バッハ『教会カンタータ』の教会暦に基づくシリーズは、BWV140で掉尾を飾ったが、教会暦に依らない曲(市行事・冠婚葬祭用など)や用途不明のものもある。本稿ではこれを採り上げたい。
■ 用途不明
BWV117、192、97、150、100
■ 結婚式・婚礼用
BWV195、196、197
■ 追悼式・葬儀用
BWV157、106、118、198
■ ライプツィヒ市参事会交代式用
BWV71、119、193、120、29、69
■ 悔い改めの礼拝用
BWV131
このうち、用途不明のBWV117とBWV100は既に採り上げたので、それ以外の用途曲を聴いてみよう。
バッハ『カンタータ第119番』
《エルサレムよ、主を讃えよ》
-ライプツィヒ市参事会交代式用-
指揮;ギュンター・ラミン(トーマスカントール)
ライプツィヒゲヴァントハウス管弦楽団
ライプツィヒ聖トーマス教会聖歌隊
マリアンネ・ビーダーベック-シュスター(アルト)
ゲルト・ルッツェ(テノール)
ヨハンネス・エッテル(バス)
-1953年聖トーマス教会でのモノラル録音-
市の公式行事が教会で行われたのか知らないが、世俗の行事が教会カンタータに分類されることには莫大な違和感がある。それはともかく、金管楽器や打楽器の〝鳴り物入り″で華やかな式典であったことが想像される。「参事会」とは今日の「議会」みたいなものだろうか。華やかさとは裏腹に、あまり印象に残らない曲ではある。
バッハ『カンタータ第106番』
《神の時は最善なり》
-追悼式・葬儀用-
指揮;ギュンター・ラミン(トーマスカントール)
ライプツィヒゲヴァントハウス管弦楽団
ライプツィヒ聖トーマス教会聖歌隊
ハンス-ヨアヒム・ロッチュ(テノール)
ヨハンネス・エッテル(バス)
-1953年聖トーマス教会でのモノラル録音-
葬儀用カンタータとしての超有名曲。ゆゑに、現役時代、職場関係者の葬儀に参列した際、葬儀場の教会で冒頭シンフォニアを幾度か耳にしている。当然、楽隊が居並ぶわけでなく、レコードがかかっていたのだろうが、この録音だったかは憶えていない。ほかにリヒター盤、プロハスカ盤、ゲンネンヴァイン盤も保有しているが、しめやかなこの盤が一番気に入っている。
バッハ『カンタータ第131番』
《深き淵より我汝に呼ばわる主よ》
-悔い改めの礼拝用-
指揮;ギュンター・ラミン(トーマスカントール)
ライプツィヒゲヴァントハウス管弦楽団
ライプツィヒ聖トーマス教会聖歌隊
ゲルト・ルッツェ(テノール)
ヨハンネス・エッテル(バス)
-1952年聖トーマス教会でのモノラル録音-
〝悔い改めの礼拝″が教会暦にないのは、信者毎に懺悔の機会が違うからだろう。冒頭シンフォニアのコラール旋律は、独逸宗教改革の祖マルティン・ルターの作とされる。バッハ初期(1708年)の作品だけに、あまりバッハの個性が感じられない地味な曲である。
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