バッハ『カンタータ第100番』
《神なし給う御業こそいと善けれ》
-用途不明(三位一体節後第15日曜日用?)-
1732~35年、おそらく1734年に成立したカンタータであるが、用途は不明(再演は1735、1742年頃)。その第1曲がBWV99の冒頭楽曲の改訂稿であるところからすれば、三位一体節後第15日曜日用ともみられる。しかし台本の内容と福音書章句とはほとんどかかわりがないため、三位一体節後第12日曜日や婚礼なども、候補から外すわけには行かない。
バッハは、S.ローディガスト作の表題コラール(1675年)を大変好み、七曲のカンタータで用いたほか、BWA98(1726)、99(1724)、100の冒頭大コラール楽曲に据えた。しかし、コラールの全詩節をそのままテキストに採った厳格なコラールカンタータは、三曲中このBWV100のみである。曲は、ホルンとティンパニを加えた明るい協奏曲風の合唱曲に起こり、四つのアリアおよび二重唱を続ける。一見よく似た各節から個性ある多彩な音楽を発想するバッハの手腕には、敬服のほかない。終曲はBWV75からの転用。
-礒山雅氏の解説(リヒター盤ライナーノーツより)-
* 楽曲構成 *
第1曲-コラール合唱(四声部)、ト長調/S.ローディガスト作神信頼のコラール第1節
第2曲-二重唱アリア(アルト&テノール)、ニ長調/同上コラール第2節
第3曲-アリア(ソプラノ)、ロ短調/同上コラール第3節
第4曲-アリア(バス)、ト長調/同上コラール第4節
第5曲-アリア(アルト)、ホ短調/同上コラール第5節
第6曲-コラール合唱(四声部)、ト長調/同上コラール終結(第6)節
バッハの数ある教会カンタータ群のなかでも、さして重要な作品とは思えないが、昭和30年代末頃、NHK-FM(東京)の放送開始早朝時間帯に『バッハ連続演奏』(解説;たぶん皆川達夫)みたいな番組があって、BWV100の第6曲コラールがテーマ曲になっていた。毎朝聴いていたため、すっかり気に入って〝一日の始まり曲″として定着してしまったわけ。バッハの教会カンタータ全集盤などない時代、テレフンケン(現テルデック)盤レオンハルト、アルノンクール交互による全集録音が分売され始めた頃の話である。
知らなかったけど、皆川さん、今年4月にお亡くなりだとか。哀悼の意を表します。
保有CDは次のリヒター盤のみ。録音年代からして、テーマ曲がこの盤でないことは明明白白である。
リヒター盤(1977年録音)
指揮;カール・リヒター
ミュンヘンバッハ管弦楽団&合唱団
エディット・マティス(ソプラノ)
ユリア・ハマリ(アルト)
ペーター・シュライヤー(テノール)
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バス)
嫌いなシュライヤーが参加しているが、両端楽曲しか聴かないので問題なし。
七、八年前、ダウンロードして愛聴している映像である。ハンガリー・ブダペストのバッハ演奏会の中継録画らしいが、何時の間にか中文字幕が付いている。元映像は削除されたのか、検索しても出て来なくなった。それはともかく、リヒター盤の〝プロずれ″とは言わないまでも、取り澄ました演奏に比べると、下手クソで田舎臭い演奏ながら、一所懸命なこちらのほうが、宗教的感銘を得られるから不思議である。
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