日本国民の台湾への好意を戦争につなげる策略
古賀茂明〈週刊朝日〉
7/20(火) 7:00配信/AERAdot(朝日新聞系)
21年版の防衛白書が公表された。中国の防衛政策についての記述が、米国の3倍。中国の軍事力強化の驚異的状況をグラフや写真などで強調し、中国側の日本周辺での問題行動についてもデータを使って鮮明に描き出している。
表向きの言葉はともかく、この白書で政府が国民に伝えたいのは、中国の軍事力の強大化により、日本はもちろん米国でさえ対抗することが難しくなったという「中国脅威論」であり、さらに「中国悪玉論」である。
もう一つ、「台湾情勢の安定は、わが国の安全保障や国際社会の安定にとって重要」であると初めて明記して、台湾問題の重要性を国民に印象付けようとしている。
このストーリーは、日米連携で進められている。例えば、「台湾や日本周辺有事を想定した紛争シミュレーションで、米軍が中国に敗北するケースが常態化しつつある」という米軍筋の話。さらには、インド太平洋軍のデービッドソン司令官の「中国が今後6年間で台湾に関して武力行使を行う危険性が高まっている」という証言などは、中国脅威論、悪玉論を煽り、軍事費拡大と日米両軍の一体化推進に貢献する。
さらに、この議論の中心に台湾を使うのも非常に効果がある。特に日本人は、台湾にとても好意的だ。台湾は、親日的で、東日本大震災の時に真っ先に多額の支援金を届けてくれた。最近では、オードリー・タンIT担当相に象徴される「クール」なイメージもある。そんな友好国台湾が、巨大な「悪玉」中国にやられるのは許せないというのが自然な国民感情となる。
しかし、その純朴な心情が、台湾有事と結びつくと非常に危険だ。台湾を助けるために同盟国アメリカが武力行使に踏み込むのなら、「当然」日本も米軍と協力して台湾防衛のために戦うべきだとなる可能性があるからだ。
現に、麻生太郎財務相は、「台湾で大きな問題が起きれば『(集団的自衛権行使を可能とする安全保障関連法の)存立危機事態に関係する』と言ってもおかしくない。日米で台湾を防衛しなければならない」と発言した。菅総理は、4月のバイデン米大統領との首脳会談で、台湾海峡という言葉を共同声明に入れた。これで、台湾有事の際に「自衛隊を出すことまでは考えてませんでした」などとは言えるはずもない。
麻生発言について、メディアは厳しく批判・追及しなかった。さらに、日本経済新聞の4月の世論調査では、日本の台湾海峡の安定への関与について74%が「賛成」で反対はわずか13%。野党支持層でも「賛成」が77%だった。国民世論の前のめりの姿勢は驚くほどだ。
だが、こんな馬鹿げた話はない。日本が台湾防衛に兵を出しても、台湾は日本の尖閣諸島の対中防衛戦に兵を出すことはない。台湾自身が尖閣諸島の領有権を主張しているからだ。
一方で、台湾防衛のために日本が米軍と共に戦えば、中国のミサイルが、沖縄はもちろん本土の米軍や自衛隊の基地などに飛んで来て多くの死者が出る。台湾という異国の地の話だと安穏としていると、ある日、突然ミサイルが飛んで来てやっと危機に気付くのだ。
国民は、五輪の陰で進行する戦争への危機に早く気付き、秋の衆院選で、それに対してはっきりとノーを突き付けなければならない。
※週刊朝日 2021年7月30日号
■古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『官邸の暴走』(角川新書)など
コメント総数;404
一、台湾有事で日本が助けなければ、次に日本が攻められた時どの国が日本を助けてくれるだろう。
台湾有事で米軍が出動した時日本が助けないで、尖閣が侵攻された時は米軍に助けて欲しいというのは虫の良すぎる話だ。
筆者の言う通りにすれば中国に降伏するしかなくなってしまう。
次回衆院選では親中(と親半島)反日勢力を弱体化させないと日本は本当に大変な事になると思う。
二、大丈夫かこの人は。それは中国に言ってくれ。台湾を中国が武力統一したら次は沖縄、奄美。そして九州になるだろう。中国からしたら日本自体がほしい位置にあるのですよ。そんなこともわからないのだろうか?これは麻生さんのほうが正しい。中国が第一列島線引いてる時からわかっていることですよ。国家公務員やめて正解ですね。
三、この人は韓国と中国が好きだね~
こんな官僚が今まで、尖閣問題を棚上げしたり、韓国の反日運動を世界でしているのを野放しにしてきたのだろう
