「上海七大歌后」を周璪、龔秋霞、白光の三人だけで終わらせるのは、不公平の謗りを免れまい.時代はズレるかもしれないが、幸い全員の音源が手元にある。ただし、著名な曲ばかりではないので、果たしてカヴァー盤が見つかるや否や。
★白虹(1920-1995)
百度百科の中文(簡体字)版によると、北京生まれで民族欄が満洲族となっている。代表曲の一つに『瘋狂樂隊』というのがあったので、試しに聴いてみよう。
瘋狂樂隊(1946年)
作詞;厳個凡/作曲;厳個凡
作者名も惚けた名前だし、完全なコミックソングですね。歌唱も上手とは言い難い。
★姚莉(1922-2019)
当時、周璇と並び称された歌姫だが、我ら日本人には馴染みが薄いし、我国にも聞こえた著名曲もない。初期の代表曲を聴いてみよう。
玫瑰玫瑰我愛你(1940年)
作詞;呉村/作曲;陸歌辛
個人的には全く知らない曲だが、ウィキペディアを観て驚いた。1951年にフランキー・レイン(米国)とペトゥラ・クラーク(英国)が歌詞は異なるものの、英語カヴァー盤が出ているとか。特にレイン盤はビルボード誌ヒットチャート3位に達したらしい。また、1964年には坂本九が録音(日本未発売)しているし、1997年に『上海交响中日歌星演唱会』で酒井法子が現地歌手韓磊と日本語、北京語、英語でデュエットしたという。2012年には台湾の音楽番組『2012超級巨星紅白藝能大賞』に出演した西野カナが持ち歌とのメドレーとは言え、北京語でこの曲を歌ってもいる。まんざら馴染みのない曲ではなかったようだ。
★李香蘭=山口淑子(1920-2014)
既に「何日君再來」のカヴァー盤を採り上げたが、何と言っても「夜来香」がこの人の代表曲であることに異論はなかろう。
夜來香(1944年)
作詞;黎錦光/作曲;黎錦光
上記YouTubeがオリジナル(上海百代唱片盤)ではない。同音源の別項に服部良一という記述があったからだ。なるほど、当時の上海百代唱片別盤にしては、伴奏が洗練され過ぎている。残念ながら、YouTubeでは原声(オリジナル)盤は見つからない。
追伸)中文(繁体字)版緯基百科(Wikipedia)に依ると、1945年6月に服部良一編曲の李香蘭演唱会(上海交響楽団ジャズ伴奏)のライブ録音盤があるらしいから、ひょっとしてこれかもしれない。
★呉鶯音(1922-2009)
白光の「低音歌后」に対し、「鼻音歌后」の異名を持つ。
断腸紅(1940年代)
作詞;張生/作曲;荘宏
明月千里寄相思(1948年)
作詞;金流/作曲;金流
もう一曲、『岷江夜曲』(1947年)がある。
作詞;李厚襄/作曲;高劍聲
この曲を知ったのは、台湾旅行で買ったミュージックカセットで。もちろんオリジナル音源ではなく、'80年代の台湾人歌手によるカヴァー盤である。呉鶯音の曲は、中国より台湾系歌手が好んで継承しているようだ。
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