武漢肺炎禍が収まらない今年も、はや師走を迎えて暮れようとしている。一年を一日に喩えるかのような日本語独特の表現「年が明ける」「年が暮れる」、好いですねぇ。師走における我国独自のクラシック(古典音楽)界行事として『第九演奏会』がある。本家本元の西洋では、クリスマスに合わせて『メサイア(救世主)』や大晦日に『ジルベスターコンサート』などが開かれるけれど、『第九演奏会』の伝統はない。
通俗的名曲ゆゑ、保有ディスクも数種ある。
01.フルトヴェングラー/バイロイト祝祭管(1951年ライヴ)
02.ヨッフム/バイエルン放送響(1952年)
03.コンヴィチュニー/ライプツィヒゲヴァントハウス管(1959‐1961年)
04.ケンペ/ミュンヘンフィル(1974年)
05.カイルベルト/NHK響(1965年ライヴ)
なぁ~んだ、たったの五種のみか。なお、このうち「5」は、コーダのみながらニコニコ動画に映像がアップされている。興味ある方は下記にてご覧になれます。
しかし、LPレコードがあるからこれを加えると合計六種になる。大分在住時に買った拾弐吋(30㎝)LPだから、少なくとも昭和37年('62)7月以前の遥か昔だ。下記の録音がそれ。但し、所有しているのはモノラル盤である。
ベートーヴェン《交響曲第九番》-1958年録音
シャルル・ミュンシュ指揮
ボストン交響楽団
ニューイングランド音楽院合唱団
レオンタイン・プライス(ソプラノ)
モーリン・フォレスター(アルト)
デヴィッド・ポレリ(テノール)
ジョルジョ・トッツィ(バス)
ステレオなので、耳に馴染んだ演奏とはやや異なるように感じなくもない。演奏の良し悪しなど見当もつかない頃の選択にも関わらず、今聴いても胸が熱くなる。当時、トスカニーニやフルトヴェングラー、ワルターらは既に没していたものの、シューリヒト、クナッパーツブッシュ、クレンペラー、モントゥーなど、戦前からの「巨匠」が未だ現役だったし、カラヤンやバーンスタインなどの戦後派が主に大衆の人気を博した時代である。
ミュンシュは巨匠でなければ職人肌でもない。かといって、大衆迎合型ではもちろんない。ベルリオーズを得意とするどちらかと言えば特異な指揮者であった。なるほど、『幻想交響曲』など他者の追随を許さない孤高の名演である。旧盤(ボストン響)、新盤(パリ管)の二種とも素晴らしい。フランス系の指揮者だから、独墺系のゴシック建築みたいなどっしりした重厚なベートーヴェンではないものの、スリリングなスピード感が堪らない。演奏時間62分はおそらく最速だろう。CD収録規格になったフルトヴェングラーが75分、クレンペラーなど83分を要してまるでブルックナーやマーラーの交響曲並みだ。、
なお、1770年12月16日生まれのベートーヴェンは、今年が生誕250周年だとか。差し詰め今年末は『第九演奏会』ラッシュになるか。近年のサラリーマン指揮者じゃ、聴く気にもならないけれど。急に思い出したけど、昭和38年(1963)の日生劇場におけるベーム指揮ベルリンドイツオペラ管の『第九特別演奏会』が凄かった。フジTVでの中継映像をリアルタイムで視たが、感動のあまり、TVに向かって拍手したくなったほどだ。程なく『フィガロの結婚』『フィデリオ』の両オペラはレコード発売されたが、『第九』は未発売。もしフジTVにビデオが残っているなら市販してもらいたいものだ。モノクロ映像・モノラル音声では時代遅れかも知れないが、全人類の遺産である。
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