「中国悪玉論」→当然だろう、今日本との領土問題で、北方領土のロシア、竹島の韓国は実効支配されてしまっているが、尖閣は現在進行形で実効支配されようとしている。今の日本国民は官僚にだまされて、放置したりはしない
「国民世論の前のめりの姿勢は驚くほどだ。」→この感覚が、石垣市が石柱を尖閣に立てようとしているのを待ったをかけたりする外務省の感覚だろう。
「台湾自身が尖閣諸島の領有権を主張しているからだ。」→蔡英文総統は主張していない
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先頃、日台-戦後レジームからの脱却(7月5日付)と題して書いた。「戦後体制(レジーム)」を基準にすれば、改革派の考え方だが、今回は守旧派の考え方を知る意味で、敢えて「週刊朝日」の記事を採り上げた。
【守旧派とは?】-ニッポニカ-より
近代朝鮮における政治勢力で、中国の清)国と結び李氏朝鮮封建体制を維持しようとした一派をさす。事大党ともいう。李氏朝鮮末期、封建体制の解体が進み、日本をはじめとする資本主義列強の侵略が強化されてくると、朝鮮の内部にも、この危機に対処し、国政のあり方をめぐる対立が激化した。閔妃一族を中心とする守旧派は、1882年の壬午軍乱以来内政干渉を強めてきた清国と結び、封建体制を維持しようとした。これに対し、実学の流れを引き、日本に倣って国政を変革し、自主開明を図ろうとする開化派(≒改革派)との対立が激化し、ついに84年の甲申政変となって爆発した。これは、クーデターによって守旧派から一気に政権を奪取しようとした開化派によって起こされたが失敗に終わり、守旧派の勢力は一段と強化された。
寄稿者古賀茂明氏の経歴を見ると、完全に〝過去の人″だ。こんな人が官僚として巣食っていたのだから、「弱腰ニッポン」と世界中からバカにされたわけだ。典型的な「長い物には巻かれろ」論である。今や我国は、その「戦後レジームから脱却」しつつあるのだ。この流れを引き寄せたのは、政・財・官・学・マスコミ界の著名人たちではない。誰あろう名も無き凡人(=一般庶民)たちであった。
以前にも書いたが、「長い物には巻かれろ」が平世における日本人の国民性とすれば、乱世では「一寸の虫にも五分の魂」へと豹変する。良くも悪くも、これが神代の昔から連綿と受け継がれてきた我らの国民性なのだ。はっきり言えるのは、空気を読めないというか、時流に乗り遅れているのが我国各界の〝お偉いさん″たちであり、中国共産党であり、台湾に潜伏中の中国国民党ということだ。
自分は、次のような二分割の「世の中」を想い描いている。
★シラス(治らす)≒ナショナリズム(民族乃至国民国家)
人間を含む万物を、万物(自然界生態系)の共有財産とする考え方
互助互恵・共存共栄を旨とするゲマインシャフト(共同体)型精神性
民主的政治形態=民主主義/国際的多様性の容認
≒利他主義(自分より他人の幸福を願う)を是とする慈悲(仏心)型社会
★ウシハク(主履く)≒グローバリズム(世界の一体化・統一化)
万物を主人(支配者)の私有物とする考え方
独占・独裁・独善を惹起するゲゼルシャフト(利益体)型精神性
専制的政治形態=全体主義/国際的多様性の否定
≒利己主義(他人を足蹴に自分の幸福だけ追求)に奔る弱肉強食型社会
最後に一言、'80年代に中国旅行していで、唯一気に入った政治スローガンがある。
自力更生
南京に架かる長江(揚子江)大橋の記念館風建造物内に掲げられてあった。着工以来八年の歳月を経た1968年の完成時のものだろう。当時、国連(UN)にも加入できず、国際的に孤立していた時代の話である。当然ながら、人材を含めて外国資本・技術などは一切入ってない文字通りの「自力更生」作とあって、中国共産党による政治プロパガンダとして盛んに喧伝されたものだ。外国依存度が極端に高い現代中国とは別世界であった。
【自力更生】-じりきこうせい-
他人の援助に頼らず、自分の力で生活を改め、正しく立ち直ること。
そうなのです、利己主義(エゴイズム)の行き着く先は、自分しか頼る者なき「孤独の世界」に決まっている。〝戦狼(恫喝)外交″とやらで世界中を敵に回した中国共産党は、誰も助けてくれず、残された道は「自力更生」しかないのですよ。信仰(≒宗教)などの観念論とは対極にあるウシハク左巻き連中(唯物論者)に、この真理(註一)が理解し難いんだろうなあ。
註一)利己主義は人々を遠ざける。利他主義こそが人々を引き付ける(尊敬される)。
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