古い映画やテレビドラマを蒐集することを趣味としているが、平成二御代変わりして以降はどうもいけない。趣味に合わないというより、時代に付いて行けなくなっているのだ。旧き佳き昭和が懐かしい。そんなわけで〝これぞ昭和″と思しき映画音楽について、個人的に思い入れのある作曲家五人を選んで聴いてみたい。
☆伊福部昭(1914-2006年)
『ゴジラ』(昭和29年)以降、怪獣映画で有名だが、行進曲風の勇壮なものより下降和音に導かれた沈痛な曲風が似合う。もともと戦前は北海道営林署職員で、作曲は余技だったらしい。クラシック作曲家として、アイヌ伝説に基づく交響曲などを遺している。
・黒馬の団七(新東宝/昭和23年)
監督;稲垣浩、主演;大河内伝次郎、黒川弥太郎
・ビルマの竪琴(日活/昭和31年)
監督;市川崑、主演;三国連太郎、安井昌二
☆深井史郎(1907-1959年)
「忠臣蔵」と言えばこの人の音楽をいの一番に挙げたい。戦中の『元禄忠臣蔵』(昭和17年)では、山田和男指揮新響による垂涎の演奏が聴ける。
・獄門島(東映/昭和24年)
監督;松田定次、主演;片岡千恵蔵
・忠臣蔵(東映/昭和34年)
監督;松田定次、主演;片岡千恵蔵、東映オールスター
☆伊藤宜二(?-?)
ネット上で捜してもプロフィールが見つからない謎の作曲家である。戦前から小津安二郎作品で活躍していた。個人的には『ほまれの美丈夫』が大好きである。映画公開時は小学二年生だったが、こういう和楽器(尺八・琴)による純日本調が嫌いだった。巷に溢れていたからだろう。しかし、日本的なるものが次々と破壊され行く今日、却って懐かしさが甦るのであろう。
・麦秋(松竹/昭和26年)
監督;小津安二郎、主演;原節子、笠智衆
・ほまれの美丈夫(東映/昭和31年)
監督;伊賀山正徳、主演;伏見扇太郎、三笠博子
☆芥川也寸志(1925-1989年)
文豪芥川龍之介の三男という出自以上に、テレビのクラシック番組に度々出演していたのでお馴染みの顔であった。ストラヴィンスキーに私淑していたらしく、単身ソ連に潜入したりもしている。ストラヴィンスキーが存命中の話である。『地獄門』では、自ら関西交響楽団を指揮している。
・地獄門(大映/昭和28年)
監督;衣笠貞之助、主演;長谷川一夫、京マチ子
・ゼロの焦点(松竹/昭和36年)
監督;野村芳太郎、主演;久我美子、南原宏治
☆古関裕而(1909-1989年)
『鐘の鳴る丘』に始まる菊田一夫原作のNHK連続ラヂオ劇の音楽を担当し、戦後復興期の大衆音楽を牽引した作曲家である。有名な映画では『君の名は』三部作がある。そのうち第二部は叔母に連れられてリアルタイムで観ている。伊藤久男唄う挿入歌『君いとしき人よ』は旧き佳き利他心溢れる純愛物の名曲である。NHK放送劇も聴いていたが、この曲が挿入されていたか否かは憶えていない。下記『由起子』もNHKラヂオ劇がオリジナル。
・由起子(松竹/昭和30年)
監督;今井正、主演;津島恵子、木村功
・弥次喜多道中記(東宝/昭和33年)
監督;千葉泰樹、主演;小林桂樹、加東大介、徳川夢声
コメント