ブラームス(1833‐1897年)は、うら若き女性や若者ではなかなか理解し難いだろう。”男の哀愁”を感じさせるからだ。どれもこれも、渋くて重厚。音楽がギラギラ輝いたり微笑んだりは決してしない。はっきり言って、他人を拒否するかのようなオタク系の孤独な音楽なのだ。
ブラームスは四つの交響曲を書いている。おそろしく遅筆な人だったようで、、第1番は43歳でようやく完成している。演奏機会からすれば。第1.第4、第2、第3の順になろうか。
第2は既に採り上げたんで、今回は最も演奏されない「第3」を話題にしよう。といっても、曲自体は非常に有名である。というのも、フランソワーズ・サガンの小説に『ブラームスはお好き?』(1959年)というのがあって、これが『さよならをもう一度』(1961年)と題名を変えて映画化された際の主題曲(第三楽章)に採用されたからだ。このメロディをもとに主題歌(?)も作られている
映画『さよならをもう一度』より主題歌(1961年)
歌;ダリア、対手はアンソニー・パーキンス
寂寥感漂うブラームスにしては、確かに甘美な部類に属するメロディではある。全集物を含めて保有CDは9種ある。
1.メンゲルベルク/アムステルダムコンセルトヘボウ管弦楽団(モノ;1930年)
2.トスカニーニ/フィルハーモニア管弦楽団(モノ;1952年)
3.フルトヴェングラー/ベルリンフィル(モノ;1952年)
4.クナッパーツブッシュ/ベルリンフィル(モノ;1950年)
5.ケンペ/ベルリンフィル(1960年)
6.カイルベルト/バンベルク交響楽団(1960年前後)
7.ボールト/ロンドン交響楽団(1971年)
8.ヘルビッヒ/(東)ベルリン交響楽団(1979年)
9.ザンデルリンク/(東)ベルリン交響楽団(1990年)
註)西ベルリンにも同名ベルリン交響楽団があってややこしい
「2」「7」の英国系を除けば、渋い音色を特徴とするオーケストラだけに、ブラームスに似合う。専ら「4」の凄演を愛聴しているが、プライベート盤(CD-ROM)かつモノ録音であるため、如何せん音が割れて聴き難い。
ブラームス『交響曲第三番』より第三楽章(2012年)
by イム・ホンジョン/韓国SNU交響楽団
意図的に綺麗なお姐さん奏者揃いの韓国楽団を選んだわけではない。適当な映像がなかっただけ。決して悪くはないが、イマイチ喰い足りない。ロマンチックな演奏で却って失敗していると思う。ロマン派時代を生きたブラームスだが、作風は新古典派に属する。実は夢やロマンとは縁遠い、寂寥感溢れる孤独な音楽なのだ。我が愛聴盤と聴き比べてみたらいい。
その愛聴盤を全曲通して聴いてみよう。
ブラームス『交響曲第三番』(1950年録音)
by クナッパーツブッシュ/ベルリンフィル
渋味の強いブラームスをお望みの向きには、管弦楽より室内楽がよろしい。
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