バッハ『カンタータ第149番』
《喜びと勝利の歌声は》
-大天使ミカエルの祝日(9月29日)用-
フリッツ・ヴェルナーの『バッハ・教会カンタータ選集CD-BOX』を所有しながら、紹介する機会がなかったなれど、いよいよ本稿で採り上げたい。何故のBWV149かと言うと、この日の為の適当な録音が他にないこと。また、終結コラールに、『ヨハネ受難曲』の最終(第68)曲と同じマルティン・シャリンク(1532-1608)作コラールが用ゐられていることを挙げておこう。
【 ご参考】バッハ『ヨハネ受難曲』第61-68(終)曲
ラミン盤(1954年聖トーマス教会でのモノラル録音)
指揮;ギュンター・ラミン(トーマスカントール)
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
ライプツィヒ・聖トーマス教会聖歌隊
アグネス・ギーベル(ソプラノ)
マルガ・ヘフゲン(アルト)
エルンスト・ヘフリガー(テノール)
フランツ・ケルヒ(バス)ほか
何分にも、おフランスのエラート直輸入盤ゆゑ、ライナーノーツが仏文(対訳英・独文あり)だから解読不能。依って、礒山雅氏解説文を転載するようなわけにはいかない。悪しからず御容赦下されたし。でも、楽曲構成ぐらいなら書けるかな。
* 楽曲構成 *
第1曲-合唱(四声部)
第2曲-アリア(バス)
第3曲-レチタティーヴォ(アルト)
第4曲-アリア(ソプラノ)
第5曲-レチタティーヴォ(テノール)
第6曲-二重唱アリア(アルト、テノール)
第7曲-コラール(四声部)/M.シャリンク作コラール
ヴェルナー盤(1964年録音)
指揮;フリッツ・ヴェルナー
プフォルツハイム室内管弦楽団
ハイルブロン・ハインリヒ・シュッツ合唱団
アグネス・ギーベル(ソプラノ)
クラウディア・ヘルマン(アルト)
ゲオルク・イェルデン(テノール)
エーリヒ・ヴェンク(バス)
ピエール・ピエルロ、ジャック・シャムボン(オーボエ)
モーリス・アンドレ(トランペット)ほか
一聴してお気づきのとおり、ヴェルナーの演奏スタイルは、ラミンやリヒターに代表されるライプツィヒ(北東ドイツ)系〝厳しいバッハ″とは対極にある。フランス国境に近いハイルブロン(南西ドイツ)の温暖な気候やカトリック圏という土地柄のせいもあろう。とにかく、宗教的厳しさを求めるより、「娯楽」といかないまでも、純音楽的聴き方が正しいように思う。都会の喧騒とは無縁の、長閑で牧歌的な〝田舎の音楽″。よく言えば、或る意味争いのない平和の楽園を示唆してあり、これぞ実は〝天上の音楽″なのかもしれない。
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