。自分はこれを「デジタル思考」と名付けている。ところが、自然界はそれほど単純には成り立っていない。伝統的に〝在りのまま(自然体)″を尊ぶ我ら日本人はこうした極論を嫌い、誘導尋問(?)に惑わされない〝どちらでもない″という秘術をも備えている。これが「アナログ思考」である。
どちらが優れているというものではなく、ともに一長一短あるが、そもそも二元論は、二律背反する分類なので反対方がなければ成り立たない。勝者になるには敗者が必要である。勝ったり負けたりするから試合になるわけだ。つまり、現実に「常勝」など有り得ないのだ。これが仏教的無常観と結び付き、武士道における敗者に対する〝惻隠の情″を生じさせたとも言える。
【無常観】
一切は無常(万物は生滅変転して移り変わる)であるとする、ものの見方。
【惻隠の情】
ある対象に同情、あわれみの心を抱くこと。かわいそうに思うこと。
冨田氏の謂わんとするところは、今日の国際情勢に於いて、自国だけでは解決不能だから、友好国や友好組織体と更なる連携強化せよ、ということだろう。その意味で、我国の國體(こくたい)としての〝シラス″を拡散し、理解と共感を得るべきだと思う。「シラス・ウシハク」の区分は『古事記』のみに見える言葉なので、外国語に訳したり解説するのは難しかろう。
煎じ詰めれば統治の在り方の違いということになる。搔い摘んで解説すると次の通り。
【シラス】-知らす・治らす・統らす-高天原(皇統)系の統治形態
・人間を含む万物を自然の恵みとして自然界全体の共有財産とする考え方
・民百姓を天皇の大御宝と捉えて民百姓の安寧と幸福を第一義とする悦服統治
[悦服統治]・・・権威権力に依らずとも、自発的に悦んで従わせる治め方
[シラス]の由来・・・しろしめす 【知ろしめす・領ろしめす】から
【ウシハク】-主佩く-出雲系(≒渡来人)の統治形態
・人間を含む万物を主(あるじ=支配者)の所有物(私有財産)とする考え方
・民百姓は主(=支配者)に隷属するしかない強権による屈服統治
[屈服統治]権威権力を見せ付けて強制的に従わせる治め方
[ウシハク]の由来・・・うしはく【主佩く】←主が太刀(武力の象徴)を腰に帯びること
大日本帝国憲法(所謂「明治憲法」)第一條には〝大日本帝󠄁國ハ萬世一系ノ天皇之ヲ統治ス″とある。起草に当たって井上毅は、〔統治ス〕の部分を『古事記』に倣い、[統(シ)ラス]とするよう主張したが実現しなかったとか。シラス・ウシハクの言葉に意味があるのではなく、悦服統治と屈服統治のどちらを選ぶかという問題なのだ。
「絆(きずな)」という語がある。元々は牛や馬を繋ぎ止めておくという意味だったが、「人間の絆」のような、引き離し難い人間同士の心の結びつきを指す言葉になったらしい。利他の精神に富むシラスにはこの人心を惹き付ける絶大な効果がある。これは、ウシハク的国家が逆立ちしても真似の出来ない大きな強みである。
《ご参考》-R5.5.5-追加
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