【独自】安倍首相“実弟”の岸議員が中国・台湾を異例の連続訪問
習主席の国賓来日を前に見えてきた2020年の対中戦略は「日米台」連携
1/23(木) 6:38配信/FNNプライムオンライン(フジTV)
安倍首相は20日の国会での施政方針演説で、東京五輪・パラリンピックに参加する国と地域のホストタウンに触れる中で、「岩手県野田村は台湾」と述べた。首相が少し間をとった上で「台湾」という言葉を発した次の瞬間、本会議場は「おおー」という声と大きな拍手に包まれた。
実は施政方針演説で「台湾」について言及されたのは2006年の小泉元首相の演説以来で、実に14年ぶりのことだ。台湾に関しては中国が神経をとがらせている状況での今回の言及には、安倍首相の台湾を重視したいという思いが伺える。そうした中で、安倍首相の“実弟”である岸信夫衆院議員が今月、その中国と台湾を相次いで訪問したことがわかった。
岸信夫氏は、自身にとっても兄の安倍首相にとっても祖父である故・岸信介元首相の姓を名乗る、党内最大派閥・細田派のプリンスの一人だ。温和な性格でも知られ外務副大臣などを歴任、1月1日には首相らと親族会を開催するなど兄との連携も密にしている。その岸氏が中国と台湾を連続訪問するという異例の行動をとった狙いは何なのか。本人に2020年の対中戦略と合わせて聞いた。
岸氏は国会の代表団として第11回日中議会交流委員会(日本側・高木毅団長)に出席するため、1月8日~10日まで中国・北京を訪問した。日中両国の議会の代表団が交流する定例の会合であり、岸氏も衆院の議院運営委員会の理事の1人としてメンバーに入ったものだ。
議会交流の一環として“地域及び国際社会の意見交換”でスピーカーに立った岸氏は中国に対し「『自由で開かれている』ということは国際法のルールにより秩序が保たれていること、力を背景にした一方的な現状変更へのチャレンジを認めることはできない」と強調した。さらに岸氏は「南シナ海問題は国際社会共通の関心事項だ。係争中の地形の非軍事化や国連海洋法条約に合った南シナ海に関する行動規範の策定や透明性のあるプロセスに期待する」と述べて、南シナ海・東シナ海で中国が進める海洋進出について強くけん制した。また会議の中では“香港での一国二制度の問題”についても触れたという。
中国から帰国した岸氏は直後に地元・山口県の県議会議員らを引き連れて台湾を訪問し、前日に総統選に勝利したばかりの蔡英文氏と面会した。蔡氏は2016年の総統就任前に、山口県を訪問するなど、親日家として知られる。
岸氏は蔡英文氏との面会で「おめでとう」と祝意を伝えた。安倍首相の“実弟”である岸氏の言葉は、蔡英文総統にとってさぞかし心強かったに違いない。その様子は蔡英文氏がTwitterにアップした岸氏とのツーショット写真からも見てとれる。
このほか、岸氏は今回の総統選挙で副総統に当選した頼清徳氏と面会するなど台湾の要人と立て続けに面会した。その後、岸氏一行が訪れたのは台湾の古都・台南市だ。台南は日本統治時代に日本人による開拓で繁栄した地域で、今回の訪問で、山口県との姉妹都市締結に向けたすり合わせが行われたという。台湾で熱烈な歓迎を受けた岸氏一行は14日、帰国の途に就いた。
今回の中国・台湾の連続訪問について岸氏は「たまたま日程が重なった」と言うが、そこには政府ではない議員外交という比較的フリーハンドな立場で、中国と台湾それぞれの安全保障戦略を探る狙いがある。
岸氏に目下の台湾の状況について聞くと、中国と距離を置く蔡英文氏が台湾総統選挙で勝利したことについて「香港問題をはじめとする全般の対中政策が大きく働いた」と分析する。続けて「“今日の香港は明日の台湾”という言葉の持つ意味は大きい」として、台湾が日米とともに民主主義という基本的価値観を共有するパートナーであり続けることは「日本にとって重要なことだ」と指摘した。
一方、中国について聞くと岸氏は、今春の習近平国家主席の国賓としての来日について「破格の待遇であるということを忘れてはいけない」という。その意味は、日本が今回のような厚遇をするのは当たり前のことではなく、だからこそ来日の際には習主席に「国際法のルールを守るように伝える必要がある」ということだと説明した。米中の貿易摩擦で、中国が疲弊する中、隣国・日本との関係改善を図る中国の姿勢は理解ができる。それだけに岸氏は「今こそ中国に言うべきことは言うべきだ」と主張する。
その上で、自民党内の保守派を中心に“習近平氏の国賓来日反対”の声があがっていることについては、「国賓をやめろという話ではなくて、習近平氏に訪日していただき、日本の本音をしっかりと伝えるべきだ」として、今回の習主席の来日は「逆にチャンスだ」とも語った。
さて、香港問題や米中の貿易摩擦など、2020年の中国をめぐる情勢は混とんとしそうだが、その中で日本は、大国・中国とどう向き合っていくべきなのか。
岸氏は「日米台の連携が重要」だと強調する。「例えば」と前置きしたうえで、「日米と台湾で“気候変動”や“災害対応”の分野で協議を進めるのはどうか」と提案し、さらに「台湾を重要なパートナーとして経済交流を進めるべきだ。日本からの台湾への観光客の増加や、地方都市同士の交流も必要だ」と述べた。岸氏はその狙いについて、「中国との関係は決して壊すべきではないが、日本が中国に言いなりにはなるのではなく、互いに良い関係でいることが重要だ」と語った。
安倍首相が提唱する「地球儀を俯瞰する外交」の中で、国交のない台湾への安倍首相の訪問は現状、叶っていない。そうした中で、2020年の対中戦略において「日米台連携」の重要性を語った岸氏。中国が台湾情勢に極めて敏感な中で、習主席の来日を契機に未来志向の日中関係がどう築けるか注目だ。
(フジテレビ政治部・自民党担当 門脇 功樹)
前稿(21日付『儒教の徳治政治』)での我が予言は敢え無く外れた。しかし、負け惜しみじゃないが、日米台の緊密な連携という意味では当たらずとも遠からずだろう。
蔡英文総統当選を受けた素早い日米の祝意表明や、日華議員連盟が総統表敬訪問時に安倍首相親書を手渡すなど、周到な事前準備もなく成り行き任せでは、こういう流れにはならない。軌を一にして河野防衛相も、習近平国賓来日に絡めて南シナ海の中国軍事拠点化を批判している。つまり、”国賓待遇”を受けるにはそれに見合う行動が必要、という暗黙のサインなのだ。目に見えないサインを「共産主義者」が解読できるか甚だ疑問だが、【賽は投げられた】のである。前稿の「徳治」に結びつけるならば、国賓に値する行動とは『中国統治者として、権力を振りかざすのではなく、徳を以て治めよ』ということに他ならない。
米国の東アジア戦略は、韓国を外して日台との盟友関係を基軸に、明らかな方針転換があったことを窺わせる。また、「戦後レジーム(体制)」の観点に立てば、”振り出し(出発点)”に戻ったわけだ。
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